第060話 萩
スマホのアラームの音で目が覚める。
「朝ぁ……?」
スマホに手を伸ばし、アラームを切ると、隣で寝ているアヤカも目を覚ました。
「ああ……ふわーあ。8時だな」
「眠いわねー……」
昨日、結構遅くまでトランプをしながらの宴会をした。
負けたリンダ姉さんが浴衣を脱ごうとして、アヤカに目を押さえられたのは果たして夢か?
「風呂に行くかー……」
「そうね。シャキッとしましょう」
俺達は起き上がると、そのまま部屋を出て、1階の大浴場に向かった。
アヤカと別れ、浴場に入ると、結構な数の悪魔が湯船に入っていたし、その中にエルヴィスがいたので身体を流して隣に座る。
「おはよう」
「よう。ゆっくり眠れたか?」
「ぐっすりだった。まだ眠いけどな」
「ちょっとはしゃぎすぎたかもな」
エルヴィスがへっへっへと笑った。
「昨日は結局、どっちが勝ったんだ?」
「僅差で俺っちだな。リンダは所々でふざけるし」
ふざけるね。
下ネタも入るし。
俺とエルヴィスはゆっくりと温泉を堪能すると、一緒に出て、外で待つ。
すると、ぴょんぴょんと飛び跳ねているスライムが女風呂から出てきた。
「ホントだ……」
女風呂にスライムがいた……
「まあ、そもそもスライムに性別はないけどな」
「そうなんだ……」
そのまま待っていると、女性4人が出てきた。
「お待たせ。眠気も取れたわね」
「そうだな。腹減ったわ」
「よし、ご飯にしましょう」
俺達はそのまま2階のレストランに向かった。
すると、バイキング形式だったため、各々が思い思いに料理を取り、食べていく。
「納豆、美味いぞ」
「うん。日本の食卓って感じ」
アヤカと頷き合った。
「それは賛同できない」
「私も苦手」
高宮さんと北浦さんは納豆がダメらしい。
まあ、納豆は好き嫌いが分かれるから仕方がない。
俺達は朝食を食べ終えると、各自の部屋に戻り、着替えなんかの準備をする。
先に着替え終え、例のスペースで外を眺めていると、私服に着替えたアヤカが出てきた。
「お待たせ。ちょっと髪をまとめてみたんだけど、どう?」
アヤカの長い髪がまとめられていた。
「良い感じだな。可愛いと思う」
「ユウ君、褒めてばっかりだからなー」
それは仕方がない。
「ショートにしようかなとか言えばいいぞ」
「ショートが良いの?」
「やめた方が良いと思う」
「はいはい。行きましょうか」
俺達は準備を終えたので部屋を出ると、隣の部屋をノックする。
「高宮さーん、靴下とヘアピンはあったー?」
『なくしてなーい。ちょっと待ってねー』
そのまま待っていると、2人が出てきた。
「おまたー。おっ、アヤカ、可愛いじゃん」
「うん、可愛い」
「ありがと」
俺達はエレベーターに乗り、1階に下りる。
すると、受付でお仲間と話すリンダ姉さんと玄関の外でタバコを吸っているエルヴィスがいた。
俺達は外に出ると、エルヴィスのもとに向かう。
「ここも禁煙だったな」
「そうなんだよ。どこもかしこもだ。困るねー」
「やめたら?」
アヤカが禁煙を勧めた。
「やめる理由がねーよ」
「じゃあさ、リクとミナトと合流できたらやめるってのはどう?」
北浦さんが提案する。
「合流ねー……それが俺がタバコをやめる理由になるのか?」
「ゲン担ぎ」
「ゲン担ぎってそういうもんじゃねーと思うけど……よし、じゃあ、ユウが結婚したらやめてやるよ」
んー……
「俺、お前の彼女じゃないぞ」
ごめん。
俺、好きな人がいるんだ。
「そういう意味じゃねーよ。なんとなく、リクとミナトはそのうち合流できそうな気がするし、時間がかかりそうな方にしたんだよ」
失礼な。
「絶対にやめろよ?」
「やめる、やめる。へっへっへ」
なんかムカつく。
「ユウ君、結婚するの?」
アヤカが聞いてくる。
「26歳だし、いつかは……」
「ふーん……」
何、その顔?
「お待たせしましたー。思うんですけど、結婚の定義って何ですかね? 役所に書類を出すこと? あなた方って大丈夫ですか?」
地獄耳サキュバス。
「前に話したな……死んでるかもって話」
「まあ、それは追々で……」
「そうだな」
「では、乗ってください。萩に向かいますよ」
リンダ姉さんがそう言って、運転席に乗り込んだので俺達も乗り込んだ。
そして、すぐに動き出し、旅館を出ると、町中を走っていく。
「リンダ姉さん、海で情報を聞いた後はどうする?」
運転しているリンダ姉さんに確認する。
「情報次第ですが、やはり萩で情報集めですかね? その後は泊まるか、東に行くか……まず南はないでしょうから」
リクが広島方面に行くことは考えにくいからな。
「どれくらいで着くんだ?」
「30分くらいですね。着いたら少し町中を見て回り、昼食後に海に行きます」
やはり近いな。
「わかった」
頷くと、外を眺めながら到着を待つことにした。
ずーっと進んでいくと、萩市に入り、さらに町中を進んでいったのでリクを探す。
「着替えている可能性は十分にあるからな」
異世界での格好を目印にすると見つからないだろう。
「ええ。悪魔の町だし、マナを払えば服だって買えるでしょうしね」
「松永君、寝床とかどうしてんだろ?」
「ホテルとか旅館じゃない? あ、店員に聞いてみるとか?」
ありだな。
俺達が注意深く探していると、町の景色が城下町に変わっていく。
「こういう町か……」
「観光地っぽいわね」
「今はちょっと観光を楽しむ気分じゃないな」
「まあねー……」
俺達はその後も車の中からリクを探していったが、それらしい姿は見当たらなかった。
そして、昼になったので定食屋に入り、昼食を食べる。
「いないな……」
「そうね……」
うーん……
「まあ、気を落とすな。正直、お前らの話を聞いている限り、リクがその辺を歩いているとは考えにくい」
「ええ。慎重な方っぽいですし、あのSNSの写真から数日が経っています。そう簡単に見つからないのは想定内ですよ」
エルヴィスとリンダ姉さんが励ましてくれる。
「急いで来れば良かったかな?」
北浦さんが首を傾げた。
「情報を集めながらじゃないと危ないってば。これからもそう。焦ったらダメ」
高宮さんの言うとおりだな。
俺達は昼食を食べ終えると、店を出て、海に向かった。
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