第051話 青春? ★
「俺っちはちょっと同胞と飲みに行くからお前らは先に帰ってくれ」
「あ、私も先ほどの店員と飲みに行きます。皆さんは先にホテルで休んでいてください」
どうやら悪魔2人は二次会があるようだ。
「姉さん、二日酔いはやめてねー」
「飲みすぎないでね」
「大丈夫ですよ。私はそこまで飲みませんから」
俺達はこの場に2人を残し、ホテルに向かう。
そして、部屋の前で高宮さんと北浦さんと別れると、部屋に入り、順番に風呂に入った。
「見えないな……」
先に風呂に入り、窓から外を見ているのだが、暗くてよくわからない。
「ふう……良いお湯だった」
風呂場の扉が開き、ラフな部屋着に着替えたアヤカが出てきた。
言うまでもなく、可愛い。
「フグ、美味かったな」
「そうね。さすがに毒部分を食べようとは思わなかったけど、良かったわ」
俺も毒の部分は食べられなかった。
「ここも良い町だなって思った」
「ええ。それは私もそう思った」
俺達は並んでじーっと何も見えない海を見続けた。
ただ、少しすると、灯りがついている船がゆっくりと通っていく。
「綺麗だな」
「そうね……ねえ、あのまま異世界にいて、誰も魔王を倒せずにいたらどうなってたかな?」
うーん……
「ウチの店を手伝ってくれよ」
「まあ、なんとなくそうなったんじゃないかって思うわね」
俺達の関係はどうなっていたかな?
まあ、そこは今とあまり変わらないか。
「あの店、結構高かったんだけどな」
「そういえば、放っておいたままになっちゃったわね」
俺の貯めていた全財産を使ったのに。
「向こうでも神隠しだ」
俺達は5年もいたから知り合いもそこそこいたし、店の常連だって、少なからずいたのだ。
「波乱万丈ねー……」
「ホントにな。唯一の救いは向こうで特別な人を作らなかったことだ。もし、結婚とかして、家族とかいたらとんでもないことになる」
「私ら、26、7だし、年齢的にはいてもおかしくないものね……」
俺達にだって知り合いはいたが、結局は同じ6人でコミュニティを作っていた。
俺とアヤカもだが、他の4人も特別誰かと親しいってことはなかったはずだ。
「強制的に帰らされたし、家族を連れて帰ることができたとは思えない。もしかしたらそういうクラスメイトもいるかもな」
「10年もいたものね……ユウ君はそういう人がいなかったの? 5年のあの町の生活だけじゃなくて、旅もしてたでしょ」
アヤカさんですね。
「俺はない。ミナトとリクもないと思う。やっぱりどこかで帰ることを考えていたんじゃないかな」
「まあ、私達もかな? あのさ、ちょっと聞くけど、もし、帰るか残るかを選べたらどうしてた?」
………………。
「アヤカ達次第だと思うけど、残る方に一票を投じてた。理由は前に言ったやつ」
帰っても10年も行方不明だったし、居場所なんかない。
世間に騒がれ、ロクな職にも就けないだろう。
「親とかの家族と天秤にかけても?」
残るなら当然、会えなくなるからな。
「1人だったら帰る方を選ぶし、アヤカ達が帰る方を選んだら悩まずに帰る。アヤカ達が残るなら残る」
ぶっちゃけて言うならアヤカ達ではなく、アヤカだけど。
いや、他の4人もいてほしいけどね。
「そっか……まあ、私もそっちかな。正直ね、もう冒険者としての活動も辞めようかなーって思ってた」
それは初めて聞いたな。
「そうなのか? 高宮さんと北浦さんも?」
ミナトとリクはそんな雰囲気はなかった。
「2人には言ってないし、そういう話し合いをしたわけじゃない。なんとなく頭の中にあったこと。ユウ君がウチで働けってすごく誘ってくるしね」
一応、他の4人にも言っていることだ。
俺は5人に常々、危険な冒険者を辞めて、次の道に行かないかと話をしていた。
何をやるにしても早いに越したことはないから。
「俺達、もう30歳が見えてきたからな」
「うん……そこよね。いつまでもやれる仕事じゃないのはわかってたし。他の4人も漠然とは思ってたんじゃない?」
かもな。
俺達はそのまま外を眺め続けた。
◆◇◆
ベッドでゴロゴロしながらスマホを眺めていると、ノックの音が聞こえてきた。
すると、ヒナが起き上がり、扉の方に行く。
「誰?」
『私です』
リンダ姉さんの声だ。
「どぞー」
ヒナが扉を開け、リンダ姉さんと一緒に戻ってきた。
「はい、お土産です」
リンダ姉さんがテーブルに缶酎ハイを置く。
「お酒ー?」
二次会帰りでまだ飲むの?
