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第002話 帰ってきたが……


 視界が晴れると、白から黒に変わる。


「ん? 夜、か?」


 辺りは黒いというより、暗い。

 とはいえ、古臭い電灯が電信柱に付いており、蛾なんかの虫が集まっていた。


「え? ここは?」


 アヤカも薄暗い辺りをきょろきょろと見渡した。


「戻ってきたんじゃないか?」


 さっきまでとは明らかに違う世界だ。

 まあ、夕方から夜に変わったわけだし。


「そ、そうね……日本っぽいわ」


 俺達は道路の上にいた。

 ただ、辺りには古そうな一軒家がぽつりぽつりとあり、畑が見えていた。

 そして、異世界ではあまり見かけないうっそうとした山林が遠くにある。


「日本、だよな?」

「ええ。懐かしいっていうのかしら?」

「そ、そうだな」


 俺達がすんなり納得できないのは夜であまり見えないことと、いきなりすぎたので現実を受け止めることができないからだ。


「ねえ、ここが日本として……どこ?」

「東京ではない、かな……」


 俺達は東京の学校に通っていた。

 そこから異世界に転移したのだ。


「戻すっていうくらいだからあの教室に戻してくれればいいのに」

「まあ、俺達も最初の転移場所から移動しているからな。多分、転移する場所っていうのがこの世界とリンクしているんだろ。その証拠にこの場には俺達しかいない」


 俺達が動いたから違う場所に転移したってところだろう。


「確かに誰もいないわね。声も聞こえない」


 ほー、ほーっという鳥の音しか聞こえない。


「もし、そうならそう遠くない場所にあいつらもいると思うんだがな」


 もちろん、同じ町にいた友人4人だ。


「まあね……でも、日本に戻ってきたらすぐに会えるわよ」


 そうなるか……


「なあ、これからどうする? とりあえず、警察で良いのか?」

「そうね……え? 何て説明する?」


 異世界に行ってましたか?


「素直に言って信じてもらえるかどうか……」

「でもさ、他の人達が何て言うかでしょ。結局は素直に言うしかなくない?」


 それもそうか。

 皆が適当に証言しても矛盾するし、結局は素直に言うしかない。

 たとえ、信じてもらえなかったとしてもだ。


「結局、ワイドショーの餌食パターンか」

「嫌ね……」

「神隠しにあった少年少女達を10年ぶりに発見。しかも、コスプレをし、異世界に行っていたと供述」


 供述は違うか……


「あー……仕方がないか。まあ、なるようになるわよ。とにかく、警察に連絡しましょう」

「そうするか……今、何時だ?」


 辺りには5軒の家が見えているのだが、灯りがついておらず、真っ暗だ。

 寝ているっぽい。


「わかんない。でも、ここがどこなのかもわからないし、起こしてしまっても仕方がないわよ。迷惑だろうけど、連絡してもらいましょう」

「そうするか」


 俺達は一番近い家に向かうと、玄関にある呼び鈴を鳴らした。


「コスプレだし、不審者丸出しだよな」

「男女だから大丈夫でしょ。コスプレ大会で迷子になっただけ」


 そう思ってくれるかねー?


