第033話 ふっふっふ
「チッ、混んでるな……」
街中に出たのだが、さっきからあまり進めていない。
「エルヴィス、そこを左に曲がって。裏道で行きましょう」
アヤカがスマホを見ながら前方の交差点を指差す。
「わかった。案内を頼む」
エルヴィスが左に曲がり、空いている道を進んだ。
「そこを右」
「ああ」
アヤカの案内で進んでいくと、高速の入口の看板が見えた。
「料金とかは?」
高速道路って料金がかかるよね?
「んなもんねーよ」
それもそうか。
車が坂を登っていくと、料金所が見えてきた。
ただ、ゲートはない。
というか、よく見たら壊れていた。
そのまま進んでいき、料金所を抜けると、まったく車のいない道路を進んでいく。
「なあ、オーガはずっと高速を根城にしてるのか? どういう生活だ?」
「そこに住んでいるってだけで普通に買い物とかはするぞ。町にもいるし、旅館にも来たことがある。ただ、評判は悪いな」
半グレとかやーさん的な感じか?
「高速っていっても広いけど、どこにいるわけ? 今のところはただの道路だけど……」
「トンネルだ」
あ、なるほど。
「トンネルねー……」
アヤカが地図アプリで確認し始める。
「エルヴィス、オーガのことを教えてくれ。当然、強いんだよな?」
異世界にもオーガはいたし、強敵と言われていた。
しかし、滅多に出る魔物ではないし、俺は遭遇したことがないのだ。
「強いぜ。そこら辺の魔物とは一線を画している。オークでも相手にならない」
「オークと言われてもな……」
オークは巨体だし、強い。
でも、それは一般人からしたらだ。
冒険者なら十分に相手になるし、トップ層からしたら雑魚だ。
当然、ジョブやスキルの恩恵がある俺達もそう。
「まあ、その程度ってことだな。確かに強いが、お前達はそれの遥か上を行く。まず大丈夫だと思う。だからこの道を選んだんだ。だが、油断はするなよ。向こうは群れだ」
確かに油断は禁物だな。
それはよくわかっている。
「アヤカ」
「うん。大丈夫。やれる」
アヤカが深く頷く。
「トンネルは?」
「ここから10キロ先にある」
「数分だな。ちょっと待ってろ」
車は高速なため、どんどんと進んでいく。
すると、前方にライトに照らされたトンネルが見えてきた。
ただ、トンネルの前にはトラックやプレハブのような小屋がある。
「あそこか」
「止めるぜ」
エルヴィスがトンネルから50メートルくらい手前で車を止めた。
すると、小屋やトラック、さらにはトンネルの中から続々と巨大な鬼が出てくる。
「あれがオーガね。確かに強そう」
確かに強そうだ。
でも、ここから見る限りはそこまでの魔力を感じない。
「エルヴィス、オーガもしゃべるんだよな?」
「もちろんだ。まあ、まずは対話だな。行くぞ」
エルヴィスが車を降りたので俺達も降りる。
そして、歩いてトンネルに向かうと、向こうも3人のオーガが出てきた。
3人共、鉄パイプ、バット、それにどこから持ってきたのかは知らないが、一時停止の道路標識なんかを持っている。
「何だ、てめーらは?」
「今、何時だと思ってんだ?」
「舐めてんのか?」
オーガが凄んでくる。
ちょっと怖い。
「わりーな。熊本の人間共が攻めてきたことは知ってるか?」
エルヴィスが前に出て、応対する。
「なんか聞いたな。どうせいつもの嫌がらせだろ。ウェアウルフ共の餌食だ」
ウェアウルフは狼男だ。
俊敏で結構強い。
「そうかもな。ただ、面倒は嫌だし、俺達は小倉に行きてーんだ。ちょっと通してくれ」
「ハァ? ふざけるんじゃねー!」
「殺すぞ!」
「ゴブリン風情が舐めた口を利くな」
うーん、ガラが悪い。
斜め下45度を見たい感じ。
「悪いとは思ってんだ。通行料として、マナも払う」
「ははは! 笑わせるな! 全部奪っちまえばいいことだろ。交渉はもっと上手くやれ」
うーん、ダメかー。
「いいから通しなさいよ。こっちは急いでいるのよ」
アヤカがまったく臆せずに言う。
「何だ、こいつ? 人間か? なんで人間がゴブリンとつるんでんだ?」
「人間のマナじゃねーよ。サキュバスか何かだろ」
「じゃあ、こっちの兄ちゃんはインキュバスか? ウケるな!」
インキュバスじゃなくて、陰キャバス……
「通すの? 通さないの?」
アヤカがちょっとイラっとした口調で聞く。
「チッ! やっちまうか?」
「面倒だし、そうしてしまえ」
「こっちは眠いんだよ。おら、死ね!」
1人のオーガが木製バットを振り回してきた。
俺とエルヴィスはバックステップで躱したのだが、アヤカは避けない。
「あん? は?」
オーガが呆けた表情になる。
何故ならアヤカが振り回した木製バットを掴んだから。
「邪魔」
アヤカはそのまま木製バットを握りつぶす。
すごい力だが、これがジョブとスキル、そして、これまで獲得してきたマナの恩恵だ。
「何だ、こいつ!?」
「チッ! 死ねや!」
「クソがっ!」
残り2人のオーガも鉄パイプと道路標識でアヤカを攻撃するが、簡単に躱す。
それどころかカウンターで飛び膝蹴りをオーガの顔面に放った。
「ぐっ……! クソッ!」
オーガは数歩後退したが、すぐに体勢を整える。
さすがの頑丈さである。
「お前ら、もうやめとけ。こいつらはバケモンだぞ」
エルヴィスが警告する。
「チッ! 何だよ!」
「おめーら、やっちまうぞ!」
オーガが後ろに溜まっている連中に声をかけると、ぞろぞろとこちらに向かってくる。
「アヤカ」
「うん」
アヤカが頷き、後ろに下がっていった。
「あん? 兄ちゃんがやるのか?」
「舐めた野郎だぜ」
最初はちょっと怖いと思ったが、もう怖くない。
「下がった方が良いぞ」
「ハァ? ……え?」
「おいおい……」
「な、何だ、あれ?」
3人のオーガが驚愕すると、後ろにいたオーガ共も足を止めた。
何故なら、俺の頭上には何十メートルもの巨大な火の玉が出てきているから。
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