第013話 既読スルー
俺達は休憩スペースにあるマッサージチェアでリラックスをしていくと、昼になったので部屋に戻り、昼食を食べる。
昼食は刺身定食だった。
「生魚はガチで10年振りね」
「醤油もな……美味っ……」
「幸せー」
新鮮な刺身は本当に美味いし、白米にもよく合う。
「こういうのも悪魔が獲ってるのか?」
一緒に食べているエルヴィスに聞く。
「ああ。風呂場にサハギンがいただろ? あいつらはそういうのが上手いんだ」
サハギンは半魚人だ。
海の魔物であり、よく漁師を襲っていたが、こっちの世界の悪魔は逆に漁師らしい。
「すげーな。いや、感謝しかないけど」
うん、美味い。
「サハギンなんていたの?」
アヤカが聞いてくる。
「いたな。他にもオークやコボルトもいた。オークはでかかった」
うん、でかい。
「確かにオークは大きいわね。湯がなくなるんじゃない?」
「お湯が溢れてたし、オークが上がった後は半分もなかったな」
まあ、すぐに溜まってたけど。
「こっちはほとんどいなかったわね。仲居メデューサがいて、にやにやしながらこっちを見てたけど。あとハーピーがいた」
仲居メデューサは仕事中じゃないんだろうか?
それにハーピーって鳥だろ。
温泉に入るのかよ。
「また行くか?」
「うーん……まあ、夜に行ってみるかな?」
「じゃあ、俺も行くかな……」
俺達は美味い昼食を食べ終えると、午後からはやることもないので部屋で過ごす。
といっても、SNSで情報集めだ。
「エルヴィス、この自衛隊が兵隊を募集っていうのは本当?」
アヤカがエルヴィスにスマホを見せる。
「んー……多分、本当だと思う。実際、最近はそういう民間兵もいる」
「悪魔側は?」
「悪魔側はそもそも兵隊がいない。同種族じゃない限り、群れないからな」
確かにそんなイメージがあるが。
「それでも悪魔側が優勢ってことは強さに差があるわけね」
「そういうことだな。そもそもあいつらの武器なんてたいして効かない。大型の武器もあるんだろうが、あいつらは使ってこないんだ。ただ、やはり最近はマナを得た人間も増えてきたし、その辺は苦労しているな。民間兵はほぼそういう連中だ」
異世界で言う冒険者か。
SNSでも武器を持った人間がいたし、悪魔を倒した的な報告も上がっていた。
「人間の勢力の町に行ってもやっぱり注意が必要そうね……ん?」
アヤカが自分のスマホを注視する。
「どうした?」
「あ、いや、マユミから。ヒナがスマホを手に入れたんだって」
サキュバスさんにでももらったか?
「俺ももらったし、連絡先を教えてくれ」
「うん」
アヤカがスマホを見せてくれたので2人の連絡先を登録していく。
地味に人生で3人しかいないという同世代の女子との連絡先交換だ。
10年もかかってしまった。
「連絡してみるか」
高高同盟の高宮さんにスピーカーモードで電話をしてみる。
呼び出し音が聞こえているのだが、数秒で止む。
『もしもしー?』
高宮さんだ。
「あ、もしもし……高梨だけど……」
なんか電話だと緊張するな。
『あれ? 高梨君? この番号は? 使えなかったんじゃなかったっけ?』
「俺もエルヴィスにもらったんだ。それでさっきアヤカから高宮さんと北浦さんの連絡先を教えてもらった」
『なーる。じゃあ、ヒナにも教えておくね』
それが早いか。
「おねがい。それでさ、家族とかと連絡取れた?」
『ダメ。繋がらない。ヒナもそう』
そっちもダメか……
10年で番号がそんなに変わるものか?
