第057話 休憩
「松永君も私達を探してるってことかしら?」
アヤカが聞いてくる。
「人を探しているってことだからな。俺達と同じだろう」
「そうなると、すでに萩から動いている?」
「どうだろ……あの写真はちょっと話題になっているっぽいし、待ってたら俺達が来ると考えないか?」
実際、来たし。
「私が松永君の立場ならどちらかというと、私達以外のクラスメイトに見つかることを危惧するわね。広島の切り裂きジャック事件のことがあるからなおさら」
確かにそうかもしれないな。
俺がリクの立場でも離れると思う。
「でも、あれからそんなに時間が経っていないし、近くにはいそうじゃないか?」
「それはあると思う。松永君にエルヴィスやリンダさんみたいな協力者がいない限り、遠くには行けない」
足がないからな。
それにリクは慎重な人間だからこういう時に動くより、見に回る。
「高宮さん、どう思う?」
副リーダーにも意見を聞く。
「怖いのは切り裂きジャックが萩に来ることかな?」
確かにね……
「萩も長居できないかもな……」
「その辺が難しいところだね。ヒナはどう思う?」
高宮さんが北浦さんに聞く。
「私はリクなら東に行くんじゃないかって思う」
「んー? なんで?」
「人間の町に行こうと思うから」
なるほど。
確かにそれはあるかもしれない。
俺達にはエルヴィスとリンダ姉さんという悪魔側の仲間がいた。
しかし、そうじゃない場合はまず人間の町を目指すだろう。
「島根にいて、こっちに来たっていう可能性は?」
アヤカが聞く。
「人間の町に転移して、悪魔の町に行くかな? 人間側は悪魔を良くは言ってないだろうし、リクはそんな状況で悪魔の町に行ってみようとは考えない」
確かにそうだ。
リクに限らず、俺達チームドロップアウトはそう考えない。
「どっちみち、私達の進路上にはいそうね」
確かにな。
「エルヴィスとリンダ姉さんが帰ったら相談しよう」
そう言うと、3人が頷いた。
「広島の件はー?」
高宮さんが聞いてくる。
「広島に行くメリットがますますなくなっただけだな。お好み焼きは諦めてくれ」
「小麦がないからないんじゃないかな? まあ、それはいいけどさ。でも、人間って噂になっているってことは確実にクラスメイトだよね」
「想像通りだな。他のクラスメイトはこのニュースをどう見てるか……」
SNSでも話題になっている。
クラスメイト達がネットを閲覧できる状況になっていれば目に入るだろう。
「両極端じゃない? ウチらみたいなのは隠れるけど、逆にこれから模倣犯みたいなのは出てきそう」
同じようなことをしようと思う人間が出てくるかもしれないからな。
「ますます終末世界になるな」
「日本はどうなっちゃうのかしら?」
「ま、私達はスルーだよ。さっさと東京に行って、第三の人生を始めよう」
結論はそこになるな。
「そうするか」
「そだねー。エルヴィスと姉さんが帰ってくるまでトランプでもしようよー」
「ユウ、かっこつけて、外を見てないでトランプやるよ」
かっこつけてはない。
「外が綺麗なんだよ」
そう言いつつ、3人のもとに行き、トランプを始める。
そして、夕方くらいになると、エルヴィスから『これから旅館に戻る』というメッセージが届いたので了解という言葉と共に部屋番号を返した。
「エルヴィスからメッセージが届いた。これから旅館に戻るってさ」
「姉さんからももうすぐ着くって来た。いや、運転中じゃね?」
同じようにスマホを見ていた高宮さんが首を稼げる。
「姉さんに何を言っても無駄でしょ。マイペースだし」
確かにマイペースだ。
トランプをやめて、2人を待っていると、ノックの音が聞こえてきた。
「どうぞー」
アヤカが答えると、扉が開き、エルヴィスとリンダ姉さんが部屋に入ってくる。
「待たせたな」
「おや? 楽しそうにしていますね? ユウさん、ハーレムじゃないですか」
ホント、マイペース。
「健全なトランプをしていたな」
「それはそれで楽しそうですね。よっこらせっと」
2人が席につくと、アヤカがお茶を淹れ、2人の前に置いた。
「わりーな」
「ありがとうございます。あなたは良い奥さんになれますよ」
それはそう。
「どうも。それでどうだったの?」
アヤカが聞く。
「聞き込みをしてきましたが、リクさんの例の写真ですけど、結構な人が知ってましたね」
「そりゃ俺っちの方もだな。笑ってたぜ」
なるほど……
「実は温泉でインプと一緒になったんだが、そいつも知っていた。先にこっちが仕入れた情報を話すわ」
2人にインプから聞いた話を伝えた。
「ふむふむ……こちらで集めた情報と重複しているところがありますね」
「こっちもだ」
2人が頷く。
「リクが人間っていうことはバレてなさそうだな」
「それはねーだろ。お前らもだが、マナの量が人間じゃない。悪魔は色んな種がいるし、見た目ではなく、マナで判断する」
「そうですね。それにまあ、人間だとバレたしても問題を起こしたり、よほど過激な悪魔に遭遇しない限り、スルーだと思いますよ」
実際、この2人がそうだからな。
「萩にいると思うか? 人間側の町がある東の方に行ったという可能性も十分にある」
「ありえますね。実は島根ではそこまで争いが起きておらず、警備がゆるゆるらしいんですよ。広島から疎開してきた人間達もいるらしいのですが、それも広島島根の県境辺りです。海側はのほほんとしているらしいですよ」
なるほど。
こっち側からの侵入はそこまで苦じゃなさそうだな。
「リクにこちらのことを伝えられる手段があれば良いんだがな」
「そこは難しいところですね。一応、もし、見かけたり、そういう情報が入ったら連絡してもらえるようには言っているんですが」
それは助かるな。
リクとすれ違うこともありえるのだ。
「俺っちも情報を仕入れてきたぜ。情報というか、例の写真を撮って、SNSにアップした奴とコンタクトが取れた」
え?
「マジか? ゴブリン?」
「いや、サーファーのウェアウルフらしい」
うーん……まあ、そういう悪魔もいるだろう。
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