第030話 じとー
ショッピングモールにやってきたのだが、ここも客や店員が悪魔なだけでそれ以外は普通だった。
ただ、売っているものはそこまでであり、やはり物資という面では人間の町の方が上のようだ。
俺達はまず、服屋に行き、服を見ていく。
とはいえ、俺はすぐに終えたのでアヤカに付き合う感じだ。
「ユウ君、こっちとこっち、どっちがいいかな?」
アヤカが聞いてくる。
噂で聞いたことがあるショッピングデートみたいだ。
「うーん……こっち」
こっちの方が可愛い系のアヤカに似合うと思う。
「そう? じゃあ、こっちにしようかなー」
なんだろう……幸せ。
「どっちも買えばいいだろ。金はあるんだし」
「ま、それもそうね」
「悩んだら買え。空間魔法があるわけだし、頻繁に来られるかわからないからな」
金もあるしな。
「そうねー……夏物も買っておいた方が良いかも」
あ、それはそうだな。
もう5月になっているし、これから暑くなってくる。
「俺も夏用の服を買ってくる」
「私が選んであげよっかー?」
うん!
「頼む」
その後も服を見ていき、デートを満喫すると、布団なんかも買ったりし、旅の準備を終えた。
そして、ショッピングモールを出ると、市街地を抜け、俺達が転移してきたエルヴィスの家がある集落までやってきた。
「農家だろ? 作物はどうするんだ?」
リンゴとか栽培しているはずだ。
「その辺も知り合いに頼んでおいた。まあ、たいしたことはしてないから問題ねーよ。ちょっと待ってろ」
エルヴィスが車から降り、家に入っていったので俺とアヤカも車から降り、身体を伸ばす。
「良い天気だな」
晴れ晴れだ。
五月晴れってやつかね?
「そうね。それに自然豊かで良い町よ」
ホントにな。
正直、家族のことがなかったら高宮さんと北浦さん、それにミナトやリクを呼んで、この町に住むというのもありだと思う。
温泉もあるし。
「アヤカ、東京に行くって話だが、四国はいいのか?」
実はちょっとに気になっていた。
「そうね……ちょっと考えてはいた」
四国にはアヤカの祖父母が住んでいるのだ。
「俺は付き合うぞ。ちょっと遠回りになるだけで道中と言えば道中だ。逆に言うと、東京まで行くと、厳しくなる」
東京から四国は遠すぎるのだ。
飛行機があるかわからないし、悪魔と人間の町が混在しているこの状況では陸路でどれくらいの時間がかかるかわからない。
「うん……ちょっと考えてみる。今はマユミとヒナと合流するのが先」
そうか……
「なんとなくなんだけどさ、俺達ってあまりこっちの世界の話をしなかっただろ?」
「そうね。ちょっとしたタブーになってた」
異世界にいた時、こっちの世界の家族の話や昔話とかはしないようにしていた。
それは俺だけでなく、皆がそうだった。
理由はあのまま異世界から帰れないことも十分にあったから。
俺も含め、皆、その辺を考えたくなかったのだ。
「聞いても良いか?」
「うん。帰ってきたわけだし、今後のことを考えると、お互いに話すべきだと思う。あとから鹿児島や宮崎に親戚がいるって言われたら困るし」
ホントにそう。
「ウチは基本、関東だから問題ない」
「私は母方の祖父母が四国。あとは関東ね」
ふーむ……
「九州から四国に行けないのか? 地理的には隣じゃん」
旅館の最上階から見えた海の先のある陸が四国だ。
「橋とかないし、行くならフェリーじゃなかったかしら?」
船か……
この世界だと微妙だな……
俺達が話しながら待っていると、エルヴィスが出てきて、こちらに戻ってくる。
「早いな」
「たいしたものはないからな。俺っちも布団とか日用品くらいだ」
なるほどな。
「エルヴィス、こっちから四国には行けない?」
アヤカがエルヴィスに聞く。
「それは無理だ。四国は愛媛と高知が人間の町になる。向こうも警戒しているからまず船では行けない。行くなら岡山から四国に渡り、そこから陸路だな」
やはり船では厳しいか。
まあ、悪魔側から船が来たら攻撃されてもおかしくない。
「香川と徳島が悪魔の勢力?」
「ああ。そうなるな。四国に行くのか?」
「祖父母が高知に住んでいるのよ」
高知か。
カツオだな。
「なるほどな……やっぱり岡山から香川に入り、そこから陸路になると思う」
「広島は?」
広島からも四国に行ける。
「広島が悪魔の町なんだ。広島、愛媛を繋ぐ橋は使えねーよ」
それはそうだろうな。
「わかった。ちょっと考えてみる」
「まあ、その辺はマユミとヒナと合流してから話し合え。話し合いも大事だ」
「ええ。わかってる」
当然だ。
「じゃあ、旅館に帰るぞ」
俺達は車に乗り込むと、来た道を引き返す。
その間、アヤカはずっと考えているようだったので特に声はかけなかった。
そして、旅館に戻ると、仲居メデューサから鍵を受け取り、エレベーターに乗り込む。
「休む前に明日のルートを説明するからお前らの部屋に行くぜ?」
「頼む。俺ら、全然わからん」
エレベーターを降りると、部屋に戻り、アヤカが淹れてくれたお茶で一息つく。
「アヤカが淹れてくれるお茶は美味しいな」
これからもずっと淹れてくれという言葉が浮かぶのに口には出せない情けない俺。
「どうも。あなたの店で淹れてくれたお茶も美味しかったわよ」
帰ってくる前もお茶会をしていた。
あれが異世界での最後のお茶になったな。
「はいはい。いいからお前ら、これを見ろ」
エルヴィスがタブレットを取り出して、テーブルに置く。
「タブレットまで持ってるのか」
「色々と便利だからな。わかっていると思うが、俺達がいるのがここだ」
エルヴィスが九州の右の方を指差す。
もちろん、大分県別府市だ。
「さすがにな。こうして見ると、小倉は近い」
ちょっと上だ。
「実際、近いぞ。車なら2時間程度だ。しかし、前にも言ったが、高速にはオーガの巣がある」
言ってたな。
「じゃあ、下道か」
「ああ。3時間だな」
エルヴィスが地図アプリを操作し、下道でのルートを出す。
「高速って便利なんだな」
かなりの時短だ。
「そういうもんだ。そして、便利なために狙われやすいんだ」
まあなー。
「3時間と2時間なら誤差よ。歩きよりはずっとマシ」
熊本から帰ってくるのは大変だったもんな。
「明日の8時くらいに出れば昼前には着く。それで競馬場だったな」
集合場所はそこになっている。
「了解。8時ね」
「ああ。そこから先はサキュバスに頼ることになる。どうやるかは知らんが」
そこは俺達が信頼する高宮さんと北浦さんが信用したリンダ姉さんを信じるしかないな。
サキュバスか……
うーん……サキュバスか……
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