第047話 え? 死んでる?
ホテルに入ると、受付をスルーし、エレベーターの方に向かう。
「もう鍵は受け取ってるのか?」
「ええ。7階ね」
確か705号室が俺達で高宮さん達が706号室だったな。
エレベーターに乗り込むと、7階を押す。
「高梨君、リンダ姉さんに連絡するからエルヴィスの方をお願い」
「了解」
高宮さんがスマホを取りだしたので俺も取りだし、エルヴィスにホテルに入ったことと部屋番号を伝えた。
すると、7階に着いたので部屋に向かい、それぞれの部屋の前に立つ。
「2人が帰ってくるまで暇だし、ちょっとしたらそっちに行くからねー」
「トランプでもしよ?」
高宮さんと北浦さんがそう言って、706号室に入っていったので俺とアヤカも705号室に入る。
部屋は結構、広く、ゆったりとしていた。
さらには大きな窓からは海が見える。
「おー、良い部屋ねー」
アヤカが窓の方に行き、眺めを楽しむ。
「そうだな。なあ、同じ部屋で良かったのか? 金というか、マナはあるし、シングルもあるだろ」
「それねー……ヒナと話し合ったんだけど、今後はシングルを避けるべきじゃないかなって。さすがにホテルで襲われることはないだろうけど、別府でも熊本から帰ってくる時も夜に問題があったじゃない? そういう観点から考えてもある程度はまとまった方が良いんじゃないかって。そっちの方が迅速に動ける」
なるほど。
一理あるな。
なんか脳裏に親指を立てて、ウィンクをしている北浦さんの姿が浮かぶが、考え自体は間違ってはいない。
異世界でも普通に泥棒とかいたからなるべく固まって行動をしていたし。
「わかった。俺で悪いな」
「いいわよ。ユウ君と一緒も楽しいしね」
あー、可愛い。
2年生になって、あの子、可愛いなーって思ってたけど、やっぱり可愛い。
異世界で再会できて良かった。
そんでもって、一緒に戻ってこられて良かった。
「どっちのベッドにする?」
「うーん……手前かな? ユウ君、窓際で良いわよ」
「そうか? じゃあ、それで。しかし、船が結構、通るな」
土産物屋を巡っていた時も通ってたし、すごい数だ。
「あれに乗らせてもらったら大阪とか兵庫に行けそうよね?」
そうかもな。
「乗らせてくれないと思うけどな」
そもそも停まらないし。
「まあね。それに目的地は萩よ」
リクとの合流な。
「あいつ、元気にやってるかねー?」
「やってんじゃない? 松永君は精神的に強いイメージがあるし」
強いな。
大人しい人間だが、結構、動じないし、いつも冷静だ。
「そういう意味ではミナトが心配だな」
あいつ、お調子者なところがある。
「やっぱり会いたい?」
「そりゃそうだろ」
「いや、それは私もそうよ。でも、男子がユウ君だけだし」
あー、それね。
「若干、気まずいと思わないでもないけど、アヤカも高宮さんも北浦さんも気心は知れてるから大丈夫」
あとやっぱりエルヴィスがいるのは大きい。
「そう? なら良かった。私は逆だったらちょっと気まずいかもーって思う。まあ、ユウ君がいれば何とかなりそうだけど」
かもな。
あいつら、アヤカ相手にはちょっと引くし。
理由は多分、俺。
「一緒に転移して良かったな」
「そうね。やっぱり1人だったらと思うと、ぞっとするわ」
「俺もだよ」
俺達が話をしていると、ノックの音が聞こえてきた。
すると、アヤカが扉の方に行き、高宮さんと北浦さんを招き入れる。
「すごい部屋だねー。さすがは姉さんのチョイス」
「広々としているしね」
2人もこちらにやってきて、窓から海を眺める。
「アヤカもだけど、2人はポーションのストックがあるか?」
「あ、ないねー」
「1本持ってたけど、飲んじゃった」
「私もないわね。そもそもそれをもらいにあなたの店に行ってたから」
ミナトやリクもだが、魔物狩りの仕事を行く時は各種ポーションを渡していた。
今はいつ戦闘になるかわからないし、ある程度のストックを作っておくべきだろう。