「まあ、良いじゃないですか。女子会です。アヤカさんも呼びますか?」
「アヤカが来るわけないじゃん」
「ユウと一緒だし、あの2人は真面目だからまずお酒は飲まない」
前に飲んだ時もぶつぶつ言ってたのはあの2人。
そして、一番酔ってた。
「あそこのカップルはちょっと変わってますね」
「そうなんだよー」
「ずっとそう」
ホントにね。
「あのー……付き合っているといいますか、男女の関係なんですか? ユウさんにもアヤカさんにも異性の匂いがしないんですけど」
異性の匂いって何だろ?
まあ、ニュアンスはわかるんだけどさ。
「ないと思う」
ヒナが首を振り、テーブルにつくと、缶酎ハイを取ったので私もベッドから降り、テーブルに向かう。
「高梨君、奥手だから」
高梨君の言い分もわからないでもないけどね。
6人で上手くやっているのは確かだし、男女問題は亀裂が入る。
「ユウさんがアヤカさんを好きなんですよね? 初めて見た時にそれははっきりとわかりましたけど」
「そだねー。私、学生時代に高梨君の後ろの席だったからよくわかるけど、しょっちゅうアヤカの方を見てた」
あ、こいつ、アヤカのことが好きだなってわかった。
そして、5年後も変わってなかった。
「アヤカさんは?」
「アヤカ、マジでわからない」
「ほんわかしてるけど、感情をあまり表情に出さないしね」
そんな感じ。
「確かにちょっとわかりづらい方ですが……絶対にユウさんの感情には気付いてますよね?」
「そりゃね」
好意を向けられているのはすぐにわかるだろう。
「まあ、アヤカも嫌ってはないし、好んではいるんじゃない? あの2人はちょこちょこからかうくらいで深入りしたらダメだよ。ぶっちゃけ、姉さんが否定したけど、実はすでに男女の関係ですって言われてもそうなんだとしか思わない」
私はそこそこ相談が来るから知ってるけど。
「一番の疑問を聞いてもいいですか?」
「どうぞー」
多分、あれ。
「あの2人、名前で呼び合ってますよね? 別にそこは良いんですけど、あの2人、お互い以外は苗字呼びじゃないですか」
うん。
「あれ、いつからだっけ?」
ヒナが聞いてくる。
「3年前くらいかな? 2人でデートした時」
「あー、買い物デートね。あった、あった」
ちょっと懐かしい。
「あ、デートはするんですね」
「基本的に男女に分かれて行動することが多いけど、あの2人は2人で動くことも多いよ」
「今も同じ部屋だしねー」
これに違和感がないレベルだったりする。
「…………付き合ってないんですか?」
「だから放っておけばいいんだって」
「そうそう。どうせそのうちくっつく。高梨君はマジだし、アヤカも別に嫌がってないもん」
というか、高梨君、東京に着いたら結婚するとか言ってたし。
そこはさすがに段階を踏むようにアドバイスする予定。
「ふーん……あなた達は?」
「何もないよね?」
「ないねー。大村君と松永君もじゃね? あんま聞いたことないし」
そもそもそういう話をしない。
「枯れてますねー」
「それどころではなかったと思ってほしい」
まあね。
「ふむふむ。私が男の自信を付けさせてあげるという案はどうですか?」
「やめなって」
「笑えないって」
自分らは26歳だけど、心は高校生なんだから。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




