第021話 相談
俺達がそれぞれSNSで情報を集めていると、着信音が聞こえてくる。
「ヒナね……もしもし?」
アヤカが通話ボタンを押した。
『いえーい、そっちはどう?』
北浦さんにしてはテンションが高い。
多分、勝ったんだな。
「今、熊本市のホテルで待機中」
『おっ、人間の町はどう?』
「ぱっと見はそんなに変わってない。車も電車も走っているしね。でも、所々でちょっとした変化があるわ」
『ふーん……ヒャッハーな感じじゃないのか』
うーん……
「っぽい連中を見たわね。それと繁華街を通ってきたけど、例の感じだった」
『あー、例の感じか』
『あれね』
あれか。
「北浦さん、高宮さん、競馬場?」
『あ、ユウもいるんだ……競馬は午前中で終わった。今は車で帰っているところ。姉さん、仲間のユウとアヤカ』
『ふふっ、初めまして。リンダです』
…………何、この脳を直接震わせる美声は?
「どどど、どうも……」
ドキドキ。
『いや、高梨君、どうした?』
『ユウ?』
なんか変な気分に……ん?
「ディスペル」
自分に解除魔法をかける。
すると、胸のドキドキも治まり、通常に戻った。
『あらら? 優秀な魔法使いさんですね。ふふっ、可愛い』
美声は美声だが、もう大丈夫。
「いや、あのー……やめてもらえます?」
魅了魔法をかけただろ。
『え? 何したん?』
『チャームを少々……まあ、サキュバスの挨拶みたいなものです』
嫌な挨拶だ。
というか、電話越しでも効くのか……
『姉さん、たちわりーって』
『ごめんなさいね。それでそちらはお仲間を見つけられそうですか?』
「微妙。なんか空振りっぽい。夜にもう一回、繁華街に行ってみるけど、それで無理なら別府に戻ろうと思ってる」
アヤカが答える。
『では、その後にこちらですね。わかりました。海を渡る準備を早めます』
『姉さん、ありがとー』
『感謝。でも、ミナトとリクはどうする?』
北浦さんが聞いてくる。
「さっきユウ君と話したけど、2人も東京を目指すだろうし、どっかで合流できると思う」
『それもそうか。2人もまずはスマホを確保しようとするだろうし、いずれは連絡を取れるかな。そこからでも遅くはないか』
『まあ、しゃーないね。九州にいると思ったんだけどねー』
鹿児島、宮崎、福岡、長崎、佐賀、さらには沖縄の可能性もないことはない。
『それについてなんですけど、ちょっと私の考えを言ってもいいですか?』
ん? サキュバスさん?
「何?」
『皆さんは異世界からこちらの世界に転移した。転移先は九州。同じ町にいた4人が同じ九州地方ということで異世界での場所との相関性があるんじゃないかということでした。しかし、本当にそうでしょうか?』
んー……
「まあ、予想は予想だな」
『あまりその考えを信用しない方が良いですよ。私も話を聞きましたが、そちらに槍を持った男がいて、暴れたんでしょう? でも、その男はあなた方の仲間の可能性は低そう。つまり、別のクラスメイトかもしれないということです。その場合、そのクラスメイトはあなた方の町にいたということになります』
それもそうだな……
「あの町に私達以外はいないわよね?」
「ああ。そのはずだ」
俺達より進んでいる奴らはもっと先だし、最初から魔王討伐を目指していない奴らはもっと手前にいる。
実際、あの5年は俺達以外に誰とも会っていない。
『確認です。転移をする際、マユミとヒナは手を取り合ったそうですが、そちらはどうですか?』
確か……
「あ、俺もなんとなくアヤカに手を伸ばした」
「そうね。確かに手を握ったわ」
『ユウさんとアヤカさん、マユミとヒナが同じところに転移したのは肉体的接触があったから。同じ九州に転移したのはたまたま。そちらの方が正しいように私は思えますね』
なるほど……
あの適当神が何も考えずに日本ならどこでもいいだろって思った可能性の方が頷ける。
「なくはないな」
「あり得るかもね」
『そういうわけですから誰かを探すのは待ちが良いと思いますよ。早くお仲間に会いたいという気持ちはわかりますが、焦ってはいけません』
そうした方が良さそうだ。
「わかった」
「そうする」
『ユウ、アヤカ、さっさと合流しようよ。ミナトとリクを探すのはそれからでもいい』
やっぱりそうだな。
「ああ。明日の朝一にでもここを出ようと思うが、歩きだと1日、2日はかかるかもしれない。その都度連絡する」
『了解』
『待ってるかんねー』
高宮さんの言葉で電話が切れた。
「ちょっと焦りがあったか?」
「かもね。でも、仕方がないわよ。あなたは特に仲が良かったわけだし」
アヤカ達とは5年だが、ミナトとリクは10年だからな……
「まあ、人間の町を確認できたってことよしとしよーや」
エルヴィスが話を締める。
「そうだな……明日はやはり歩きか?」
「そうなるんじゃねーの? 電車であの軍の兄ちゃん、姉ちゃんが送ってくれた駅までは行けると思うが、そこからは足を確保しない限り、そうなる」
足か……
「車は買えないよな?」
「さすがに無理だろ。俺でもわかるぞ」
まあ、14万では無理か。
バイクも買えないかもしれない……
「アヤカ、歩きで良いか?」
「馬車に乗ることもあったけど、旅は基本歩きだったじゃない。問題ないわよ。ただ、今度は自衛隊に見つかったらダメ」
連れ戻されるからな。
「夜までにルートを考えるか」
「そうね。日本は道が多いから何とかなるでしょ」
俺達はSNSでの調査をやめ、地図アプリを開き、帰りの道を相談することにした。
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