第038話 焼きそばパンはセーフ
その後も話をしながら競馬をしていき、昼になったので食堂で昼食を食べた。
そして、午後からは買い物に行くことになり、リンダ姉さんの車に乗り込む。
「広いな」
「そうね」
運転席がリンダ姉さんであり、助手席がエルヴィス。
その後ろが俺とアヤカで一番後ろが高宮さんと北浦さんの並びだ。
「では、ショッピングモールに向かいますね」
車が動き出すと、駐車場を出て、小倉の町中を進んでいった。
そして、ショッピングモールにやってくると、買い物を始める。
とはいえ、俺とアヤカ、エルヴィスはすでに買い物を終えているので高宮さんと北浦さんの買い物に付き合う形だ。
「キャッキャしてんな」
エルヴィスが暇そうにつぶやく。
俺達はベンチに腰かけ、楽しそうな3人を見ているのだ。
「お前がいてくれて良かったよ。疎外感がなくていい」
もし、俺だけだったら空気になることに必死だったと思う。
「そういう意味でも早く男子2人と合流できると良いな。そういやリンダは?」
「リンダ姉さんは食材の買い物。なんか夕食をご馳走してくれるらしい」
さっきそう言って、1階の食材コーナーに向かった。
「そうかい。賑やかになったもんだ。ちょっと寂しいか?」
んー?
「何が?」
「昨日までは俺っちは置いておいて、アヤカと2人きりだっただろ」
あー、そういうことね。
「そうでもない。前に戻っただけだ。ミナトとリクはいないが、5年間、ずっとこんな感じだった」
仲間だが、やはり行動は男女で分かれることが多かった。
皆、よくウチの店に来ていたが、出かける時なんかはミナトとリクと出かけることが大半だった。
「ふーん……そんなもんか」
「まあ、アヤカが1人で来ることも多かったがな」
多分、高宮さんが促しているんだと思う。
俺達はその後も買い物を眺め続け、夕方にはショッピングモールを出て、リンダ姉さんの家に行く。
まあ、家と言ってもワンルームのアパートだった。
「ここか? 家はいくらでもあるだろ」
車から降りると、エルヴィスがアパートを見上げながら首を傾げた。
「広いところが好きじゃないんですよ。お粗末なところですが、入ってください」
俺達はリンダ姉さんに促され、部屋の中に入る。
部屋は8畳くらいのワンルームであり、女性の部屋らしく可愛らしい内装だった。
何気に女性の部屋に入ったのは初めてだし、なんかドキドキしちゃう。
「結構、綺麗にしてるのね」
「綺麗好きなもので。では、少し休んでいてください。夕食の準備をします」
リンダ姉さんはキッチンに行き、エプロンを着ける。
その姿も可愛らしく、なんかドキドキする。
「リンダ姉さん、チャームをやめて」
ホント、やめて。
こっちのバリアを破ってこないで。
「サキュバスには息をするようなものなんですけどー」
「息を止めてくれ」
「怖い、怖い」
リンダ姉さんがてへぺろと可愛らしい仕草をする。
「大変だね」
「さすがはサキュバス教なんてできるはずだよ」
「SNSでもチャームしてるんじゃない? 電話越しでもできるみたいだし」
苦労がわからない女子3人は呆れた感じでローテーブルについた。
「そういや、今日はどこに泊まるんだ?」
エルヴィスが聞く。
「ウチらが泊まっているホテルで良いんじゃない?」
「ここから近いよ」
ホテルか。
「喫煙か?」
「喫煙の部屋もあったかな?」
「よし、吸えそうだ」
熊本は禁煙だったからな。
「ウチは禁煙ですからねー。あと車も」
リンダ姉さんが忠告する。
「わかってるよ」
エルヴィスが渋々頷いたところでスマホを取りだし、料理を待っている間にSNSチェックを始めた。
「また広島であったみたいね」
俺もそれを見つけ、内容を確認していた。
今度も数十人の悪魔がやられたらしい。
「これ、広島はすごいことになっているんじゃないか?」
「ええ。避ける方向で正解ね。しかし、よくやるわ……」
ホントにな。
「犯人をクラスメイトと決めつけて言うけど、異世界の魔物と悪魔の区別がついてないのかな?」
「しゃべってるってだけで普通は躊躇うと思うんだけど」
高宮さんと北浦さんが顔を見合わせる。
「その辺が曖昧なんじゃないの?」
「そうかもな」
魔物は魔物って考えているかもしれない。
もしくは、山根みたいに経験値としか見てないか。
「いや、お前らは俺っちやリンダという知り合いがいるからそう思うだけで人間からしたら悪魔は侵略者であり、敵だからな。この犯人がどういう奴かは知らないが、本人は正義のつもりかもしれん」
あー……確かにありうるか。
「人間側の正義からしたら正しいのはこっちか……」
でもなー……
「どうかしら?」
「悪魔だろうが、人間だろうが、普通に暮らしている人達は斬れないって」
「うん、無理……」
だよな。
「あなた達は優しいですね。すばらしいことだと思います。でもまあ、だからこそ、ドロップアウトなんでしょうね」
リンダ姉さんが振り向いて、笑いながら言ってくる。
「まあ、そうだな」
仲間が1人死んだだけで動けなくなった。
多分、それでは勇者になれないんだと思う。
でも、それを気にしなくなるような人間になるくらいなら勇者になりたいとは思わない。
「うん……でもまあ、それが私達だし」
「そだね」
アヤカと高宮さんが頷き合う。
「やっぱりこういうトラブル臭がするのはスルーが一番。私らは私らの道を行くべき。それは異世界でも、こっちに帰っても変わらないし、変わったらダメなこと」
北浦さんが良いことを言った。
「俺もそう思う。やっぱり会社だって」
「社長、給料は高めでお願い」
儲かったらな。
「はいはーい。できましたよー」
リンダ姉さんが料理を持ってきてくれる。
大盛りの焼きそばだった。
「久しぶりに見たな……」
「うん……やっぱり10年振り」
「昔はあんま食べなかったけど、今はソース味を食べたいと思ってしまう……」
「ウチは貧乏だったからよく出てた。あ、泣きそう」
北浦さんがティッシュを取り、目頭を押さえる。
「泣くなら食べてからにしてくださいよ」
「そうする……」
俺達は焼きそばを食べていく。
高宮さんが言っていた通り、ソース味が異様に美味いし、食欲をそそる。
北浦さんはマジで泣いているが、俺も泣きそうになるくらいだ。
「こっちの世界の飯ってやっぱり美味かったんだな」
「向こうも悪くないけど、やっぱり故郷の料理よね」
「ジャンクな感じのものとか、甘味ってマジでなかったしね」
「焼きそばでご飯を食べていた小学生の時が懐かしい……」
北浦さん…………それはどうだろう?
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