「作るわ。3人はトランプでもしていて」
「ありがと」
「さすがは高梨君だね」
「我らがリーダー。いや、社長」
うんうん。
北浦さんはわかってるな。
俺は丸テーブルにつき、ポーションの作成を始める。
女子3人もベッドでトランプを始めた。
「あ、そうそう。リンダ姉さんから連絡があって、夕食は知り合いの店に行くんだってさー。終わったら行くからそのつもりでって」
へー……
なお、エルヴィスは了解とだけ帰ってきた。
「知り合いの店? サキュバスの店か?」
「すごいね……一気にいやらしくなった」
なったな……
どう考えても大人の店だ。
「さすがにないと思うが……ないよな?」
「ないんじゃない? ウチらも行くわけだし」
まあ、そうか。
えっちな人だが、俺以外には良識がありそうだったし。
「ならいいか……」
その後も楽しんでいる3人を眺めながらポーションを作っていった。
そして、15時を回ったところで作り終えたので3人に渡す。
「ちょっとでも体調が悪いと思ったら飲んでくれ。悪化するとマズい。特に今の世の中だと病院がどこまで機能しているかわからないし、悪魔の町には確実にない」
「確かにそうよね……というかさ、私達、病院に行けるのかしら?」
アヤカが首を傾げた。
「一応、人間だし、行けるんじゃないか?」
「いや、学生証だけで行ける? 私も詳しくないんだけど、保険証は?」
保険証って何だっけ?
俺、あまり病院とかに行かなかったんだよな。
「え?」
高宮さんと北浦さんを見る。
「わかんない……」
「というかさ、今さらだけど、私らってどうなってんのかな? 戸籍的に死んでない?」
えーっと?
「ちょ、ちょっと調べてみる」
「そうね……」
「えーっと……」
「大丈夫かな……」
俺達はそれぞれのスマホを取りだし、調べていく。
「保険証は無理っぽいな」
そう書いてある。
親の扶養とか色々と書いてあるが、結論は無理。
「まあ、そもそも持ってないんだけどね……」
持ってるのは親だろうしな。
ただ、どちらにせよ、もうダメっぽい。
「あの……7年で死亡扱いって書いてあるんだけど……」
高宮さんが口元を引きつらせながら顔を上げた。
「いや、それは申請がいるっぽいよ。さすがにしてないんじゃない? 少なくとも、アヤカとマユミの親は絶対にしてない」
スマホを解約してないんだからな。
生きていると思っているからだ。
「ウチはどうだろ……?」
「私も微妙のような……」
俺と北浦さんの親はスマホを解約している。
いやまあ、もったいないからわかるんだけど。
「いや、もし、そうだとしても、さすがに取り消せるでしょ」
「うん、そうだよ」
アヤカと高宮さんが優しいぜ。
「うーん……まあ、そこはいいや。でさ、病院は行けないってことでいいか?」
死亡云々は東京に行ってから考えればいい。
今大事なのは病院。
「微妙……保険証がなくなったら全額負担みたいだけど、そもそもなんで保険証がないんだってなりそう」
なりそうだな。
「やっぱり避けるか。今の状態で目立ちたくないし、政府や病院のお世話になりたくない」
絶対に騒ぎになる。
今はそういう状況じゃない。
少なくとも、ミナトとリクと合流しないといけない。
「となると、ユウのポーションか、リクのヒール頼みになるね。あ、ミナトが危ない」
あいつは回復手段がないからな。
「大村っちの行方も早めに掴みたいねー。全然、情報がないんだけどさ」
あいつも慎重派といえば、そうだからな。
目立つことは避けるだろう。
「ユウ君、ちょっと負担になるかもしれないけど、ポーションをお願いね」
「大丈夫。いくらでも作れるから」
「ありがと」
いえいえ。
「やはり頼るべきは社長かー」
「ブラック企業じゃない限り、一生、ついていく」
どうも。
それはしないからついてきてくれ。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




