第014話 ちなずっとどぎまぎ
「指針か……アヤカ、どう思う?」
「正義感溢れる主人公だったら悪魔側から人間の町を取り戻す勇者コースだと思う」
確かに物語の主人公だ。
「俺達がなれなかったやつだな」
チームドロップアウトだし。
「うん……無理じゃない?」
無理だ。
「俺達には力がある。エルヴィスが言う感じだと、多分、人間側についても、悪魔側についても英雄になれるくらいには」
「だと思う。もっとも、他のクラスメイトもだけどね」
そうだな。
「きっとそういう風に考える奴もいると思う。でも、俺は無理だ」
「私も無理。マユミもヒナも……大村君と松永君もだと思う」
だろうな。
だから俺達は仲間になったんだ。
「争いには関わらないようにしたい。この先、戦闘もあるだろうけど、なるべく避ける方向でいこう。力もなるべく知られないようにする」
知られたら巻き込まれるものなのだ。
「私もそれで良いと思う。もう仲間が死ぬのは見たくない」
ショウタは森でウェアウルフに背後から襲われて死んだ。
三上さんはヘルバイパーに殺されたらしい。
その現場を見たわけではないが、町で絶望したアヤカ達3人の顔が忘れられない。
「これまでと同じでいこう。俺達は俺達の生き方がある」
「うん……」
俺達の方向性は決まった。
いや、最初から決まっていたようなものだ。
「適当に生きよう。無理はせず、傍観者だ」
「わかった。私もそれが良い」
アヤカが頷いた。
「エルヴィス、俺達が情けないように見えるか?」
話を聞いていたであろうエルヴィスに聞いてみる。
「いーや。お前らはそれで良いと思う。お前らはマナがすごいし、きっと強いんだろう。でも、戦士じゃない。今朝も言ったが、隣にいる仲間を見ろ。大事なのはそれだ」
エルヴィスが深く頷いた。
「ああ。そうする」
その後もSNSで情報集めをしていったが、特に有力な情報を得られずに夕方となる。
夕食は海鮮の鍋だったので3人で食べると、もう一度、最上階の大浴場に向かった。
そして、ゆっくりと温泉を堪能すると、エルヴィスと別れ、1人で部屋に戻る。
すると、部屋が片付けられており、代わりに布団が敷かれていた。
「うーん……」
何となく写真を撮り、高宮さんに送ってみる。
【高高同盟】
梨くん:どう?
宮さん:温泉旅館ってエロいね
いやはやまったく持ってその通り。
同じ部屋で寝るのはこれまであった。
何なら昨日も同じコタツで寝た。
しかし、何故かここだと変な気分になる。
梨くん:宮さん、ごめん。俺には無理だ
宮さん:ちょい距離を離そうか
高宮さんのアドバイスに従い、ぴったりくっついている布団を離し、距離を取る。
そして、写真を撮り、高宮さんに送る。
梨くん:おけまる?
宮さん:おけまる。ゆっくり進めようぜ
高宮さん、良い人。
梨くん:ちょっと電話してもいい?
宮さん:どうぞー
トークルームを閉じ、布団の上に座ると、電話をかける。
すると、すぐに呼び出し音がやんだ。
『どったのー?』
当たり前だが、高宮さんだ。
「いや、トークが面倒だなって思ったから」
『んー? そういやアヤカは?』
「まだ温泉」
『羨ましいねー』
それはごめん。
堪能している。
明日の朝も出発前に入る予定。
「そっちはどこに泊まってるの?」
『ホテル。なんかマナを支払ったんだけど、よくわかんない』
やっぱり高宮さんもか。
「こっちも払ったけど、わからん」
『あまり考えなくても良いかもね』
だと思う。
「北浦さんは?」
『ツインを取ったから隣のベッドにいるよ』
『そこは私の隣で寝てるって言わないと』
起きてんじゃん。
「北浦さん、勝った?」
もちろん、競馬のこと。
『勝った負けたは関係ない。どれだけ楽しんだかが大事』
負けたんだな。
「ほどほどにね」
『わかってる。今、SNSで情報を集めているところ』
あ、昼間に遊んでいたから今やっているのか。
「お願い。それでさ、昼に言ってた指針なんだけど、アヤカと話し合った結果、極力、関わらない方向が良いと結論に至った。人間側として戦うこともないし、当然、悪魔側としても戦わない。これまでと同じで適当人生を進みたい」
『うん。私もそれが良いと思う』
『まあ、無理だよね。そんなことができたら魔王討伐の旅を続けている』
その通りだ。
「お待たせー。いやー、スライムが入ってきてびっくりした。『女の子かい!』ってツッコむところだったよ」
アヤカが戻ってきた。
『おっ、身も心も綺麗にした女が帰ってきたぞ』
『あとはお若い者同士でごゆっくり……』
すぐふざけるなぁ……
「ん? マユミとヒナ?」
アヤカがこちらにやってきて腰かける。
どうでもいいけど、どぎまぎするから俺の布団に座らないでほしい。
『温泉はどうよ?』
高宮さんがアヤカに聞く。
「すごいよ。眺めも他のお客さんもね……」
『羨ましいなー』
『マユミ、東京に行く道中に温泉があったら寄ろうよ』
良いと思う。
「それでさ、さっき今後の指針を2人に話した」
アヤカに電話の内容を説明した。
「あー、なるほど。ごめん。私は戦えない。もちろん、危機が迫ったら剣を取れるけど、積極的にこの世界をどうにかするのは無理」
アヤカがスマホに自分の思いを告げる。
『私も』
『うん。私達の生き方を貫こうよ。他人にどう言われても気にしない。もう後悔しない選択をしたい』
俺もそう思う。
「じゃあ、そんな感じで。それと悪魔や人間もだけど、それ以上にクラスメイトには気を付けてちょうだい。接触は避けて」
『そうだね。それが良さそう。連絡先を知っている女子が何人かいるけど、連絡が来てもスルーしておく』
「それで。じゃあ、明日の昼にはそっちに行くから。競馬場で集合ね」
競馬、か……
ちょっと見てみたい気持ちもあるな。
『了解』
『――ちょっと待って!』
ん?
「ヒナ?」
「北浦さん、どうしたの?」
北浦さんが大きな声を出すのは珍しい。
『マユミ、これ……』
『んー……槍を持った男が熊本で暴れた……要注意……』
槍?
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