第043話 26歳の思春期
海の眺めを楽しむと、すぐに高速を降りる。
そして、下道を進んでいくと、再び、海が見え、さらには上の方に大きな橋が見えた。
「あそこがさっき通った橋か」
「大きいわね」
よくあんなものを作れるなって思う。
あれこそ魔法だ。
そのまま見ていると、車が近くにあるホテルの駐車場に入った。
「さて、ホテルです。海が見えるホテルなんですよ」
ほー……
「良いわね」
「でしょー? さて、話した通り、ここからは別行動です」
リンダ姉さんが車を適当な駐車スペースに止め、振り向く。
「俺達はこの辺で調査をすればいいのか?」
「はい。土産物屋も市場もあります。観光でもしながら聞いてみてください。それが終わったらホテルで待機です。まあ、自由行動ですね」
そんなもんか。
「わかった。エルヴィスとリンダ姉さんはそれぞれの仲間に会うんだったな?」
「ああ。ちょっと乗せてもらうが、それ以降はリンダとも別行動だ」
「夕方までには私達もホテルに入ります。何かあったら連絡してください。こちらもしますので」
基本的に情報収集は2人が頼りだ。
悪魔の町だし、仕方がない。
「了解。降りるか」
「ええ」
「姉さんらも気を付けてねー」
「よろしく」
俺達4人は車から降りる。
「この町の悪魔も大人しい人が多いです。ですが、どこにも悪い人はいますし、あまり遠出は避けてください。それではまた後ほど」
リンダ姉さんはそう言って、車を動かし、駐車場から出ていった。
「どうする?」
3人を見る。
「なんか放り出された気分になるわね」
「この辺りのことを全然、知らないしねー」
「とりあえず、ホテルにチェックインしてさ、この辺りを調べない? それからでも遅くないでしょ」
それがいいか。
「チェックインできるの? まだ9時過ぎよ?」
「大丈夫じゃない? 悪魔はその辺がルーズだし」
なんとなくわかる。
「アヤカ、旅館も朝から入れただろ」
「あー、朝からカップル」
仲居メデューサにそう言われたな。
あの人はどうなったんだろうか?
いっぱい彫刻を作ったのかな?
「まあ、行ってみようよ。ダメで元々じゃん」
高宮さんがそう言って、ホテルに向かったのでついていく。
そして、中に入ると、広いロビーとなっており、奥の受付に若い男性が立っているのが見えた。
「……人間じゃないよな?」
アヤカにこそっと聞く。
「……ちょっと青白いし、ゾンビじゃない?」
ゾンビ店員多いな。
「ちょっと聞いてくる」
「私も行くわ。2人は待ってて」
北浦さんとアヤカが受付に向かったので俺と高宮さんは近くにあったソファーに腰かけた。
「高梨君、どう?」
正面に座った高宮さんが聞いてくる。
もちろん、アヤカのことだろう。
「進展はないかな……」
「ふーん……いけると思うけどなー」
俺もそこまで悲観的なわけではない。
脈はありそうかなくらいには思っているのだ。
アヤカ、色々と拒否しないし。
「難しいものでさ、最初は脈がないかなって思ってた。あるかもーって思った時には俺達6人の関係性が固まっていたから動けなくなった」
6人で仲良く平和にやっているところなのだ。
それなのに下手をすると、亀裂が入りそうなことをしたくないと思ってしまう。
一緒にいた5年はそれだけ長かった。
「それね。わかる、わかる。でも、いけると思うよ」
うーん……
「アヤカがどう思っているかなんかを聞いてない?」
「聞いてない。からかうことはあっても、その話題だけは私もヒナもアヤカに振らないし、アヤカの方から何か言ってくることはない」
そっかー。
「東京に着いたら結婚してって言おうかと思ったけど、言えなかった」
「いきなりかい……いや、異世界はそうか。それにウチらも26歳……いや、数ヶ月後には27歳か」
そうそう。
別に変じゃないのだ。
あの町には5年もいたが、普通に告白して、そのまま結婚した知り合いも結構いた。
「ぶっちゃけさー、アヤカは俺の想いに気付いていると思うんだ」
「100パー、そうだろうね」
100パーセントか。
「でも、アヤカがわからない」
「アヤカは昔からそうだよ。結構、感情が読めない子だし」
俺も読めない。
「うーん……」
「悩める26歳だねぇ……」
俺と高宮さんが話していると、アヤカと北浦さんが戻ってくる。
そして、アヤカが俺の隣、北浦さんが高宮さんの隣に腰かけた。
「……あの人、ゾンビじゃなくて、吸血鬼だって」
アヤカが顔を寄せ、小声で話してくる。
「……マジ? これまたボスキャラじゃん」
異世界で吸血鬼を見た事がないが、不死じゃないっけ?
「……マジ、マジ。料金はマナか血って言われたし」
えー……
「……マナだよな?」
「……当然」
だよねー。
「それでホテルは取れたん?」
北浦さんが2人に聞く。
「取れた、取れた。でも、今は掃除中だから部屋に入るのは午後からだって」
「代わりにロビーはいくらでも使っていいってさ」
なるほどね。
「海が見える部屋か?」
アヤカを見る。
「そう要望したから大丈夫。私らは705号室でマユミとヒナが隣の706号室」
へー……
『え? 同じ部屋だけど?』
『ほらー。いけるってー』
高高同盟のアイコンタクト会話。
内容は想像だが、多分、合ってる。
「それでちょこっと聞いたんだけど、萩に行くなら長門の温泉がおすすめだって」
長門ってどこだ?
わからないのでスマホを取りだし、地図アプリで確認する。
「萩の西か……」
「そんなに離れてないわね」
「良いじゃん。2人の話を聞いてから温泉に行きたかったんだよね」
「でしょ?」
女子3人もスマホを取りだして確認すると、頷き合った。
「リンダ姉さんとエルヴィスにも相談かな?」
「そうしましょうか。で? どこで調査をしようかしら……」
「そうだなー……」
俺達はスマホでこの辺りのことを調べることにした。
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