第027話 “お前ら”にという言葉を違った意味に捉える2人
「死んでるよな?」
山根は首がないし、ピクリとも動いていない。
「そりゃな。そっちの2人も死んでる。面倒なことになるし、さっさとここを離れた方が良いぜ」
確かにそうだ。
自衛隊とかにこの場を見られるのはマズい。
「火を消す」
遠くからも見える火を消さないといけないので燃えている建物の2階に杖を向け、水魔法を放った。
かなりの水量を出したため、こちらにも水飛沫が飛んでくるが、火は消える。
「自衛隊が来るかしら?」
「わからん。エルヴィス、車があるが……」
こいつらが乗ってきた車がある。
死体を探れば鍵も出てくるだろう。
「やめとけ。この辺は阿蘇山付近だぞ。自衛隊に遭ったらマズい」
それもそうか。
車ではとっさに隠れられない。
それにこの車で自衛隊の車から逃げられるとは思えない。
「歩きか」
「それが確実だ。行くぞ」
結局、徹夜か。
小さくなったエルヴィスをポケットに入れると、この場を離れる。
そして、住宅街を出て、集落の中を歩いていくと、橋を渡り、また山道になったので暗い中を進んでいった。
「ユウ君! 隠れて!」
アヤカが叫んだので道を逸れて、草むらに身を隠す。
すると、3台の自衛隊の車が通りすぎていった。
「3台……」
「複数台は初めてよね?」
「ユウ、アヤカ、どこからか火事が見えたようだぞ。死体が見つかったら犯人の捜索が始まる。急げ」
エルヴィスがポケットから顔を出し、指示してきたので急いで道に戻り、走っていく。
そこまで強くない俺でもジョブの恩恵があるのでかなりのスピードを出せるし、伊達に異世界で10年も生きていないので体力はある。
とはいえ、さすがに1時間くらいで疲れたので休憩する。
「店を出したせいで体力が落ちたかな……」
店を出してから半年くらいだったが、その間はさすがにそれまで通りの冒険はできていなかった。
「いや、私も疲れてる。夜っていうことと山道ってことだと思う」
「坂の上り下りばっかりだしな……ポーションだ」
アヤカにポーションを渡し、自分も飲んだ。
「ありがと……隠れて!」
アヤカが声を出したのでさっきと同じように草むらに隠れる。
すると、今度は後ろから1台の自衛隊の車が通りすぎていった。
「またか」
「さっきすれ違った車かな?」
「かもな……しかし、そうなると、もう2台は?」
まだあの集落か?
「ユウ、アヤカ、ルートを変えろ。車が3台いたこと、そして、1台は戻ったこと……この先に基地があるかもしれんぞ」
基地……
「そうか。巡回中の車がいたとしても3台はない。そこから来たんだな」
「多分、そうよ。ルートを変えましょう。えーっと……」
俺達は地図アプリを見る。
「うーん……南は阿蘇山だし、やっぱり北からの迂回だな」
「ちょっと遠回りだけど、仕方がないわね」
「安心しろ。この辺りは境界線付近だ。自衛隊もそこまでは動けないし、すぐに悪魔の方の勢力圏に入れる」
確かにな。
「よし、行こう」
「ええ」
俺達は休憩を終え、さらに走っていく。
途中で道を変え、北の方に向かうと、ちょこちょこと休憩を挟みながら進んでいった。
そして、ついには0時を越える。
「道を変えてから来てないな?」
「ええ。なんとか撒いたっぽいわね。さすがにちょっと歩きましょう。あと1時間くらいで車まで着くわ」
走ったから想定よりもかなり早いようだ。
俺達がそのまま歩いていくと、すぐに自衛隊に遭遇した町にやってきた。
当然、真っ暗であり、よくわからなかったが、地図アプリでは間違いなく、ここだ。
「ちょっと人間の町に行こうと思ったらかなりの大冒険だったな」
「まったくね。人間の町の方がトラブルが多いって何?」
悪魔はエルヴィスやリンダ姉さんのように協力的だったし、無害だったからな。
「お前らに忠告だ。悪魔も人間も変わらないぞ。良い奴はいるし、悪い奴もいる。そんなもんは個人次第だ。俺っちだって、お前達が好戦的な人間だったら最初に会った時に殺している。まあ、死ぬのは俺っちっぽいがな」
エルヴィスが笑う。
「そうだな。人による。まさしくそうだ」
「異世界でも色んな人がいたし、クラスメイトもそうよね」
アヤカ達のように仲良くなれた人間もいれば、山根のような人間もいるからな。
俺達は集落を歩いていく。
途中、来た時にも見たスーパーなんかがあったので間違いなく、あの町だった。
そして、自衛隊を含め、何にも遭遇せずに町中を抜け、再び、山道に入る。
「もういいだろ。さすがに歩かせてくれ」
エルヴィスがポケットから出てきて、元の大きさに戻った。
「お疲れさん」
「お前らに子供ができたら虫とかを捕まえてもポケットに入れるなって教育しな。ストレスがやべー」
あー、やったことがあるかも……
「虫を捕まえないような教育をするわね」
男の子はどうだろ?
