第018話 初遭遇
「田んぼがのどかねー」
俺達は町中を抜け、田んぼが中心の開けたところに出ていた。
「そうだなー」
風も気持ちいい。
「しかし、人の気配がないわ」
「代わりに熊とか出そうだな」
「九州には熊がいないんじゃなかったっけ?」
そうなの?
「知らないなー。勉強不足で困るな」
「ホントに中卒になっちゃったしね」
悲しいね。
「まあ、他の連中も……ん?」
「何か動いたわよね?」
「見えたよな?」
田んぼの先にある集落で何かが動いたのだ。
「気のせいじゃないと思う」
「何だろ?」
「車じゃないか?」
遠目にだが、結構な速度で動いている茶色っぽい何かが見えるのだ。
「人間か悪魔かわからないけど、とりあえず、アピールしとく?」
「歩くのも面倒だしな」
俺とアヤカはその場で両手を振って、アピールしていく。
すると、田んぼの向こうを進んでいた車が止まった。
「嫌な視線を感じるわ」
「見ているんだろ」
まだかなりの距離があるが。望遠鏡を使えば見えるだろ。
「とりあえず、手を振りましょう」
「そうだな。おーい!」
引き続き、アピールしていくと、車が動き出した。
そして、道を曲がると、こちらにやってくる。
「釣れたわね」
「さて、人間か悪魔か……いや、自衛隊っぽいな」
茶色の車はよく見ると、迷彩色だ。
「バッチシじゃない。ユウ君、私が話す」
「頼む」
こういうのは女性の方が良い。
俺達は待っていると、自衛隊の車が10メートルくらい手前で停車した。
そして、迷彩服を着た若い男性と女性が降りてくる。
しかも、2人共、肩にマシンガンを背負っていた。
「君達は何者?」
「ここは立ち入り禁止地区だぞ」
マシンガンを向けてくるということはないが、ちょっと強めの口調だ。
「すみませーん。動画投稿者なんですけど、迷子になっちゃいましたー」
アヤカがちょっと頭の悪そうな声を出す。
「ハァ……また、その手合い」
「この辺りの動画投稿も禁止されている」
「え? そうなんですか?」
アヤカが可愛く、首を傾げた。
「ハァ……身分を証明できるものはあるか?」
「身分と言われても……車の免許も持ってないしー。昔の学生証でもいいですかー?」
アヤカがそう言うと、女性の方が片手を上げ、もう1人の男性を見る。
そして、男性が頷くと、女性がこちらにやってきた。
「見せてちょうだい」
「どぞー」
「あ、俺も」
ポケットに手を突っ込み、空間魔法から学生証を取り出すと、女性隊員に渡す。
「ふむ……東京の学校ね」
「同級生なんですよー。来年くらいに結婚しようねって……ね?」
「うん!」
思いっきり頷いてしまった……
「ハァ……結婚は良いことだと思うけど、この辺は危険よ。すぐに帰りなさい。熊本市?」
「はい。でも、歩いてきたんできついです。足が痛いです」
「背負うぞ?」
「貧弱ボーイは無理無理」
いや、俺だって魔法使いだけど、ずっと異世界で鍛えてきたわけだし、それくらいなら余裕だぞ。
まあ、そういう状況じゃないから言わないけど。
「わかったから。送ってあげるわよ。ちょっと待ってね」
女性隊員は辟易した感じで男性隊員のもとに戻る。
そして、小声で話すと、車に戻り、無線で何かを話し始めた。
「……聞こえる?」
アヤカに聞かれたので魔法を使い、耳を澄ませてみる。
すると、女性隊員と無線の声が聞こえてきた。
「……バカな民間人2人を保護って言ってるな。そんでもって、さっさと市内に戻し、巡回に戻れってよ」
「……上手くいきそうね」
「……まあな」
俺達が待っていると、女性隊員が戻ってきた。
「お待たせ。熊本市内まで送っていくわ。一応聞くけど、武器は?」
そう聞かれたのでバカな彼氏のふりをして、力こぶを見せる。
まあ、服で見えないんだけどさ。
「ユウ君、すごーい」
バカな彼女が笑顔で拍手をする。
「ハァ……乗ってちょうだい」
見事にバカなカップルと思った女性隊員がそう言って、車に向かったのでついていく。
そして、後部座席に乗らされると、すぐに車が動き出した。
「ねえねえ、悪魔と戦ったことある?」
アヤカが助手席にいる女性隊員に聞く。
「あるわよ。とても恐ろしいバケモノだからあなた達は近づかないように」
「俺、そういうのとは別に阿蘇山を見たかったんだけど」
これは本当だったりする。
「ダメ。いいから立ち入り禁止地区には近づかないこと。大人しく町で過ごしなさい」
「ダメだってさ」
「仕方がないよ。やっぱり槍男を追わない? 閲覧数を稼げそう」
おー、アヤカ、上手いな。
「槍男?」
あれ?
「お姉さん、知らないんっすか? 繁華街で槍を持った男が暴れたってSNSで見ましたよ?」
「あー、あれね。危ないから繁華街も近づかないことね。あ、いや、あなた達は近づかないか」
ん?
「近づいたらダメなんですか?」
「え? 繁華街よ?」
え?
「何?」
「さあ?」
アヤカと顔を見合わせ、首を傾げる。
マジでわからないのだ。
「あなた達、普段、どこで生活してるの?」
えーっと?
「普通の住宅街です。あんまり外には出ませんね」
アヤカが良い答えを出す。
「それなのにこんなところまで? まあいいわ。繁華街は治安が良くないし、誘惑が多いからあまり近づかないこと」
誘惑……あっ!
異世界でそういうのがあると知った時、男4人で行くかどうしようかを宿屋で朝まで話し合ったあの繁華街か!
結局、行けなかったけど……あ、いや、行かなかったね。
内緒だけど、俺、好きな人がいるんだ。
「飲み屋ってこと?」
アヤカが聞いてくる。
「多分、そうじゃないか? 俺達、飲まないし、行かなくていいだろ」
「ま、そうね」
アヤカがジト目で頷いた。
多分、わかったっぽい。
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