「こっちも無理っぽい」
『そっか……』
高宮さんの声が暗くなる。
多分、最悪の想像をしていると思う。
「そっちは何してんの?」
話題を変える。
『まだ競馬場。リンダ姉さんとヒナは熱中しているけど、私はあんま惹かれないから情報収集中』
さすがは高宮さんだ。
この子は俺達の副リーダーなのだ。
ちなみに、リーダーは何故か俺。
「どう?」
『この辺と博多の間に遠賀川ってのがあるらしいんだけど、そこが争いの最前線らしい。最近は落ち着いていて大規模な戦闘はないみたいだけど、人間側に妙な動きがあるんだって。もしかしたら大規模な攻勢があるかもって噂になっている』
ふーむ……
「マユミ、そっちは大丈夫なの?」
アヤカが心配そうに聞く。
『悪魔も強いみたいだしね。人間側もマナを獲得し、強くなっているみたいだけど、まだ魔法なんかは使えないみたい。その辺のアドバンテージもあるし、人間側も町を壊したくないから動きが鈍いみたいだよ。なんかそういう団体もできていて、軍の足を引っ張っているみたい』
なるほど。
それで大きな兵器を使用できないのか。
「それは朗報だな。ミサイルなんかぶっ放されたらいくら俺達でもわからん」
拳銃くらいなら防御魔法で大丈夫な気がするが……
『だよねー。そういうわけだからひとまずは安心。でも、あまり時間をかけるのもよくないし、ぱぱっと東京に行こうよ』
ぱぱっと行けたらいいがな。
「マユミだっけ? 本州には行けるのか? 橋がかかっているが、あそこは厳重だろ」
エルヴィスが聞く。
『そこはリンダ姉さんの仲間が動いているっぽい。お任せだね』
ふーん……
「そのリンダはよく協力してくれるな」
『なんかマナをあげたら手伝ってくれる』
エルヴィスと一緒か。
悪魔は本当にマナを重視しているんだな。
「じゃあ、大丈夫か」
『うん。それとさー、ちょっとヒナと相談したんだけど、これからの指針をどうするか決めておかない?』
ん?
「指針とは?」
『私達の目的は東京に行くこと。まあ、家族に会うことだね。問題はその後だよ。私達っていわば一般人じゃないじゃん。そんでもって、人間。どうする?』
そういうことか……
「俺、悪魔側の世話にしかなってないぞ」
『それはウチらも。正直さ、何にも知らなかったら悪魔側が悪って決めつけられるじゃん。でもさ、実際に話してみると、そうでもないっぽいんだよね。悪魔は悪魔で普通に暮らしている。もちろん、侵略者なのはそうだろうけど、それも仕方がないことって思っちゃうんだよね』
俺達も異世界生活が長かったからな。
平和な日本でのほほんと学生していた時とは違う。
「侵略しにきたっていうより、俺達と同じで強制的に転移してきたっぽいからな」
『そうそう。それでさ、どうする? その辺を決めておかないと、いざっていう時に動けないよ』
そうだな……
「ちょっとこっちでも考えてみる。出発は明日だし、時間はあるし」
『わかった。私達も考えてみるよ。でもまあ、高梨君が決めて。私達はそれに従う』
なんで?
「いや、俺が決めるの?」
『各種ポーションを作れるのも、武器のメンテをしてくれるのも高梨君じゃん。高梨君がいないと私達は安心して戦えないから結局は高梨君の判断になるんだよ』
うーん……下っ端な後方支援な気分なんだがなー。
「まあ、考えはするけど、そっちも考えてよ」
『それはね。引き続き、大村君と松永君の情報も探っていくから』
「お願い」
『りょーかい。じゃあ、まったねー』
陽気な挨拶をすると、電話が切れた。
「うーん……俺が決めるのか?」
アヤカを見る。
「まあ、リーダーだし」
「俺が暴君になったらそれに従うん?」
「ならないからユウ君がリーダーなのよ。それで5年もやってこられた。あと、社長でしょ」
「そっか……」
まあ、俺は安全策を取る方だし……ん?
スマホがピンコーンって鳴ったので見てみる。
【高高同盟】
宮さん:相談室を作ったよー。なんでも相談してねー。そっちはどう?
なんかトークルームに招待された。
梨くん:今、旅館にいる。同じ部屋なんだけど、どうしよう?
宮さん:ヤッちゃえ、なっさん
使えねー相談室だな。
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