第024話 またこんな感じか
翌日、早めに起きた俺達は前日に買った朝食を食べる。
「うどんも美味いな」
エルヴィスが嬉しそうにうどんをすすっている。
「すげー美味い。そういや、西と東で違うって聞いたことがあるな」
「10年前だからさすがに覚えていないわよ」
「まあな。でも、美味い」
俺達は朝食を食べ終えると、出発の準備をし、部屋を出る。
そして、1階のロビーに降り、チェックアウトすると、路面電車に乗り込んだ。
「私、路面電車に乗るのは初めてよ」
「俺も。道路に電車が走るってすごいな」
信号とかどうなってんだろ。
俺達は興味津々で外を眺めていたが、すぐに目的の駅に着いたので普通の電車に乗り換え、最初に乗った駅を目指す。
「あまり人が乗ってないわね」
時間が早いということもあり、数人しか乗っていない。
それもおじいちゃんやおばあちゃんであり、昨日の不良みたいな連中もいない。
「楽で良いな。満員だったら困るし、そういう意味でも早めに出て、正解だな」
「でしょ? まあ、問題は降りた後だけどね」
1時間も経たないうちに昨日の駅に到着したので電車を降り、自衛隊の人達に送ってもらった道を歩く。
「うーん……このまままっすぐ行くと、阿蘇山だな」
「どこかで迂回ね」
まずは車を置いた場所まで戻らないといけない。
「北に行くとして……徒歩で12時間だ」
「そのまままっすぐ行けたらでしょ? 実際は自衛隊とかを避けるわけだし、もっとかかるんじゃない?」
そうかも……
「どっかで泊まりかもな」
「仕方がないわよ。車を盗むわけにもいかないし」
さすがにな。
「まあ、ゆっくり行くか。昨日、焦らないって決めたわけだし」
「そうそう」
俺達はひたすら歩いていく。
市街地から離れているのでそんなに人もいないし、車もたまにしか通らない。
田舎だからかなと思っていたのだが、3時間が経ったくらいでまだ市街地なのに人の気配が急激に消える。
「車が通らないな」
「人もいないわね……もうこの辺には住んでないんじゃない? もう阿蘇山に近いし」
たまにでっかい山が見えるしな。
なんか煙が出てた。
噴火するのかな?
「自転車くらいなら拝借してもよくないか?」
「まあ、泥棒は泥棒だけど、仕方がない……ユウ君、隠れて!」
アヤカが叫んだので慌てて、近くにあったアパートの陰に隠れる。
すると、ブーンという音がし、車が通りすぎていった。
「自衛隊か……」
車は例の迷彩柄の軍用車だった。
「見回りをしているって言ってたしね。やっぱり自転車はなし。すぐに動けない」
とっさの反応はどうしても足の方が早いからな。
異世界で強くなった俺達は特にそうだ。
「わかった。それとなるべく田んぼのような開けたところを通るのは避けよう」
隠れる場所がない。
「了解。じゃあ、行きましょうか」
俺達は道に出ると、ひたすら歩いていく。
地図アプリで確認しながら平地なんかを避け、山道を進んでいく。
何度か自衛隊の車を見かけたが、アヤカがいち早く気付いたので上手く隠れて、見つかることはなかった。
「夏じゃなくて良かったな」
「ホントよね。しかし、日本は山が多いわ」
異世界は平地が多かったからな。
「今、15時か……あと8時間……車だったら1時間くらいだったのにな」
「まあねー……今日の宿はどこにする?」
「このまま順調に行けば、19時か20時くらいに集落に着く。そこかな……」
「了解。エルヴィスー、生きてる?」
アヤカが俺のポケットに声をかけた。
「生きてるよ」
それは良かった。
「ん? また来た。隠れて!」
アヤカが気付いたので山の中に入る。
すると、車が通りすぎて行ったのだが、自衛隊の車ではなく、俺達が乗ってきたような箱バンだった。
「自衛隊じゃないのか?」
「わかんない。自衛隊もずっとあの車ってわけでもないだろうし」
うーん……まあ、いいか。
「さっさと行こう」
「ええ」
俺達は道に戻ると、ひたすら歩いていく。
すると、18時を過ぎ、徐々に辺りが暗くなり始めた。
「うーん……やっぱり夜になるな」
「まあ、夜の方が進みやすいと言えば、そうなんだけどね」
車はライトが目立つが、逆に俺達は目立たないからな。
「徹夜はやめとけ。常に万全の状態にした方が良い。何があるかわからないぞ」
エルヴィスがポケットから顔を出した。
「それもそうね」
俺達はその後も歩き続けると、19時を回り、辺りはすっかり暗くなった。
街灯が所々に見えるのだが、灯りがついていないため、ほぼ月灯りだけだ。
「あとちょっとだ。あのトンネルの先が集落になる」
地図アプリではそうなっている。
「行きましょう」
トンネルは隠れるところがないので走って抜けると、山や川が多い集落に出た。
建物には灯りがついていないため、ここも誰も住んでいないと思われる。
「鍵かかってるよな?」
「まあねー……」
ちなみに、エルヴィスの家は鍵がかかっていなかった。
「お前ら、妙に気にするな……別にいいだろ」
エルヴィスはそうかもしれないが……いや、まあ、仕方がないと思おう。
俺達は住宅地に向かうと、なるべく道路から見えない位置の家に向かう。
そして、一応、呼び鈴を鳴らしてみた。
「反応がないわね」
「魔力は感じない」
「気配もないわ。間違いなく、誰もいないわね」
ドアノブを握り、引いてみるが、鍵がかかっているようで開かない。
「どうする?」
「まあ、窓とかを調べてみるか?」
空き巣の気分だ。
「俺っちがやるよ」
エルヴィスはポケットから出てくると、元の姿に戻った。
そして、指から30センチ程度の光る剣を出し、扉の隙間に差し込む。
すると、鍵を切ったようで扉がすんなり開いた。
「見事なもんだな」
「俺っちの家に鍵がかかっていない理由だ」
あー、あの家も元はと言えば、人間の家か。
当然、鍵はかかっていたはずだ。
この魔法で壊したから鍵がかからないのか。
「入りましょう。灯りはつく?」
「さすがにつかないんじゃないか?」
近くにあったスイッチを押してみたが、暗いままだ。
「やめとけ。自衛隊は夜も巡回しているだろうし、目立つぞ」
それもそうか。
「ま、寝るだけね。お風呂は別府に着いてからにしましょう」
温泉か。
良いな。
「お前ら、先に入ってろ。俺っちはタバコを吸ってからにする」
ずっと我慢してたしな。
「わかった」
俺とアヤカはエルヴィスを残し、奥に入っていった。
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