いや、今の時代は違うかもしれない。
しかし、子供か……いや、今はそこじゃない。
「エルヴィス、すごい魔力だな」
「ええ。私よりも上じゃないかしら?」
エルヴィスの魔力がすごいことになっている。
「お前らも上がってるぜ?」
んー?
「そうか?」
「あまりわからないわね」
「というか、マナって倒した奴のものじゃないのか?」
「普通はそうなんだが……でも、確かにお前らのマナも上がっているぜ? 底が見えないが、それは間違いない」
そうなのか……
「なんでかしら?」
うーん……いや、待てよ。
「俺達は異世界で魔物を倒し、強くなった。でも、実際に誰が多く倒したかって言えば、俺かミナトだ」
魔法使いの俺とミナトがアタッカーだったからな。
「あー……松永君はそんなに戦わないわね」
まったくと言っていいほどな。
リクはヒーラーであり、バフをくれる支援タイプなのだ。
直接戦わない。
「でも、リクも強くなっている」
「そうね。私達だって、主なアタッカーは私かマユミだもの」
俺達ってそんな大差ないよな?
もちろん、戦闘職かそうじゃないかっていう差はあるが。
「お前らだけのシステムのようだな」
エルヴィスが納得する。
「多分な。俺達は仲間で経験値……マナを分け合えるんだろう」
魔物を倒せば強くなり、さらにはスキルや魔法を覚える。
さらにはジョブが進化する。
本当にゲームなのだ。
「でも、俺っちは違うぜ? そもそも悪魔だ」
「お前も仲間認定なんじゃねーの?」
「良かったわね、エルヴィス」
アヤカが笑う。
「どうかねー? 俺っちがやったからお前らにも入るが、お前らがやっても俺っちに入るかはわからないぜ?」
その辺はわからん。
「まあ、良いじゃない。今はピンチを切り抜けたことよ」
それもそうだな。
「確かにそのことは後で考えればいいか。ただ、今後は気を付けろよ。人のことは言えないが、お前らのマナが上がったってことは狙われやすくなったってことだからな」
それもそう。
「こんな世界だからこそのマナの奪い合いか……」
ゲームで言えば、俺達の異世界冒険は次のステージに行ってしまったんだ。
「異世界でそれだけマナを集めていたってことだな。いや、お前らや山根だけじゃないな。他の連中もだろう。マジで気を付けろよ。もし、悪魔が知ったら好戦的な奴は狙ってくるかもしれんぞ。悪魔は等価交換を重視するが、力で奪ってもいいっていう考え方をしている奴もいるからな」
オーガがそうだっけ?
「これからは魔力を隠す方向でいった方が良いな」
勝ち負けではなく、トラブルは避けたい。
「そうね。マユミとヒナにも言っておくわ」
ミナトとリクにも言いたいが……
あいつら、結局、どこにいるんだろ?
山道を進んでいくと、前方に待避所が見えた。
もちろん、そこには白の箱バンがある。
「やっとだ……」
「着いたぁ……」
「お疲れさん。乗れ。さっさと別府に戻るぞ」
俺とアヤカが後部座席に乗り込み、エルヴィスが運転席に乗り込む。
そして、エンジンを点けると、切り返しをし、別府方向に走っていった。
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