第059話 その後、めちゃくちゃトランプをした
夕食を食べ終えた俺達は1階に下り、風呂場に向かう。
「あれ?」
「逆になってるわね」
昼間は左が女風呂で右が男風呂だった。
それが今は逆になっている。
「お得で良いじゃん」
「うん。二度美味しい」
まあ、そうだな。
「では、私達はこちらですね」
リンダ姉さんが女風呂の方に入ると、高宮さんと北浦さんも続く。
「じゃあ、ユウ君、これが鍵ね」
「ああ」
アヤカから鍵を受け取ると、エルヴィスと共に男風呂の方に入った。
中は人がそこそこいるようだったが、空いている棚に浴衣を入れ、浴場に入る。
そして、身体を流すと、エルヴィスと共に湯船に浸かった。
「あー……良いな。俺っちは別府の温泉しか知らねーからこうやって他所の温泉を満喫するのも悪くねー」
「温泉って各地にあるから楽しめそうだな」
なんか本当に旅行みたいだ。
「お前は新婚旅行みたいなもんだな」
結婚してないっての。
まだ……
「エルヴィスは家族とかいないのか?」
「いない、いない。ゴブリンは子育てをする種族じゃないんだ。親も知らねーし、兄弟姉妹がいるのかも知らねーよ」
そういうものなのか……
「電化製品に強いって言ってたし、ウチの会社のシステム課を任せようじゃないか」
俺達、その辺はさっぱりだし。
「どうも。何の会社にするんだよ?」
「第一候補は引っ越しとか荷物を運ぶ運送会社」
「ふーん……アヤカが副社長か?」
「それは高宮さんかな? あの子が副リーダーなんだ」
高高同盟。
「そうかい。お前らはよー、良いチームだと思うぜ。思想や目的が一致しているし、仲間を想い合える。まさしく、人間の良い面って感じだ」
そうかねー?
「まあ、5年も一緒にいるからな」
「大事にしな」
「そうするよ」
俺達は湯船から出ると、露天の方に行き、温泉に浸かりながら空を見上げる。
「お前さー、アヤカのどこが良いんだ?」
ゴブリンから恋愛話が。
「可愛いだろ」
「見た目か?」
うーん……
「最初はそうだな。クラスで話したことなかったし。でも、異世界で合流し、話をしてみると、優しいし、すごく空気感がほんわかしているんだぞ」
ちょっと気の強いところもあるけど、それも良い。
「そうかい……わりい。聞いておいてなんだが、全然、わからんし、興味なかったわ」
だろうな。
「エルヴィスはそういう人がいないんだよな?」
「いねーな。あんまりそういう悪魔はいないぜ? リンダみたいなサキュバスは特殊だが」
あれもちょっと違うような……
「エルヴィスって、人間との争いに参加したことがあるのか?」
「あるぜ。まあ、ゴブリンはよえーからそこまでだけどな」
今はすごい魔力だがな。
「そうか……」
「当然、人間を殺したこともあるぜ?」
前にも聞いたな。
「いや、ちょっと確認だ。俺だって悪魔じゃないが、魔物を殺してきたし、時には人間をやったこともある」
全員、そうだけど。
「逆にやったことがあって良かったと思うぜ。じゃないと、こんな終末世界で東京を目指せない。もうちょっとしてから言うつもりだったがよ……神戸はすごいことになってるらしいぜ?」
神戸……
岡山の隣の兵庫県か。
「すごいことって?」
「悪魔の勢力なんだが、治安が悪いというか歓楽街になってるみたいだ。カジノとかあるらしい」
そういうのが好きなボスってことか。
「簡単には東京に行けないか」
「わかってたことだろ」
「まあな」
俺達はその後も露天風呂を堪能したが、30分くらいで上がり、俺とアヤカの部屋に戻った。
「やっぱりこれか……」
すでに布団が敷かれているのだが、2つの布団がくっついている。
しかも、枕元には何故かティッシュが置いてある。
この時点で誰がこの布団を敷いたのかがわかる。
「ったく……」
ティッシュをテーブルに持っていき、布団を離す。
ちょっとだけ……
「お前のその微妙な匙加減がわからん。好きなんだろ? 一緒の部屋なんだから抱けばいいだろ」
うるせー、ゴブリン。
「距離感の詰め方は慎重にいかないといけないんだ」
「時には大胆さも大事だと思うぜ」
年長者がそれっぽいことを言う。
「ほっとけ」
「はいはい」
寝床の調整を終えると、電話でコーラとビールを頼み、端に追いやられたテーブルで乾杯をする。
「風呂上がりのコーラが美味い……」
世界一じゃないだろうか?
「お前、飲まないのか?」
んー?
「酒か? あまり美味いと思わないんだよ」
「楽しいぜ?」
そうかねー?
「前に皆で飲んだ時は楽しかった気もするな。ただ、心は高校生だから」
「26歳で心は高校生って痛い大人だな」
永遠の17歳に謝れ。
俺達が話していると、扉が開き、アヤカ達が戻ってきた。
「お待たせー」
「良いお湯だったね」
「温泉最高。あ、飲んでる。私らも頼もう」
北浦さんが電話のところに向かう。
「私は熱燗でお願いします」
やっぱりリンダ姉さんは飲むんだな……
しかし、湯上りで浴衣のリンダ姉さんはエロいな……
「チャームをかけるなっての」
「え? あ、なんかすみません……」
かけてなかった……
慌てて、隣に座ったアヤカをじーっと見る。
「ん? どうしたの?」
「いや、気にしないで」
浄化、浄化。
「アヤカは何飲む?」
北浦さんがアヤカに聞く。
「んー……リンゴジュース」
「マユミは?」
「あー、今日はソフトドリンクにしよう。ぶどうジュース」
「りょ……あ、もしもし? 熱燗とリンゴジュースとぶどうジュースを2つ」
ちょっとすると、飲み物が届いたので乾杯をし、皆で飲んでいく。
「リンダ姉さん、明日は何時に出るんだ?」
「ここから萩までは近いですし、ウェアウルフと会うのは午後からですからゆっくりで良いと思いますよ。10時くらいに出ましょうか」
ゆっくり寝られそうだし、朝風呂もいけそうだ。
「わかった。よし、トランプでもするか」
「ふふっ、良いですよ? 負けた人が1枚脱ぐやつですね」
初めて聞いたけど?
「いや、そんなんじゃないから」
「そうですか? 一敗もできない勝負も楽しいですよ? まあ、負けてもいいですけどね」
え? 一敗……それって……
視線を落とし、リンダ姉さんの浴衣を見ると、慌てて、アヤカを見る。
「どうしたの?」
アヤカの首を傾げる可愛い仕草のおかげでなんとか正気に戻れた。
このサキュバス、チャームを使わなくてもチャームを使える恐ろしい存在だ。
「ふふっ、可愛い……エルヴィスさん、私達はマナでも賭けませんか?」
「良いな。それでいこう」
意外にもエルヴィスがトランプに乗り気だ。
「俺達は健全でいこうな。高校生だし」
脱衣トランプも賭けもやってはダメ。
「まあ、そうね」
「必死だな、この男……」
「仕方がないよ……」
サキュバスめー。
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