第016話 出発
「エルヴィスがついてきてくれるなら心強いが……」
アヤカを見る。
「良いと思う。正直、私達よりエルヴィスの方が人間側も詳しいでしょ」
だよな……
「エルヴィス、頼む」
「良いってことよ。報酬はもらってるし、俺っちも興味がある」
「じゃあ、明日は小倉じゃなくて、熊本に行ってみよう」
頷くと、アヤカが電話をかける。
『どうすることにしたー?』
高宮さんだ。
「ちょっと熊本に行ってみる。大村君の可能性が高そうよ」
『了解。私らも行こうか?』
2人が来てくれると心強いが……
「やめとけ。人間側に行くとはいえ、場所は戦地だ。大人数だと疑われる。まだこの2人ならカップルで遭難とか適当な言い訳が立つ」
エルヴィスが助言をくれる。
『あー、それもそうだね。目立たない方がいいか。じゃあ、私らはここで待機してる。また連絡を頂戴』
「ええ。競馬でもしてちょっと待ってて」
『明日も勝負か……』
北浦さん、ハマったんだな。
「そっちでも調べておいてね。大村君や松永君のこともそうだけど、これから東京に行かないといけないんだから」
『……温泉でまったりいちゃいちゃしている奴に言われちゃったよ』
『……しゃーない。奴は選ばれた女よ』
小声だけど、聞こえてる。
「いいからお願いね。特に他のクラスメイトの動向に要注意よ。東京にいるであろう家族が気になるってのはほとんどの人が思うことだし、目的地が一緒なら遭遇する確率は上がるわ」
まあ、そうだな。
『了解』
『そっちも人間の町がどうなっているのかも調べておいて。これから色々な町を経由しないといけないからさ。じゃねー』
北浦さんがそう言うと、電話が切れた。
「決まりだな。じゃあ、明日の9時にここを出よう。ロビーで待ってるからな」
エルヴィスがそう言うと、元のサイズに戻り、立ち上がる。
「よろしく頼む」
「ああ。お前らも早めに寝ろ」
エルヴィスがそう言って、部屋から出ていった。
「9時か……風呂に入るし、7時には起きるか」
「そうね。ちょっと早いけど、明日に備えて寝ましょうか」
アヤカが自分の布団に向かったので立ち上がり、電気を消す。
そして、布団に入った。
「寝た?」
「いや、はえーよ」
それ、もうちょっと経ってから聞くやつだろ。
「大丈夫よね?」
不安か。
「大丈夫だ。ちょっと確認して、ミナトだったら合流して帰るだけ。違ってもさっさと帰るだけだ」
小倉で高宮さんと北浦さんを待たせているので長居はしない。
「うん。この5年、あまり動くことがなかったからちょっと心配になっただけ」
遠くても仕事で隣町に行くくらいだったからな。
「東京に戻って、家族に会ったら予定通り、6人で会社でも作って過ごそうぜ」
この情勢で引っ越し業者をやれるのかは知らないが、何かしらの仕事はあるだろう。
「そうね……こっちも戻ってきて、ユウ君と一緒で良かったよ。1人だったらパニックになっていたと思う」
多分、それは俺の方が思っている。
主に一緒で良かったこと。
「2人で良かった。ここから先、単独行動は避けよう。俺達は1人じゃない」
「そうね……うん。昨日は寝付きが悪かったけど、今日は眠れそう」
俺は……いや、寝よう。
「そうだな。おやすみ」
「うん。おやすみ」
ちょっとドキドキが治まらなかったが、目を閉じたらあっという間に意識を手放した。
翌日、朝起きた俺達は朝風呂に入って眠気を取ると、部屋で朝食を食べる。
「朝から豪勢ね……」
朝食はご飯に味噌汁なのだが、刺身まで付いていた。
「サハギンが獲ってきてくれたんだろ。鯖が美味いな」
「うん、鯵も美味しい」
俺達は朝食を堪能すると、準備をし、部屋を出る。
そして、エレベーターに乗り、1階に下りると、入口の前でエルヴィスが待っていた。
「よう。よく眠れたか?」
「ええ。ぐっすりとね。やっぱりコタツじゃなくて、布団が良いわ」
「そりゃ良いことだ。早速だが、出発しよう。乗れ」
俺達は旅館を出ると、後部座席に乗り込み、出発する。
「安全運転で頼むぞ」
「わかってるよ。まずはドラッグストアと服屋に寄るぜ」
「お願い」
車を走らせ、坂を降りる。
今日も温泉の煙は出ているし、歩いている人達は全員悪魔だ。
そんな町中を進んでいくと、ドラッグストアにやってきた。
広々とした駐車場にはガラガラだし、建物も管理されていないので状態は悪い。
「着いたぞ」
エルヴィスが入り口近くに車を止めたので降りて、中を覗く。
ぱっと見ても棚に商品はない。
「何もないぞ」
「使えるものは全部、持ち出している。あるのは悪魔が使わない薬とかだけだな」
食料もないだろうな。
地味にポテチが食べたいんだが。
「大丈夫。ちょっと見てくるから2人はここで待ってて」
「んー? 1人で行くのか?」
「中に誰かがいる気配はないし、大丈夫。すぐに戻ってくるから」
アヤカはそう言って、中に入っていった。
「まあ、待つか」
「そうだな」
エルヴィスはタバコを取り出し、吸い始めた。
「タバコはあるんだな」
「これを吸う奴は少ないからな。在庫はあるんだ。とはいえ、そろそろ厳しい。まあ、なくなったらやめるさ」
やめられるかねーと思いながら待っていると、10分やそこらでアヤカが戻ってきた。
「あったか?」
「ええ。色々と調達できた。薬が欲しかったら言ってね」
俺、ポーションを作れるんだけどな。
「終わったか? じゃあ、次は服屋な」
エルヴィスがタバコを消し、車に乗り込んだので俺達も乗り込む。
そして、服屋に向かった。
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