第040話 朗報
「色々噂が飛び交っているわね。誘拐、集団でどこかに行った……」
「嫌なのもあるわー。海外に売られただの、どこかの組織に消されただの……ひっど」
「まあ、正解もある。異世界に転移した説、戦国時代にタイムスリップ説」
なんで戦国時代限定なのかは置いておくとして、確かに異世界転移は正解だ。
「俺も嫌なのを見つけたな。犯人は先生ってやつ」
「あるわね……」
「先生、家族もおられたのに……」
「しかも、真っ先に死んじゃったのにね……」
さすがに暗くなる。
誹謗中傷が多いし、あることないこと書かれているのだ。
ただ、情報はそこまでだ。
何故ならそれ以降は悪魔の話になっている。
「家族のことは書いてないな。家にマスコミや野次馬が集まりそうなんだけど」
「本来なら当分は大騒ぎだったんだろうけど、2ヶ月後に悪魔襲来だからね。私達が転移したのは4月28日。最初に悪魔が東京に現れたのが6月18日」
それどころではなくなかったか。
「ひっどいのは【陽が丘高校生徒を生贄に悪魔を召喚!】ってやつだけどね」
「それが最後かな? もうその後は誰も私達のことを言ってない」
こんなところか……
「どう思った?」
顔を上げ、3人に聞く。
「嫌な気分になった」
「申し訳ない気分になった」
「そんな感じ」
俺もだ。
「前に自衛隊に身分証として学生証を出してしまったが、【陽が丘高校生徒一斉行方不明事件】の被害者であることは今後、伏せた方が良いな」
「そうね。学生証を見られたとしてもただの卒業生なだけで関係ないってことで」
「そうだな」
アヤカと頷き合う。
「ねえねえ、家族のSNSとかあった?」
北浦さんが聞いてくる。
「それは真っ先に調べたけど、アカウントがなかった。親はやっていなかったが、従妹はやってたんだが……」
「ウチもなんだよね。従兄が持ってたんだけど……」
消したか?
「ウチは姉貴が持ってたけど、アカウントがなかったね。それと家族に連絡しても【現在使われておりません】ってなるね。メールもダメ」
「私も」
うーん……確かにそう言ってたな。
俺もだったし、北浦さんもらしい。
「まあ、仕方がないか」
この問題は保留だ。
俺達が得意なやつ。
「うん。希望があるとしたら四国の祖父母が知っているかもしれないってこと。それで東京のウチの家族と連絡が取れたらあなた達の家族に知らせることもできるかもしれない」
なるほど。
「やっぱりまずは四国だね」
「うん。そのためには山口、島根、鳥取、岡山のルート」
そうだな。
そのルートしかない。
「じゃあ、明日から頑張ろうぜ」
「ええ」
「じゃあ、青春タイムでもする?」
高宮さんがトランプを取り出した。
「ショッピングモールで買ったやつだね。寝るには時間が早いし、暇だからやろっか」
女子部屋でトランプか……ミナト、リク、すまんな。
俺は先にリア充の仲間入りだ。
「やるか……ん?」
俺のスマホが鳴ったので見てみる。
画面にはエルヴィスの名前が表示されていた。
「エルヴィス?」
アヤカが聞いてくる。
「ああ。あいつもトランプをしたいのかな?」
冗談を言いつつ、通話ボタンを押した。
『ユウか? お前、今、どこにいるんだよ? 部屋に行ってもいねーぞ。まさかサキュバスのところか?』
失礼な。
「高宮さんと北浦さんの部屋だよ。10年前の転移事件を調べていたんだ」
『あー、なるほどな。ちょっと話があるし、ちょうどいいわ。2人の部屋はどこだったっけ?』
「307号室」
『了解。すぐ行く』
エルヴィスがそう言うと、電話が切れた。
「何の用だろ?」
「さあ?」
首を傾げていると、ノックの音が聞こえたので立ち上がり、扉に向かう。
そして、扉を開けると、エルヴィスが立っていた。
「よう。ちょっといいか?」
「ああ。何かあったのか?」
そう聞きながら部屋に招き入れた。
「エルヴィス、事件?」
ベッドに戻ると、アヤカがエルヴィスに聞く。
「事件ではない。ちょっとこれを見てほしい。お前らの仲間の松永リクってこいつか?」
エルヴィスがスマホを見せてきた。
そこにはどこかの海岸の夕日の写真が写っているのだが、こちらに背を向け、海を見ている杖を持っている男がいた。
しかも、服装が青っぽいローブだ。
「リクだ!」
「ええ。この服装は松永君よ」
「後ろ姿だけど、髪形も松永君っぽいね」
「絶対にリクだよ」
間違いないと思う。
「そうか。間違いないようだな」
「エルヴィス、これは?」
「コスプレで検索したら出てきた。ちょっと笑われてるな」
見てみると、【かっこつけコスプレ野郎発見(笑)】と書いてある。
「ここは?」
「萩だ」
萩?
「どこだっけ?」
秀才のアヤカを見る。
「山口県萩市。県内ではかなり離れていて、島根寄りだけど、山口県よ」
近いな。
それに島根に向かう俺達には道中だ。
「行こう」
熊本の情報よりもずっと確信を持てる。
「ああ。ただ、情報はこれだけだ。もう1人のミナトの情報はない」
一緒じゃないのか、たまたま別行動なのか……
「何にせよ、リクはさっさと合流しないとマズいでしょ。ウチらの中では一番戦闘が苦手だし」
北浦さんの言う通りであり、リクはヒーラーだった。
性格的にも戦いを好んでいない。
「落ち着け。とにかく、明日だ。それと悪いが、この先は俺達も詳しくない。焦らずに行くぞ」
それは……いや、そうするべきだ。
「わかった」
「ああ。じゃあ、明日な。お前らも早く寝ろ」
エルヴィスはそう言うと、部屋から出ていった。
「良い情報もあったわね」
「ああ。とりあえず、リクは無事だ。まずはそれを喜ぼう」
「そだね。それに萩なら近いよ」
「うん。どうせ行く町だし」
よし。
「ほっとしたし、トランプをしようか」
「え? やるの?」
「なしっち、やりたかったんだね……」
「よし、負けたらカップ麺とチョコを出しな」
リク、萩で会えたら自慢してやるからな。
ここまでが第1章となります。
これまでのところで『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると今後の執筆の励みになります。
また、これまでの皆様の応援は大変励みになっており、毎日更新することができております。
明日からも第2章を投稿していきますので、今後もよろしくお願いいたします。




