第053話 ちょっと観光
俺達は話をしながら窓から外を見る。
「海が綺麗だな」
「そうね」
海沿いを走っているので左の方は海が広がっている。
「東京にいた時はあまり海を見る機会がなかったから新鮮だな」
「とにかく建物ばっかりだったしね」
「自然が多くて良いじゃん、良いじゃん」
「異世界とは違った感じだよね」
うん、綺麗だ。
「みなさーん、そろそろもっと海が綺麗に見えるところに着きますよー」
引率の下ネタ先生が告げる。
「どこか行くのか?」
「道中にスポットがあるんですよ。えーっと、あれは何て読むんでしたっけ? かどしま? つのしま?」
どっちも聞いたことないな。
「つのしまだな。これだろ?」
エルヴィスがリンダ姉さんにタブレットを見せる。
「あー、それです、それです。角島です」
いや、前を見て。
「アヤカ、知ってるか?」
「さあ? 島に行くの?」
「わからん」
江の島的な?
江の島に行ったことないけど
「着いてからのお楽しみでーす。着くまでにエロしりとりでもしますー? 私とユウさんの一騎打ちになるかもしれませんねー。多分、アヤカさんは即脱落です」
無視無視。
「リンダ姉さん、長門はいつくらいに着くんだ?」
「昼前には着くと思いますよ。本日はそこで休憩です。私とエルヴィスさんは調査をしますが、あなた方はゆっくりと温泉を楽しんでください」
午後からオフか。
「リクや島根のことか?」
「ええ。リクさんは萩にいました。長門に移動している可能性もゼロではないですし、調査は必要です。それとおっしゃる通り、島根のことですね。まあ、悪魔の町のことは私達に任せてください。さて、話している間にもうすぐですよー」
リンダ姉さんはそう言うと、左に曲がった。
すると、前方にはずーっと続く橋があり、左右は綺麗な青色の海だった。
「おー、すげー」
「綺麗ねー」
「太陽が反射してキラキラしてんね」
「日本にこんなところがあったんだ」
ここは人気だろうなー。
誰もいないけど。
「すごいでしょ? ゴールデンウィークはとんでもなく混むらしいですよ」
「誰もいないけどな」
今、ゴールデンウィークじゃない?
「悪魔はあまり好みませんからね。では、この辺で……」
リンダ姉さんが橋の真ん中くらいで車を止めた。
「止めていいのか?」
「誰もいないじゃないですか。せっかくなので降りて、楽しんでください。それくらいの時間はあります」
「そっかー」
ちょっとわくわくしながら降りると、アヤカ達も降りてくる。
「おー、海だー」
「風が気持ちいいわね」
「すっご」
「この海を私達が独り占めだね」
良いなー。
「あの島に誰か住んでるのか?」
「さあ? 不便ですからね。漁師のサハギンくらいじゃないですか?」
悪魔2人は海に興味がないらしい。
「写真、撮ろう」
「あ、良いわね。関門橋は撮れなかったし」
関門橋は九州と山口を繋いでいる橋ね。
昨日、アヤカと調べたら下関と門司を繋ぐから関門橋と言うらしい。
「高梨君、貸してみ? アヤカと撮ってあげる。待ち受けにでもしな」
高宮さんがそう言うのでスマホを渡した。
「「ピース」」
アヤカと並んでピースサインをする。
「息を合わせて面白みのないサインだねー」
高宮さんはそう言いつつも写真を撮ってくれた。
「真面目。私がSNSに載せたら炎上する写真というのを教えてあげる」
北浦さんがそう言って、スマホを渡してきたので構える。
すると、北浦さんが橋の高欄に上がった。
確かに叩かれそうだ。
「落ちるなよ」
「落ちない。私はローグ系最強と言われる暗殺者。君達とは違うのだよ」
暗殺者がローグ系最強は初めて聞いたな。
というか、他所の上位ジョブを知らん。
「ヒナー、ジャンプしてみ」
「任せて」
高欄の上にいた北浦さんがジャンプをすると、軽く数メートルは飛ぶ。
その様子を写真に撮ったので見てみると、なんか合成みたいな写真だった。
「アヤカ、できるか?」
「飛べるけど、着地で滑らせて海に落ちそう」
北浦さんは普通に高欄に着地していた。
「高宮さん」
「いや、やんないから。それよりも写真撮って。仲良し女子で撮るから」
高宮さんがスマホを渡してきたので3人を撮る。
真面目なピースサインのアヤカとふざけている2人の写真だ。
あとで送ってもらおうと思った。
その後も写真を撮ったりしながら海を楽しんでいたが、さすがに30分くらいで車に乗り込んだ。
「楽しめました?」
リンダ姉さんが聞いてくる。
「ああ。すごく良かった。やっぱりスマホがあると良いな。異世界ではすぐに電池が切れて、写真を撮れなかった」
「確かにね。最初はライトとかに使ってたからあっという間に電池がなくなったのを覚えてる」
俺もだった。
最初の夜でみるみると電池が減っていき、あっという間になくなった。
そして、スマホの電池が切れた時の絶望感はすごかった。
元々、圏外だったが、あの瞬間に日本との関係が完全に断たれたって思ったのだ。
「それは良かったです。そうやって思い出をいっぱい作ってくださいね。では、長門に向けて、出発です」
「姉さーん、腹減ったー」
「私も。無駄にはしゃいでしまった」
確かに北浦さんがアクロバティックだったな。
動画も撮ったが、あれは炎上ではなく、真っ当にバズると思う。
「あと30分で長門に着きますから我慢です」
来た道を引き返し、元の道に戻ると、長門を目指して進んでいった。
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