第058話 セッ
「エルヴィス、そのウェアウルフは何て?」
アヤカが聞く。
「海を見たり、近くにある城を見たりしてたらしいぞ。詳しいことは明日、萩で会った時に教えてくれるそうだ。昼過ぎにその砂浜で会うことになっている」
ほう?
「それは良いわね。リンダさん、明日はそこに行ってちょうだい」
「ええ。その他にも情報を聞けるかもしれません。明日は萩で情報を集めましょう」
リンダ姉さんの言葉に全員が頷く。
「よし、明日の予定が決まったところで飯にしようぜ。さすがに腹減ったわ」
頑張ってくれてたわけだしな。
「では、レストランに行きましょうか。会席料理です」
昼にカレーを食べたから良いかも。
「ご飯食べて、温泉だ」
「それだ」
高宮さんと北浦さんも立ち上がったので俺とアヤカも立ち上がった。
そして、部屋を出ると、エレベーターに乗り、2階にやってくる。
すると、昼とは違い、かなり賑わっていた。
「やっぱり夜は違うな」
「そうね」
レストランに入ると、リンダ姉さんが歩いていき、予約席と書いてある札がある席に座った。
すでに料理が置いてあり、旅館とかでよく見るやつだ。
「ここ?」
「ええ。ちゃんとお願いしてあります」
リンダ姉さんが頷いたので席につく。
やっぱりエルヴィス、俺、アヤカの並びであり、対面にリンダ姉さん、高宮さん、北浦さんだ。
そのまま待っていると、下半身が蛇の女性がやってくる。
「いらっしゃーい。御予約のお客様ですね。飲み物はどうされますか?」
飲み物か……
「俺はビール」
「では、私もそれで」
やっぱりこの2人は飲むんだな。
「俺はウーロン茶」
「私もそれ」
「じゃあ、私も」
「ウーロン茶を4つ」
心高校生の俺達はお茶だ。
「かしこまりました。では、火をつけますね」
蛇さんは指を立て、小さな火を出すと、1人鍋の下にある蝋燭みたいなのに火をつける。
そして、厨房の方に戻っていった。
「どうやって進んでいるんだろう?」
なんか滑るように進んでいた。
「蛇だし、うねうねと動いてるんじゃない?」
そんなもんか。
「あれはラミアだな」
へー……聞いたことある。
「ここのシェフが腕がいっぱいある奴だったけど、それは? 魔力がかなり高かった」
「あ、それはここのオーナーのヘカトンケイルですね。料理が趣味らしいです」
ヘカトン……?
「聞いたことないな」
「腕がいっぱいある巨人ですよ」
「いや、サイズは普通だったぞ」
2メートルはあったけど。
「小さくなってんじゃないですか? 旅館に入らないですし」
そんなにでかいの?
「強いよな?」
「そりゃもう。だいたい悪魔の町にはボスみたいなのがいますよ。小倉にもゾンビの王がいます」
ゾンビの王って何?
タイラン〇?
「別府はハイゴブリンだな。あいつはたいして強くないが、人をまとめるのが上手いんだ。強いのだったらお前らが知ってるメデューサがいる」
仲居メデューサか。
やっぱりボスキャラだった。
「そういや広島にデーモンがいるって聞いたな」
インプが言ってた。
「デーモン? そりゃ強いな。真っ当な悪魔だ」
「好戦的な種ですね。好きじゃないです」
ふーむ……
「町の色ってそのボスの方針が大きそうだな」
「そうですね。デーモンがトップの町なんか嫌ですもん。競馬で楽しんでいるお爺ちゃんが楽です」
ゾンビの王はお爺ちゃんらしい。
「エルヴィスもだよな?」
「ああ。ハイゴブリンもゴブリンも同じようなもんだしな」
なるほどね。
その町がどんな町なのかは悪魔のトップがわかればある程度は予想できそうだ。
「お待たせ。ビールとウーロン茶です」
ラミアが瓶ビールとお茶を持って来てくれた。
「どうも」
「おかわりはまた言ってください。それと部屋で飲みたい場合は電話してくださいね。それではごゆっくり」
エルヴィスとリンダ姉さんがビールを注ぎ合うと、乾杯をし、料理を食べていく。
「美味いな」
「ええ。上品って感じ」
「え? 呼びました?」
無視、無視。
「これ、何かな?」
1人鍋のやつ。
「んー……あ、真丈ね」
アヤカがちょっと中を覗いて教えてくれる。
「へー……」
真丈って何?
「ユウさんは可愛いですね」
リンダ姉さんが慈愛の笑顔でこちらを見てくる。
「ちょっと物を知らないだけだ。高校生だったから仕方がない。アヤカ、真丈って何?」
素直に聞こう。
「魚のすり身とかをすりつぶしたやつに色々入ってるやつ」
「ユウは何も知らないなー」
北浦さんがけらけらと笑った。
「絶対に北浦さんも知らないでしょ」
「うん。マユミ、知ってる?」
「知らない」
「俺っちも知らない」
「私も知りませんね」
リンダ姉さんも知らないんじゃん。
「いや、そんなものでしょ。私は料理が好きだから知ってるだけ」
アヤカは家庭的だなー。
話をしていると、火が消えたので真丈とやらを食べてみる。
素朴な味がしたし、ふわふわで美味しい。
「これもあのヘカトンケイルシェフが作ってんのかね?」
「じゃない? 悪魔って器用よね」
ホントにな。
「エルヴィスも何かできるん?」
高宮さんが聞く。
「俺は農家だよ。あと、趣味で電化製品には強いぞ」
そういやスマホとかタブレットとかいっぱい持ってた。
「へー……すごいじゃん」
「姉さんは……あ、何でもないです。言わなくていいです」
北浦さんが途中で聞くのをやめた。
リンダ姉さんの目が怪しく光ったので正解だと思う。
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