第062話 2人「ところで、こいつら、いつまで手を握ってるんだろう?」
ウェアウルフのディーンが去っていき、しばらくすると、リンダ姉さんが戻ってくる。
「お待たせしました。1つの旅館でリクさんが泊まったということがわかりましたよ」
「やっぱりか……」
「ええ。どうやらリクさんはそこに泊まった際に海を見たらしいですね。それがあの写真でしょう。次の日にはチェックアウトしたそうです。ただ、1人だったそうですよ」
1人……
「つまりミナトは別か」
「そういうことになりますね。おそらく、リクさんは1人でここに転移したんでしょう」
1人は辛いな……
「わかった。こっちもウェアウルフから情報が聞けた」
リンダ姉さんに先ほどのディーンの話を伝える。
「ふむ……浜田ですか。確か島根は出雲付近が人間との境界線でしたね」
「そうだな。間違いなく、リクはそっちを目指していると思う。そして、出雲に入る際はヒッチハイクができないから歩きだ」
チャリかもしれないけど。
「なるほど……今なら追いつけそうですね。わかりました。今日はここに宿泊するのはやめ、出発しましょう」
「頼む」
俺達は砂浜を離れ、駐車場に戻ると、車に乗り込んだ。
そして、エルヴィスのタブレットでルートを確認しながらリンダ姉さんと相談する。
「やはり高速は避けた方が良いですよね?」
「地雷と落下は嫌だ。下道で行こう。2時間ってところだな」
「今から行けば16時前には着きますね……そこから出雲までさらに2時間……」
18時か……行けないことはない。
「とりあえず、浜田を目指してくれ」
「わかりました。それでは出発します」
リンダ姉さんが車を発進させたのでアヤカを見る。
「さて、どうする? とりあえず、浜田までは行くが……」
「やっぱり浜田から歩いているっていうのも考えにくいと思う。出雲近くまでヒッチハイクじゃない? 悪魔ならマナでどうにかなりそうだし」
そうなんだよな。
悪魔なら相応のマナを払えば運んでくれそうだ。
「俺っちなら運ぶな」
「私もですねー。さすがに人間の町である出雲に行ってくれと言われたら考えますがね」
やっぱりか。
「どこまで行くか……」
「焦ったらダメよ。とりあえずは浜田で情報を集めましょう」
そうなるか。
「あ、言うのを忘れていたことがありました。リクさんは受付の女性に服装を指摘されたようです。なので、服装は変わってると思います」
まあ、それはそうだろうな。
「わかった。リンダ姉さん、今日は浜田で泊まろう」
「わかりました。それでは今しばらくお待ちください」
俺は焦る気持ちを抑え、外を見る。
「大丈夫だから。着実に松永君に近づいている」
アヤカがそう言って、手を握ってきた。
「そうだな。ありがとう」
少し落ち着いた。
「浜田のどこに泊まるー?」
「調べてみよっか」
高宮さんと北浦さんがスマホで宿を調べ始めた。
俺もスマホを取り出し、アヤカと一緒に画面を見る。
アヤカは諸事情があって、スマホを操作しにくい状況なのだ。
「うーん……ホテルで良くないか?」
「うん、温泉地って感じでもないしね」
「ま、良いんじゃない?」
「姉さん、普通のホテルで」
北浦さんが運転手に伝える。
「わかりました。エルヴィスさん、案内をお願いします」
「あいよ」
俺達は外を眺めながら到着を待つ。
海が綺麗だなーと思いながら進んでいくと、島根県に入った。
その後も海沿いの道を進んでいくと、16時を回り、浜田市にやってきた。
「んー……あまり悪魔がいないな」
歩いている悪魔の数が少ないのだ。
「そうね……何かあったのかしら?」
「SNSを見てるけど、特にはないね。というか、あまり検索に引っかからない」
「昔のばっかりだね」
平和そうではあるな。
「皆さん、もうすぐでホテルに着きます。例によって、私とエルヴィスさんで情報を集めてきますので皆さんは待機しておいてください」
いつもの感じか。
「こんな時間から調査か?」
「ここにはサキュバスがいそうにないです。こういう時は夜の飲み屋で情報を集めるんですよ」
「お前らは飲まないし、こういうのは数が少ない方が良い。俺っちも飲んでいるゴブリンに声をかけるんだ」
なるほど。
確かに飲み屋で調査をするなら飲まない俺達は邪魔だな。
「わかった。ホテルで降ろしてくれ」
頷き、しばらくすると、車がとあるホテルの前で止まった。
「ここになります。私達は少し遅くなると思いますので夕食は皆さんで食べてください」
「そうする。起きてるから帰ったら部屋に来てくれ」
「ええ。私達の部屋も取っておいてください」
「わかった」
頷くと、車から降りる。
すると、すぐに車が走り出した。
「部屋割りはどうする?」
「前と一緒で良いんじゃない? 私とユウ君でマユミとヒナ。エルヴィスとリンダさんは個室」
「良いんじゃない?」
「それが無難」
女性陣がそう言うならそれで良いか。
俺達はホテルに入ると、コボルトがいる受付に向かう。
「いらっしゃい。泊まりかい?」
「ああ。2人部屋を2つとあとから来るエルヴィスっていうゴブリンとリンダっていうサキュバスの個室を頼む。あ、喫煙室があったらエルヴィスはそれにしてくれ」
「了解。全部で……えーっと、3万マナだ」
コボルトが手を伸ばしてきたので握った。
やっぱりよくわからないが、マナは取られていると思う。
「夕食とかってあるか?」
「そこの店がウチと提携している定食屋だ」
コボルトが右の方を指差す。
確かに定食屋があった。
「わかった」
「じゃあ、これが鍵な」
コボルトが鍵を渡してきたので受け取り、片方を高宮さんに渡す。
俺達の部屋番号が405で高宮さん達が406だ。
「ちなみになんだが、この男を知らないか?」
コボルトにリクの後ろ姿の写真を見せる。
「んー……いや、後ろ姿じゃわからないだろ」
それはそう。
「俺達みたいな人型の男だ。知らないか?」
「うーん……知らないな。少なくとも、ウチには泊まってないと思う」
そうか……
「わかった」
スマホをしまうと、エレベーターに乗り込んだ。
「ユウ君達って、1年の時も同じクラスで仲良かったのよね? 写真とかないの?」
4階のボタンを押すと、アヤカが聞いてくる。
「ないな」
「撮らなかったの?」
「いや、撮らなくないか?」
「え? そう?」
撮るの?
「結構、撮っているよね?」
「そだねー」
「撮るね。というか、ユウだって、角島や萩で撮ってたじゃん」
それはアヤカと……
「うーん……あまり男同士では撮らないんじゃないかな? ああいう観光地的なところに行ったら撮るかもしれないけど、行ってないしなー」
「ふーん……あとでウチらの写真を見せてあげるよ」
「そうだね。送ってあげる」
高宮さんと北浦さんは優しいな。
俺にはアヤカの写真をくれるって聞こえたよ。
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