第041話 出発
エルヴィスからリクの情報を聞いた俺達はトランプをし、九州最後の夜を終えた。
翌日、朝起きた俺はシャワーを浴び、朝食のカップ麺を食べる。
そして、準備をし、ロビーに降りると、アヤカが1人で待っていた。
「あれ? 1人か?」
時刻は7時55分であり、約束の時間の5分前だ。
「エルヴィスはもう来てるわよ」
アヤカが玄関の方を指差すと、タバコを吸っているエルヴィスとリンダ姉さんがいた。
2人がこちらに気付いたのだが、エルヴィスはいつもの顔で軽く手を上げ、リンダ姉さんは笑顔で手を振ってきた。
首を軽く傾げており、非常に可愛らしい。
なお、チャームは食らってない。
「高宮さんと北浦さんは?」
「声をかけに行ったんだけど、慌ててたわね。あの2人はここにずっといたから荷物の整理とかあるみたい」
あー、それはそうか。
俺達は結構、動いてたけど、あの2人はここで待機だったもんな。
俺達はスマホの時計を見ながら高宮さんと北浦さんを待つ。
すると、59分になったところでエレベーターが開き、2人が小走りでやってきた。
「ごめーん」
「マユミの靴下を探してた」
片方がどこかに行くのはたまにあるからな。
「あったのか?」
「あった、あった。あ、お世話になりました」
「どもー」
2人が受付にいるウェアウルフに挨拶をする。
「おう。気を付けてな。また来いよ」
俺達はウェアウルフに頭を下げると、ホテルを出る。
「集まりましたね。では、行きましょうか。乗ってください」
リンダ姉さんがそう言って、運転席に乗り込んだので俺達も乗り込む。
昨日と同じく、助手席にエルヴィス、真ん中に俺とアヤカ、後ろが高宮さんと北浦さんだ。
「お前ら、忘れものはないかー?」
エルヴィスが聞いてくる。
「ああ」
「私らはそのままだしね」
「何度も確認したから大丈夫ー」
「エルヴィス、先生みたい」
俺もちょっと思った。
「うるせーよ」
「では、参りましょうか」
リンダ姉さんが車を動かす。
「リンダ姉さん、リクのことは聞いたか?」
「ええ。先ほど、エルヴィスさんに聞きました。萩でしたね」
さっきのタバコタイムはその話か。
「そういうわけだから萩を目指したい」
「ええ。そのつもりです。ただ、今日は下関までですね」
ん?
「すぐそこじゃないか?」
海を渡ってすぐが下関のはずだ。
「車で30分です」
やっぱり近いな。
「もっと行けない?」
「情報収集が先です」
「ユウ、昨日言っただろ。これから先は俺達も詳しくない。だからちゃんと調べてから行かないと嫌なトラブルに巻き込まれるぞ。お前らのクラスメイトのこともあるし、何よりも封鎖されている道っていうのは多いんだ。そして、最悪は戦地に行ってしまう」
あー、それもそうか。
これまではエルヴィスが大分、熊本に詳しかったからスムーズに進めたんだった。
「わかった」
「そうね。焦らずに行きましょう」
それがいいか……
「でも、リク、大丈夫かな? リクってあんまり戦えないよ?」
北浦さんが心配そうに聞いてくる。
「昨日、あれからSNSで調べたが、萩はそこまで荒れているわけじゃないから安心しろ」
「そうですね。それと無理をすると二次災害です。誰かを救うために誰かが死ぬ。地獄ですよ?」
わからないでもない。
「北浦さん、リクは弱くない」
「わかった。慎重に行こう」
北浦さんが納得したようで頷いた。
「では、今日の予定を説明します。まず下関に行き、ホテルに行きます。そこであなた方を降ろしますので海でも見ながら情報を集めてください。私は私のコミュニティで探します」
「俺っちもだな」
別行動をするわけか。
「コミュニティって?」
アヤカが聞く。
「悪魔は別に全員が仲良しこよしではありません。ですが、同種族ならどこに行っても受け入れてくれます。下関にもサキュバスはいますのでそこで話を聞いてきます」
「俺っちもだな」
なるほど。
「わかったわ。私らはどうすればいいの?」
「あの辺は土産物屋だったり、海を見ている悪魔が多いです。適当に話でも聞いてください。終わったらホテルで待機ですね。私達も夕方には戻りますので」
俺達はあんまり期待されてないな。
まあ、人間だし、仕方がないか。
「エルヴィス、リンダ姉さん、これからの道中のこともだけど、クラスメイトの情報も集めてくれ。怖いのはそいつらだ」
「わかってる」
「ええ。私もそこを重視しています。あなた方は自分達をドロップアウト組と称しますが、とてもドロップアウトするようなマナの量ではありません」
そこそこ頑張ってたからな。
「最初の5年は毎日のように魔物を倒していたんだ。先行組には負けるが、何もしてない自由組よりは強いぞ」
そこだけは胸を張れる。
「その辺を詳しく知りたいです。先行組は具体的に何人くらいなんですか?」
「えーっと?」
アヤカに助けを求める。
「生きているのが28人よ。先行組は10人くらい?」
アヤカが後ろを見る。
「そんなにいるー? なんだかんだで半分くらいじゃない?」
「全員があのまま突っ走ったとも思えないしね。最後の3年間は誰も死んでないし」
確かに神のアナウンスはなかったな。
「それでもあなた達より上の人間が10人くらいはいるわけですね」
うーん……
「いや、それが一概にも言えない。この前の山根のケースもある」
あいつは俺達より手前の町にいたはずだ。
だが、俺達よりマナは多かったと思う。
「ふむ……とりあえず、クラスメイトとやらは危ないって思っておくべきだな。こいつらが言うんだから間違いねーよ」
「そうですか……私は戦えないのでそこだけは不安なんですよね。しゅん……」
リンダ姉さん……なんて可愛いんだ。
俺が守るよ!
「チャームをかけんな」
「てへっ」
やめてほしい。
何が怖いって素でも可愛いし、エロいこと。
「姉さんは絶対に死なないっしょ」
「無人島で殺人事件が起きても最後まで生き残りそう」
っぽいな。
「冗談はさておき、広島のこと、リクさんのこと、山根とかいう槍男のことを考えても、そろそろあなた方のクラスメイトも動き出しています。SNSのチェックは忘れないでください」
「かき乱して、最後には綺麗に締めるのね……」
アヤカが呆れた。
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