第019話 デートみたいだなと……
そのまま車に乗り、1時間くらいが経つと、山を越え、平地に出てくる。
田んぼや畑が目立つが、建物も増えてきており、市街地に近づいてきているなって感じがした。
それに車もそこそこ走っているし、歩いている人もいる。
「さて、この辺でいいだろ」
男性隊員がそう言うと、駅に車を止めた。
「じゃあ、ここまでね。あとは電車で帰りなさい」
電車も走っているんだ……
「ありがとうございました」
「ご迷惑をおかけしてすみません」
一応、謝っておく。
「もう二度と東に行ったらダメよ? あと南もね」
鹿児島も悪魔側だったな。
「わかりましたー」
俺達が降りると、車はすぐに来た道を引き返していった。
「上手くいったな」
「ええ。それにしても普通よね……」
辺りを見回すと、やはり普通の町並みといった感じがする。
「もし、ここに転移していたら何の疑問も持たなかっただろうな」
「そうよね……電車だっけ?」
「走ってんだな」
「まあ、便利と言えば便利だけど……どうする?」
うーん……
「まあ、槍男を探そうぜ。とりあえずは市街地だ」
「じゃあ、乗りましょうか」
俺達は駅に入り、時刻表を見る。
「11時だな」
あと5分で電車が来るみたいなので切符を買い、ホームに向かった。
そして、電車が来るのを待っていると、2両の電車がやってくる。
「少ないな」
「こんなもんじゃないの? それにしても……」
アヤカが前の車両を見る。
明らかにガラの悪い連中が乗っているのだ。
「後ろの車両に行こう」
「うん」
アヤカの手を取り、後ろの車両に乗り込む。
こちらはおばちゃんや老人が乗っており、大人しい感じだ。
俺達が席につくと、電車が動き出した。
「……アヤカ、前の車両の連中、武器を持ってるぞ」
アヤカの耳元で囁く。
「……うん。例の民間兵ってやつじゃない?」
「……もう見るのはやめよう」
ああいうのは斜め45度で俯くに限る。
「……そうしましょう」
俺達は前を向いて、到着を待つ。
徐々に町並みが都会っぽくなり、高いビルなんかも見え始めると、30分くらいで熊本駅までやってきた。
民間兵らしき男達はちょっと前に降りていたので安心して電車から降りると、駅を出る。
「おー、都会だな」
ビルが高いし、道路も広い。
異世界とは大違いだ。
「見慣れた感じね……でも、ちょっと汚くない?」
アヤカが言うようにそこら中にゴミが落ちている。
「終末世界の余波か?」
「かなー? まあいいわ。繁華街ってどこ?」
さあ?
「わからん。飲み屋街じゃないのか?」
「えーっと……」
アヤカがスマホを取りだし、探し出した。
「んー? この辺じゃないっぽいわよ。北東の方」
「そうなのか?」
「ほら」
アヤカのスマホを見てみると、確かにここじゃない。
「城の近くじゃん」
わからないから熊本駅に来たが、微妙に違うっぽい。
まあ、知らない土地なうえに高校生だった俺らがわかるわけがない。
最初からちゃんと調べるべきだったな。
「歩いて40分。まあ、歩きましょうか。ちょっと町並みを見てみましょう」
それがいいか。
俺達は熊本駅をあとにし、歩いていく。
「エルヴィスー、生きてるかー?」
全然、声が聞こえないから確認。
「……生きてるよ。人間の町はどうだ?」
「普通だな。争いの雰囲気はない」
ちょっと汚いくらいだ。
「普通にスーツを着たおじさん達が歩いているわよね」
「こんな状況でも仕事か……」
中卒の26歳が大人は大変だなーと思いながら歩いていき、城の近くまでやってきた。
「観光する? 有名じゃないっけ?」
俺も熊本城は聞いたことがある。
「城は別に興味ないなー。洋風な城をいっぱい見てきたし」
湖の上に浮かぶ城や断崖絶壁にそり立つ城も見た。
「まあね。それに今はそういう状況じゃないか。繁華街はあっちだけど、どうする?」
アヤカが城とは反対方向を指差す。
「どっかで昼飯でも食べようぜ。繁華街に行ってもこの時間はやってないだろ」
「それもそうね」
俺達は繁華街の方に歩いていく。
そして、コンビニを見つけたので中に入り、弁当のコーナーに向かった。
「こっちは普通にあるな」
お手製弁当じゃない。
それに当然だが、店員も青白くない。
「ええ。パンもあるわね」
「……エルヴィス、何が良い?」
声を落として、エルヴィスに聞く。
「ラーメン」
ラーメンか……
「……あとでカップ麺を買ってやる。他のにしてくれ」
「じゃあ、パンでいい、適当でいいぞ。あとタバコな」
パンね。
俺達は弁当とパン、さらには飲み物を籠に入れ、レジに向かった。
そして、よくわからなかったので適当な番号を言って、タバコも買うと、コンビニを出て、近くにある公園に向かい、昼食を食べる。
「うーん……平和だな」
「そうね」
周りに誰もいないのでエルヴィスもパンを食べている。
とはいえ、小さいままだ。
「うめーな。別府にはないから食べてみたかったんだ」
小さいゴブリンがパンを食べている姿はちょっと可愛いと思った。
「そりゃ良かったな。それにしてもこの広い熊本市街から探すのは大変だな」
「そうね……異世界の町とは違うわ」
ちょっと失念していた。
町の規模も人口も桁違いなのだ。
「SNSはどうだ?」
エルヴィスが聞いてくる。
「ダメだな。あれから槍男の情報は出てない」
「まあ、あんなことがあったら槍は出さないわよね」
ミナトかはわからないが、そこまでバカじゃないだろうしな。
「飯を食ったらちょっと繁華街を回って、どっかのホテルに入るか」
「それが良いかもね。本番は夜よ」
「そうだな」
俺達は昼食を食べ、少し、公園でゆっくりすると、繁華街に向かった。
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