第034話 突破
「これがフレア。この辺一帯を焼き尽くす上位魔法だ。トンネルの中に逃げようと焼き尽くす。これを使った方が良いのか? 俺達は別にお前達を相手にしたわけじゃないし、ここを通って小倉に行くだけだ。二度と会うこともない」
警告だ。
「チッ!」
「ハッタリだ!」
ハッタリ?
「マナも感じ取れないか?」
できるだろ。
「ぐっ!」
「お、おい、どうする? シャレにならねーぞ」
「黙ってろ!」
オーガ共に動揺が見える。
後ろのオーガ共もジリジリと後退しているのがわかる。
「何だ? 何だ? まだ4時なのにもう朝かー?」
後ろのオーガの中からひときわデカいオーガが出てきた。
「お頭!」
ここのボスか……
「何だ、こいつら? なんで太陽を出してんだ?」
「お頭、こいつらが通せって言ってます!」
「ははーん。そういうわけか。兄ちゃん、ここは俺達の縄張りだぜ。ただで通ろうなんてゆるさねーよ」
「マナを渡すと言っている」
エルヴィスが……
「10万マナを寄こしな」
10万?
「おい、どれくらいだ?」
エルヴィスに確認する。
「あの旅館の料金の倍くらいだ」
あそこ5万マナだったのか。
まあ、取られたのかわからないくらいだったからたいしたことないな。
「わかった。10万マナを支払おう」
「1人当たりだぜ?」
つまり3人で30万マナか。
「問題ない。無駄な殺生はしたくないし、安いものだ」
「チッ! 通れ。ただし、二度と面を見せるな」
オーガのお頭が道を開ける。
すると、他のオーガも左右に分かれた。
「じゃあ、マナを支払おう」
マナを渡すためにお頭のもとに近づく。
「いらねーよ。俺に近づくんじゃねー」
お頭が止めてきたので足を止めた。
「お、お頭?」
「うるせー。こんなバケモノ共を相手にできるか。さっさと他所の地へ追い出しちまえ。てめーもその火をさっさと消せ。そんでもって、さっさと消えろ」
お頭が睨んできたのでエルヴィスを見ると、頷いたので火を消す。
そして、車まで戻ると、乗り込んだ。
「このまま行っても大丈夫か?」
罠?
後ろから攻撃してくるとかありそう。
「向こうはお前らのマナの量を見て、ビビったんだ。立場があるから強気な言動だが、内心はビビり散らかしてるぜ」
そうかねー?
「何にせよ、行っていいって言ってるんだから行きましょう」
「ああ。スピードは緩めるぜ」
エルヴィスはエンジンを点け、ゆっくりと進んだ。
すると、オーガ共のところまで行ったのだが、左右からすげー睨まれている。
「攻撃してきそうだな……」
「ねーよ。虚勢だ。こいつらみたいな奴はこうやって自己を肯定するんだよ。車を止めてみようか? あいつら、逃げ出すぜ?」
エルヴィスが笑う。
「いや、さすがにやめよーぜ」
「そうよ。いらないトラブルは避けるべき。さっさと小倉に向かいましょう」
「まあ、そうだな。行くぜ」
オーガの群れを抜け出すと、トンネルに入る。
トンネルの中はテントがあったりと生活感のある集落になっていたが、車が通れるスペースは十分にあったのでゆっくりと進んでいった。
そして、トンネルを抜けると、一気にスピードを出す。
「スムーズに行けたわね」
「話せばわかる奴らだったな」
「あれがスムーズとか、話せばわかるって思うのは相当、毒されてるぜ?」
それは仕方がない。
熊本ではそれ以上のことがあったから。
「何にせよ、無事に大分を出られそうね。小倉まではあと1時間くらい」
1時間か……
「小倉に着くのが5時くらいになりそうだな」
さすがに早い。
「ちょっと電話してみるわ」
アヤカがスマホを操作すると、呼び出し音が聞こえてくる。
すると、ワンコールで呼び出し音がやんだ。
『アヤカー? そっちはどう?』
高宮さんだ。
「順調よ。ちょっと通せんぼを食らったけど、あと1時間くらいでそっちに着くと思う」
『そっかー。ごめーん。姉さんと全然、連絡がつかないんだよ。多分、寝てる』
まあ、この時間なら仕方がないわな。
「大丈夫。私達はこのまま競馬場に向かうけど、そっちはそっちのペースで来て。私達も寝るから」
かなり眠いんだよな。
『了解。ちょっと待っててね』
『私らも寝よっか。姉さん、朝まで起きてこないよ』
『だよね。じゃあ、競馬場で』
「ええ。起こして悪かったわね」
アヤカがそう言って、電話を切った。
「このまま競馬場に行けばいいんだな?」
エルヴィスがアヤカに聞く。
「ええ。お願い」
「了解。お前達は寝てていいぜ」
「さすがに運転を頼んでいるのに悪いわよ」
それはそう。
エルヴィスも寝てないわけだし、気が引ける。
「気にすんな。いいから寝ろ。寝られる奴は寝ておくもんだ」
まあ、全員寝不足だと何かあった時に困るからな。
「そう? じゃあ、ちょっと仮眠をもらうわ」
「悪いな」
俺とアヤカはそのままの体勢で目を閉じる。
そして、車の振動に揺られながら意識が遠くなっていった。
ふと目が覚めると、柔らかい感触と共に頭に心地良い感覚があった。
「んー……」
「おはよう」
アヤカの声が聞こえたので上を見ると、ちょっと大きい胸と可愛らしい顔が見えた。
「なんで頭を撫でてるんだ?」
なんかアヤカに頭を撫でられている。
「逆に聞くけど、なんで私は膝枕をしてあげてんの?」
あ、この柔らかい感触は……
「悪い……え? なんで?」
起き上がると、首を傾げる。
「さあ? まあ、倒れたんじゃない?」
座ったまま寝てたからかな?
でも、その場合って肩で寝ない?
なんで膝枕?
俺の本能か?
「まったく記憶にない……俺、変なこと言ってなかった?」
寝言でマズいことを言ってないだろうか?
高宮さんにしか言ってない秘密のこと。
「知らない。私もさっき起きたところだし」
そうか……
「あ、車が止まっているな」
ここはどこだ?
「多分、競馬場の駐車場じゃない? エルヴィスが外でタバコを吸ってるし」
アヤカにそう言われて、窓の外を見ると、すでに朝日が昇り始めていた。
そして、辺りは広い駐車場であり、チラホラと車が止まっている。
そんな中、タバコを吸い、紫煙を上げているワイルドなゴブリンがいた。
「出るか」
「そうね。ちょっと寝足りないわ」
俺達はドアを開け、外に出る。
すると、少しひんやりとした空気が気持ち良かった。
「ふわーあ。確かに寝不足だ」
「ユウ君は気持ち良さそうに寝てたけどね。思わず、頭を撫でたわよ」
そりゃ気持ちよく寝られるだろうな。
「キャンピングカーとかないかね?」
「それ、良いわね」
どっかにないかねー?
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