第031話 ゆっくりやりな
明日の相談を終え、ごろごろと身体を休めていると、高宮さんから電話がかかってきたので出る。
『もしもしー? なしっち、元気ー?』
「元気だよ。みやっちは?」
なお、なしっちと呼ばれたのも、みやっちと呼んだのも今日が初めて。
『みやっちだとアヤカみたいっしょ』
宮前アヤカだからな。
「宮宮同盟じゃん」
『おっ、ホントじゃん! アヤカー、同盟ー』
「気付いてしまったわね……拒否」
アヤカは嫌なようだ。
『ひどす』
『大丈夫。アヤカとも高高同盟を組めるよ』
そういう日が来るかなー?
「マユミ、そんなことよりもどうしたの? 何かあった?」
アヤカは完全スルーだ。
『いや、こっちは平和。熱狂してるけど、平和』
競馬ね。
「じゃあ、何?」
『いや、そっちはどうかなって。明日、来るんだよね? 大丈夫?』
心配で連絡してくれたようだ。
「ええ。明日の8時にここを出て、10時くらいには競馬場に着くと思う」
『了解。こっちもちょっと話し合って、明日はこっちに泊まって、明後日に下関に渡ろうってなった』
明後日ね。
まあ、それでいいだろ。
「大丈夫なのよね?」
『姉さん、姉さん、大丈夫?』
『ちょっと黙ってください。うーん……4番が本命だけど、最近なー……』
リンダ姉さんは予想で忙しいらしい。
『大丈夫だってー』
何が?
「そう……まあいいわ。大村君と松永君の情報は?」
『そっちはなし。ただね、広島の方で結構な虐殺があったらしいよ』
虐殺?
「何それ?」
『SNSであった。広島の町で一夜にして、100人以上の悪魔が殺されたんだって。犯人は不明』
それを聞いたアヤカとエルヴィスがスマホを手に取り、操作しだす。
「確かにあるわね……」
「バズってるな……」
なら本当っぽいな。
「クラスメイトかね?」
『ありえるっしょ。そんなことを誰ができるんだって話だし、それとこう言ったらなんだけど、私達から見たら悪魔は魔物そのもの。実際に異世界で倒してきた魔物と姿形が一緒なんだもん』
だよな……
人間を殺すより忌避感はないだろう。
そして、マナという経験値のような概念……
『少なくとも、私はクラスメイトの仕業って考えて良いと思う。山根だっけ? それと一緒』
北浦さんの言うとおりだな。
「そう思おう。しかし、そうなると、ちょっと広島には行きにくいな」
『でも、東京を目指すならそっちでしょ。島根に回る?』
うーん……四国のこともあるしな。
「その辺は合流した後に話し合おう。実は家族のことがある。アヤカの祖父母が四国にいるんだよ」
『あーね。確かに親だけじゃないしね』
『あ、従兄が京都にいる』
北浦さんの親戚も西の方にいるのか。
「その辺を話し合おう。俺達、お互いの家族のことを知らない」
『話さなかったもんね……わかった。合流したら話し合おう。私、実は中学の時に吹奏楽部だった』
そういうことも話さなかったな。
「俺、帰宅部」
『っぽいね』
『ウケる。私もだけど』
っぽいな。
「私、バスケ部」
アヤカ、バスケ部だったのか。
知らなかったな。
「これからは話していこう。高宮さん、北浦さん、気を付けて」
『わかってる』
『大丈夫。私の暗殺術が火を噴くぜ』
北浦さんはアサシンという上位ジョブだ。
なお、暗殺をしたことはない。
「対峙してわかったけど、話が通じない奴は本当に通じない」
『私らも一歩間違えてたらそうなったかもね』
『うん。気持ちがわからないわけでもないんだ。何度も現実逃避したし、何度も夢だと思った』
俺もそうだったな。
「気を付けよう。じゃあ、明日な。おみやげにポテチとチョコがあるから」
「カップ麺で泣くかと思ったわ」
ホントにね。
『懐かしい……』
『チョコ食べたい』
「持っていくから。じゃあ、明日」
『ごゆっくりー』
何がゆっくりなのかはわからないが、電話を切る。
「あっちは問題なさそうね」
「そうだな。よし、風呂にでも入ってこようかな」
「賛成」
俺達は最上階の温泉に行き、ゆっくりと湯に浸かる。
夕方になると、海鮮の鍋を満喫した。
そして、夕食を終えると、エルヴィスが自分の部屋に戻っていったのでアヤカと2人きりになる。
「ユウ君、1年の時はどんな感じだったの?」
アヤカがこれまで聞いてこなかったことを聞いてくる。
「うーん……普通? ミナトとリク、それにショウタと同じクラスだったんだけど、いつもつるんでたな。4人共、部活に入ってなかったし、アニメの話や動画やテレビの話とかそういう他愛のない話ばかりをしている1年だった」
実に普通で目立たない感じだったと思う。
「やっぱり仲が良かったのね」
そうだな。
「毎日、つまんねーなーとか、楽しいことないなーとか言い合っていたが、あれが楽しかったんだろうな。まあ、異世界でも楽しいことはあったが」
「まあね。私達も似たようなものだったかな。普通の高校生だった。あれから10年ね……」
同じようなことを転移前にも話してたな。
「そうだな。実はさ、家族に会うのがちょっと怖い」
「皆そうでしょ。10年は長すぎよ。私の可愛い弟はもう20歳……ねえ、ユウ君は兄弟姉妹がいる?」
「いや、1人だ。あー、でも、千葉に住んでいた中学生の従妹はもう20歳を超えているな」
年末や盆くらいにしか会わなかったが、10年ぶりに会って、誰かわかるんだろうか?
「会えると良いね」
「ああ」
脳裏には生きているのかっていうのがずっとあるからな。
口には出さないが、皆、そうだろう。
「アヤカさ、東京に着いたら…………どうする?」
みやっち、ごめーん。
言えなーい。
「ま、家族よね。あとはその時に考えましょう。会社を興すのでもいいわよ」
「そうだな。話し合おう。さて、早めに寝ておくか」
「ええ。おやすみ」
まだ早い時間だったが、就寝することにした。
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