第020話 昼の繁華街
公園を出て、通りを歩いていったのだが、俺達の足が止まった。
「何、ここ?」
「繁華街か?」
目の前に通りがあるのだが、なんかすごいどんよりしているというか、ゴミが多いし、カラスがすごく飛んでいるのだ。
「行くの?」
「ミナトのことがある」
「まあねー……なんか嫌な感じ」
「異世界で慣れただろ」
こういうところはいくらでもあったし、スラムなんかもあった。
「行きますか……一応、魔力は抑えましょう」
俺達は意を決して、どんよりとした通りに入る。
すると、怪しい店の前に立っている男達が見えた。
「キャッチか。マジで風俗街だな」
「嫌ねー……」
俺達はキャッチの男達にじろじろと見られながら歩いていく。
とはいえ、さすがに声をかけられることはない。
まあ、アヤカと一緒だからだろう。
「……変わった気配を感じるか?」
小声でアヤカに確認する。
「……人は多い感じがするけど、それだけね。そっちは?」
「……魔力は感じない」
俺達はそのまま歩いていくと、通りを抜け、飲み屋街に出てきた。
ただ、時間が時間なのでこちらは開いていない。
「なるほどね……治安は悪くなっているって思った方が良さそう」
元を知らないが、日本では異質な空間だと思った。
「まあ、そうだな。ただ、クラスメイトはいないと思う」
「魔力を隠している可能性は?」
「あると思うが……」
お楽しみ中にそこまで考えるかな?
「うーん……どうする?」
「夜にもう一度、来よう」
「じゃあ、ホテルにでも行きましょうか。ちょっと休みましょう」
うん……
「そうするか」
俺達はさすがに引き返す気は起きなかったので通りを迂回して、元の場所に戻ると、ホテルを探す。
そして、ネットで14時から開いているホテルを見つけたのでそちらに向かった。
「部屋はどうする? 一緒にする?」
ホテルを見上げながらアヤカが聞いてくる。
「知らないけど、ホテルって3人部屋があるか? エルヴィスがいるぞ」
「俺っちは床でもいいぞ」
ポケットからエルヴィスの声が聞こえてくる。
「うーん……ツインとシングルを取りましょうか」
「じゃあ、俺がツインでアヤカがシングルな」
それが無難だろ。
「そうしましょうか」
俺達は中に入ると、若い女性がいる受付に向かう。
「いらっしゃいませ。御予約のお客様ですか?」
「いや、してないです。シングルとツインの部屋を取りたいんですけど」
「シングルとツインですと、8000円と1万2000円になります。朝食はお付けしますか?」
エルヴィスがいるからなー。
「いえ、大丈夫です」
そう言って、エルヴィスからもらった万札を2枚出して、カウンターに置く。
「それではこちらが鍵になります」
鍵を見てみると、シングルが304でツインが502だ。
階が違うらしい。
「どうもー」
俺達は鍵を受け取ると、エレベーターに乗る。
そして、チンッと音がし、3階で扉が開いた。
「夜まで暇だし、部屋を見たらそっちに行くわ」
アヤカがそう言いながらエレベーターから降りる。
「わかった」
頷くと、ドアが閉まり、再び、上昇していく。
そして、5階で止まったので502号室を探す。
「あ、ここか……」
鍵を使って中に入ると、ベッドが2つと簡単なテーブルがあるだけの部屋だった。
昨日、泊まった旅館とは全然、違う。
「エルヴィス、もう出てもいいぞ」
そう言うと、ポケットからエルヴィスがジャンプし、元の大きさに戻った。
「あー、疲れた。外を見られなかったから結構なストレスだったぜ」
エルヴィスが首をひねりながら椅子に座る。
「お疲れさん。エルヴィスは何か感じたか?」
「所々でマナを感じたな。ただ、それだけだ」
確かに魔力を感じた。
何ならの自衛隊員の2人からも感じたのだ。
「正直、魔力だけで言えば俺やアヤカの敵じゃない」
もちろん、それが絶対評価なわけじゃない。
「おめーらレベルはそうはいねーよ」
エルヴィスが苦笑いを浮かべながらタバコを取り出した。
「あ、禁煙だ」
「マジかよ。喫煙を取れよ」
「ネットで見たら全室禁煙だったぞ」
「そうかい。こりゃ熊本にいる限りは吸えねーな」
エルヴィスがタバコをしまったので代わりにさっきコンビニで買ったタバコを渡す。
「ほら。これで良かったか?」
「どうも。ちょっと気になるだけから何でも良いよ。それよりも風俗街はどうだった?」
エルヴィスがニヤニヤしながら聞いてくる。
「人相の悪そうな男達にめっちゃ見られた。異世界でも行ったことがないんだが、ああいうものかね?」
一人だったら絶対に引き返していたと思う。
「さあな。別府にもあったみたいだが、悪魔は利用しないから何とも言えん」
利用しないのか……
サキュバスがいるし、あるのかと思ってしまった俺を責めないでほしい。
「しかし、どう調査するか……」
「入ってみたらどうだ?」
「俺はそういうところに行かないんだ」
というか、行けるわけないだろ。
「はいはい。お前、20代後半だろ? 何をガキみたいなこと言ってるんだ?」
「ガキのまま異世界に転移したから心は若いんだよ」
浦島太郎状態だ。
「ふーん……ん? アヤカだぜ」
ノックの音が聞こえたのだ。
「はいはーい」
扉の方に行き、アヤカを招き入れた。
「ふーん……こっちはちょっと広いわね」
アヤカが部屋を見回す。
「そっちは狭いのか?」
「ベッドでほぼ終わり。まあ、寝るだけって感じ」
「ビジネスホテルってそんなものかもな。異世界の宿屋は広かったが」
「まあねー……それで繁華街はどうだった?」
うーん……
「ミナトがあそこに行くかねー? 少なくとも、絶対に1人じゃ行かないと思う。いや、リクがいても無理かな……」
4人でも行けなかったわけだし。
あ、いや、行かなかったわけだし。
「空振りかもね……あんなところに行って、ケンカをする……ちょっと大村君のキャラじゃない」
そう思う。
「今夜、もう一度、行ってみて、いなかったら別府に戻ろう。もし、あいつらが九州にいたとしても逆にこっち側に来てもらえばいい」
あいつらも東京には戻りたいだろうし。
「それもそうね。じゃあ、夜までは待機」
アヤカがそう言って、ベッドに腰かけたので俺も隣のベッドに腰かけた。
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