「出てこないな」


 もう1回押してみるが、物音ひとつしない。


「というか、留守っぽいわね。気配がない」


 アヤカは最初に剣士になり、ルーンナイトとかいう魔法剣士になっている。

 そして、気配察知とかいうスキルを持っている。


「出かけているのかね?」

「じゃない? 廃墟って感じでもないし」


 普通の田舎の集落って感じだしな。


「いないなら仕方がない。他を当たろう」

「そうね」


 俺達は別の家に向かう。

 しかし、そこも呼び鈴の反応もなかったし、人の気配がなかった。

 さらに別の家にも向かったが、他3軒も誰もいないようだった。


「いないのか……」

「この集落で旅行にでも行っているんじゃない?」


 うーん……


「そうかもな……どうするよ?」

「野宿?」

「野営道具は持ってきてるか?」


 俺達は空間魔法という異空間に物を収納する魔法が使える。

 リュックやカバン要らずなので重宝した。


「いや、さすがに持ってきてない」

「俺もだ。4月だったよな? さすがに厳しいか?」


 三寒四温というし、4月の終盤だが……


「まだ夜や朝方はちょっと冷えるわよね。違うところに行ってみる?」

「夜にか?」


 周囲は山林と畑しかない。


「日本だし、道路を進んでいったら市街地に行けるでしょ。そこまで行けば誰かにスマホでも借りればいいわ」


 まあな……

 夜でも誰かいるだろう。

 何ならコンビニでいい。


「熊とか出そうなんだが……」


 山だぞ。


「それが? あ、いや、日本だったわね」


 俺もアヤカも旅をし、数えきれないほどの魔物を倒してきたから強い。

 もう熊なんか相手にならないだろう。

 しかし、日本で剣なんか振り回せないし、魔法も控えた方が良い。


「そういや技能が引き継いでいるんだったか?」

「みたいね。魔王を倒した誰かさんはそれを望みにするなんて何を考えているのかしら? 絶対にお金よ」


 俺も今後のことを考えたら金だな。


「うーん……まあいいか。ちょっと倉庫とかでもいいから借りられないだろうか」


 そう言って、玄関の扉に手を伸ばすと、鍵がかかっておらず、扉が開いた。


「あ、鍵がかかってないの? 田舎ねー。ウチの四国の祖父母の家もそうだったわ」


 アヤカの実家って四国にあるんだ。

 初めて知った。


「どうする?」

「入りましょう。あとで謝ればいいわ」


 アヤカは平気な顔でガラガラと扉を開け、中に入った。


「異世界に染まったなー」


 昔なら勝手に家に入るなんてやらなかっただろう。


「あんな危険な世界に10年もいればね。すみませーん!」


 アヤカが声をかける。

 しかし、反応はない。


「やっぱり留守だな」

「そうね……ちょっとトイレ」


 アヤカは靴を脱ぎ、家に上がった。


「もう空き巣だろ」

「緊急避難よ。セーフ、セーフ」

「はいはい」


 アヤカが奥に行ったので玄関に腰かける。


「んー……アヤカー、ついでに充電器でも貸してもらうかー?」


 俺達は高校生だったので当然、スマホを持っている。

 とっくの前に電池がなくなっているが……


『ナイスアイディアねー』


 トイレに入ったアヤカの声が聞こえたので俺も靴を脱ぎ、家に上がった。

 そして、もう今更だと思ったので灯りをつけながら奥に行くと、コタツのある居間にやってくる。


「充電器……充電器……ねーな」


 2階建てだったし、上か?


「おっ、コタツじゃないの。懐かしい」


 トイレを終えたアヤカも居間にやってきた。


「充電器がない。2階かも」

「2階ねー……さすがに気が引けるわね」


 ここまで来たら一緒な気がするが、気が引けるのはわかる。


「どうする?」

「固定電話とかあった?」

「いや、見当たらなかった」

「まあ、最近はスマホが主流か」


 ウチにも固定電話はなかったな。


「悲しいことに10年経っているけどな」


 最近っていつだ?

 もしかしたらもう次世代の電話ができているかもしれない。


「あー、そもそもスマホが使えるかも微妙ね。解約してそう」


 してるかもな。

 さすがに10年も料金を払うのもどうかと思うし。


「しゃーない。今日はここに泊まって、明日、市街地の方に行ってみよう」

「そうね……」


 俺達はコタツの電源をつけると、腰を下ろして、足を入れる。

 懐かしい温かさだった。


「家の人が帰ってきたら警察を呼ばれるな」

「それで良いでしょ」


 まあ、俺達も警察に連絡をしようと思っていたからな。


「しかし、本当に帰ってきたんだな……」

「ええ……ハァ……これからどうしよ……」


 まったくだ。


「とりあえず、親には会えるな」

「そこだけは感謝。小学生だった弟も成人式よ」


 10年か……


「なあ、腹減ったんだが……」

「私もよ。夕食前の時間だったし、身体を動かしていたからね。あ、お風呂に入りたい」


 風呂かー……

 さすがに厳しいか?

 いや、でも……


「もう開き直らないか?」

「良いと思う」


 俺達は立ち上がると、隣接するキッチンに行く。

 そして、冷蔵庫を開けた。


「ん? ハムしかないわよ。あとは調味料」


 食べられるものがあまりないな。


「旅行に行ってるんだろうな」

「パンとかもないし……まあ、これでいいか」


 アヤカはハムを取ると、冷蔵庫を閉める。

 すると、冷蔵庫に貼ってある紙が目に付いた。


「町内会……おい、別府市って書いてあるぞ」

「別府? 温泉の? 大分県!?」


 九州じゃん。


「また遠いところに……」

「ますますワイドショーの餌食ね。東京で神隠しにあった少年少女を大分県で発見。駆け落ちか?」


 駆け落ちかぁ……


「いやさ、他の連中もあちこちで発見されるぞ」

「マスコミとかが食い付きそう。もっと言えば、簡単には家に帰してもらえそうにないわね」


 マジで俺達、これからどうなるんだろう?


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― 新着の感想 ―
↓海パターンはキツイすね
出演者が逆に餌食となってしまい終了に追い込まれた番組名を久々にみた。
東京から別府に行くほど移動していたなら、他の人たちは外国とか、最悪海の上なんてのもありそうだな……。 こわ。
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