第017話 ジョブチェンジ回避!
服屋にやってくると、車から降りる。
某有名な服屋であり、建物も結構、大きい。
「ここで服を買って、その場で着替えろ。さすがにその格好で人間の町に行くのはどうかと思うしな」
試着室があるし、そこで着替えればいいか。
「ぱぱっと買いましょう。あまりファッションがどうとか言ってらんないしね」
「そうだな」
俺達は店の中に入る。
すると、他の客もおり、服を見たりしていた。
「じゃあ、ぱぱっと見てくるから」
アヤカはそう言って、レディースのコーナーに向かったのでエルヴィスとメンズのコーナーを見る。
「ぶっちゃけさ、俺こそ何でもいいんだよな」
「言いたいことはわかるぜ。その辺は悪魔も人間も変わらねー」
エルヴィスが苦笑いを浮かべたので適当にシャツにパーカー、それにジーパンを選ぶと、レジで会計をする。
そして、店員の女性ゾンビに試着室を借りる旨を伝えると、着替えて、外に出た。
「待つか」
まあ、どう考えてもこういうのは男の方が早い。
「そうだな。しかし、こうやって見ると、普通の兄ちゃんだぜ」
「どうも」
エルヴィスがタバコを吸い始めたので軽く準備運動をしながら待つ。
すると、30分くらいでアヤカも出てきた。
アヤカは青いニットに白のパンツだ。
なんか明るい感じがして、アヤカに合っている。
「良いな。何と言うか、ようやく帰ってきたなって思う」
「ユウ君もね。ファンタジーから卒業よ」
最初は全員、制服だったが、すぐにファンタジーな格好になった。
というか、よく考えたらアヤカの私服を見たのは初めてだ。
「もういいか? そろそろ出発と行こうぜ」
「ええ」
「頼む」
俺達が後部座席に乗り込むと、エルヴィスがスマホを見せてくる。
「これからのルートを説明しておく。さすがに阿蘇山に直で行くのは危険すぎるから阿蘇山を迂回するルートを使う。ここから西南西を進む阿蘇山の北を進むルートだ」
ふむふむ。
地図アプリを見ながらだとよくわかるな。
異世界でも欲しかった。
「わかった。この辺の土地勘はないから任せる」
九州はさすがにわからないし、どこからが人間の勢力圏なのかも知らない。
「じゃあ、行くぜ。1時間もかからないからちょっと待ってろ」
エルヴィスがそう言って、車を動かしたので引き続き、窓から外を眺めながら待つ。
すると、20分くらいで町中を抜け、山道に入った。
とはいえ、ちゃんと舗装はされているし、スムーズに進んでいる。
たまに家が見えるくらいで平和そのものだ。
「どういう設定でいく?」
外を眺めていると、アヤカが聞いてくる。
「設定?」
「もし、人間に遭遇したらよ。怪しいでしょ。やっぱり遭難カップルで行く?」
カップルという言葉に反応しないように心がけた。
「まあ、それが自然じゃないか? 町にいたけど、ちょっと出てみたって感じ。エルヴィス、検問とかあるのか?」
「いや、そんなものはない。実を言うと、ほとんどの人間が都会に避難しているが、そうではない人間ってのもいるんだ。自分が住んでいた家を離れたくないって感じだな。そういう奴らがいるし、この国の町って全部繋がってるだろ? 検問を敷くのも難しいんだ。さすがに戦地になりそうなところは強制退去みたいだがな」
あー、異世界の町は塀で囲まれた単体の集落だもんな。
日本はそんなことなく、結構、どこにも家がある。
「じゃあ、すんなり入れそうだな」
「検問はないが、見回りは多いぜ。それを回避していってもいいが、歩くのも面倒だし、保護してもらえ。それが一番早い。お前ら、身分証とか持ってるか?」
身分証……
「学生証なら」
「確かにそれがあるわね」
俺達は学生証を取り出した。
「アヤカ、なんか懐かしいな」
顔写真が載っているが、若いというか幼い。
「ユウ君も可愛い感じね。さすが高校生」
ホント、ガキだな、俺。
「いちゃつくなっての。学生証があるならそれで大丈夫だろ」
「東京の学校なんだが……」
「向こうは向こうで疎開してきたとか、実家がこっちとか色々考えるさ。どうとでもなる」
ふーん……そこまで厳重じゃないみたいだな。
その後も車が進んでいくと、さらに20分くらいが経ち、エルヴィスが待避所に車を止めた。
地図アプリを見てみると、ちょうど阿蘇山の北くらいだ。
「ここからは歩きか?」
「ああ。この辺から怪しくなる。さすがに車は無理だ。帰りはここまで戻ることになるな」
地図アプリで熊本市までの所要時間を調べてみる。
すると、歩きで14時間だった。
「自衛隊に上手く市街まで運んでもらえたとしよう。一応聞くけど、帰りは?」
「足を確保できなかったら歩きだな」
そうなるか……
まあ、仕方がないか。
異世界にいた時はそれ以上を歩いていた。
「行くか」
「ええ」
「じゃあ、俺は小さくなるから後は頼むぞ」
エルヴィスが魔法を使い、小さくなったのでひょいっと摘まみ、ポケットに入れる。
「大丈夫か?」
ポケットにいるエルヴィスに聞く。
「ああ。問題ない。頼むぞ」
俺達は車を降りると、道を歩いていく。
すると、10分ぐらいで田舎だが、開けた町中に出てきた。
しかし、人の気配がまったくない。
もちろん、悪魔もいない。
「人がいないわね……」
「なんか怖いな……」
ゴーストタウンっぽい。
「さすがにこの辺は人が住んでいない。もしかしたらいるかもしれないが、外には出ないだろ」
「ふーん……」
町中を歩いていくと、スーパーやドラッグストアがあったりするのだが、ガラスは割られているし、中を覗くと、かなり荒らされていた。
「なるほど。終末世界だな」
「っぽいわね……火事場泥棒かしら?」
まあ、この状況じゃあな。
「そんな感じじゃないか? 悪いことを言っていいか?」
「どうぞ」
「熊本に着いたとしてさ、金持ってる?」
悪魔の町はマナだったが、人間の町は金だろう。
「3000円くらいなら……」
「俺、2000円しかない」
高校生だったんだもん。
「5000円で泊まれる? ご飯くらいは大丈夫だと思うけど」
「わからん。ホテルとかで外泊したことないし」
でも、さすがに5000円では足りなさそー……
「え? やっちゃう? 火事場泥棒にジョブチェンジ? 私、ナイトなんだけど?」
ルーンナイトな。
魔法と剣が使える戦士であって、別に職業が騎士というわけでもない。
「俺は錬金術師だ」
「錬金術ってそういうことじゃなくない?」
うん。
「安心しろ。ちょっと待ってろよ」
エルヴィスがポケットからジャンプし、地面に降り立つ。
そして、元の姿に戻ると、空間魔法から札束を取り出し、渡してきた。
「え? これは?」
「旅館のオーナーにもらってきた」
人間が残したやつか……
「1、2、3……16枚あるな」
16万円だ。
すげー。
「いいの?」
「悪魔にはただの紙だ。いいからもらっておけ。ついでにタバコでも買ってくれ」
「わかった」
「じゃあ、頼むぜ」
エルヴィスが再び、小さくなったのでポケットに入れ、地図アプリで道を確認しながらさらに歩いていった。
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