第044話 情報収集へ
「リンダさんが言ってたように土産物屋があるわね」
「市場もあるな」
この辺の海辺は観光地らしい。
市場も有名らしく、観光名所にもなっている。
もっとも、悪魔に支配される前の情報だが。
「とりあえず、行ってみようかー。それでどうするー? 一緒に行く? それとも効率を重視して、ばらける?」
高宮さんが聞いてくる。
「そんなに広いわけでもないし、一緒で良いと思う。それに単独行動は厳禁だ」
悪魔の町ということもあるが、たとえ、人間の町でも単独行動は避けた方が良い。
治安も悪いし、何よりもクラスメイトのことがある。
「ふむふむ……じゃあ、4人で行こうか」
俺達は立ち上がると、ホテルを出て、裏にある海に向かう。
「海ねー……」
「結構、釣りしてる悪魔がいるな」
ゴブリンもいる。
地味にエルヴィス以外では初めてだ。
「橋のところにハーピーがいるわよ」
アヤカの言う通り、橋の下にかなりの数のハーピーがいる。
「巣でも作ってんじゃないか?」
「あんなところで寝たくないわね」
めちゃくちゃ高いし、そりゃそうだ。
俺達が海を見ながら歩いていくと、土産物屋が見えてきた。
「何を売ってるのかしら?」
「あまり変わらないとは思うが……」
俺達は土産物屋に入る。
すると、まだ朝ということもあってか、他の客はいなかったが、サハギンが店員をしていた。
「いらっしゃーい。見ていってねー」
サハギンが感じの良い笑顔で声をかけてきたので商品を見ていく。
「海産物が多いな」
「まあ、海だしねー……フグ……」
フグ刺しや切り身の冷凍が売っている。
「大丈夫だろうか?」
「さあ?」
アヤカと顔を見合わせたが、その後はばらけ、それぞれ興味をあるものを見ていく。
木刀が売られていたので見ていると、隣に高宮さんがやってきた。
「買うん?」
「いや、さすがに買わない」
見てただけだ。
「アヤカと同じ部屋になったね」
それな。
「なんでかね? まあ、別府でも熊本でも同室だったけどさ」
温泉旅館はちょっとどぎまぎしてしまったが、もうそこまで気にしてはいない。
「良い捉え方をすると、オッケーなんじゃない?」
そうかぁ?
「違うと思う」
「だろうね。ま、本人に聞いてみれば?」
「自意識過剰と思われないかな?」
キモくない?
「別に普通でしょ」
うーん……
「我らがリーダー、ちょっとー」
アヤカと一緒に冷凍食品を見ている北浦さんが手招きしてきた。
「会計、何だー?」
高宮さんと2人のもとに向かう。
「会計って何?」
北浦さんが首を傾げた。
「会社を興したら北浦さんが会計。計算早いし」
「会計士の資格を取らないといけないのか……いや、それはあとでいいや。ユウ、保存魔法はどんな感じ?」
保存魔法は空間魔法に収納しているものの時間の経過を緩める魔法だ。
なお、空間魔法に生きた動物なんかは入れられないのでコールドスリープ的なことはできない。
「得意だぞ」
錬金術師としては素材の保存なんかもあるから必須の魔法だし。
「じゃあ、これらを買ってさ、どっかで食べるってできる?」
北浦さんが冷気が漏れているオープンケース内にあるフグの切り身なんか見る。
「できると思うけど……」
フグは毒があるんだが?
ここが人間の町ならともかく、悪魔の町だぞ。
「え? 買う? 大丈夫?」
高宮さんも心配っぽい。
「売ってるんだから大丈夫でしょ」
「いや……悪魔は毒が効かないとかあるかもしれないじゃん」
高宮さんが声を落とした。
「マユミ、我らがリーダーのジョブを忘れたの? へっちゃらだよ」
まあ、毒消しのポーションとかもあるけども。
「大丈夫なん?」
高宮さんが確認してくる。
「ちょっと待ってくれ」
スマホでフグの毒を調べる。
「いける? 私、食べたことないんだよね」
「私も」
「そういや、私もだ」
俺もだよ。
「えーっと……テトロドトキシンは神経毒だな。これならポーションじゃなくても分解できるぞ」
アヤカが動けなくなった山根の痺れ粉を分解したのと同じ要領だ。
「よし、買おう」
北浦さんが籠にフグを入れていく。
「どこで食べるんだ?」
「これからは長旅。どっかの空き家とかで一泊する時」
まあ、あの熊本から帰る時にこういうのがあればちょっとは楽しくなるか。
「調理道具は?」
「その辺は小倉で買った。ウチは両親共働きで私が料理を作ることも多かったから得意」
北浦さん、貧乏って言ってたもんな……
「私も得意」
アヤカは家庭的だなー。
「やっぱり仲間は良いねー。誰かが何かを得意だ」
多分、料理が得意ではない高宮さんがそう言いながらうんうんと頷いた。
「じゃあ、フグ刺しも買ってくれ」
「いいよ」
北浦さんがフグ刺しを籠に入れる。
その後も乾きものだったりの保存の利くものを籠に入れていくと、受付のサハギンのところに行く。
「よろしく」
「いっぱい買ってくれて、ありがとうねー。これは仲間が獲って、捌いたものなんだよー」
別府でもサハギンが漁をしてたな。
「店員さんさー、ウチら、九州から出て、旅をしてるんだけど、この先はどう?」
高宮さんが店員に聞く。
「旅ねー……広島は良くない噂を聞くね。あそこも海がある町だから仲間のサハギンがいるけど、怖くて夜は外に出られないんだってさ」
例のやつか。
「それ、ウチらもSNSで知った。マジなん?」
「とんでもない現場だったらしいよ。しかも、目撃者がゼロ。あっちでは広島の切り裂きジャックって言われてる」
切り裂きジャック……
悪魔が言うと違和感がすごいな。
「ふーん……じゃあ、やめとこうかな。島根は?」
「島根? あそこは人間の町だよ。いや、西の方は悪魔勢力だったかな? まあ、どっちにしても危ないから広島市を避けて、山の方から東に行けば良いんじゃないかな? 広島も広いし、それで行けるんじゃない?」
島根は人間の町か。
「ねえ、西の方に詳しい人とかいない?」
アヤカが聞く。
「んー……市場の方に行ってみなよ。あそこは獲れたての魚介を提供しているし、店員はサハギンだよ。やっぱり詳しいのは海で遠征とかに行く私達の種族だし、岡山とかまでは普通に行くしね」
へー……
「店員さんは? 行かないの?」
「私は泳げないから漁には出ないね」
サハギンが泳げない?
「そうなの? サハギンなのに?」
「人間の網に引っかかって足を怪我しちゃったんだよ。だからこうやって販売員をしているわけ」
なるほど……
「あ、ごめんなさい」
「いいの、いいの。こうやってお客さんと話すのも楽しいしね。じゃあ、5万2000マナね。5万でいいよ」
店員が手を差し出してきたので握り、マナを支払う。
そして、買った品物を空間魔法に入れると、店を出て、市場を目指した。
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