第011話 旅館
俺達はSNSを見ながら情報を探っていく。
「色んな情報があるな。というか、カオスだな」
人間側の情報もあれば、悪魔側の情報もある。
相手を批判するのはわかるのだが、肯定派もおり、レスバをしている。
さらには結構ショッキングな画像をアップしているのもあるし、何が何だかわからない状態だ。
「エルヴィスが言うようにほとんどが信用できないわね。【食料が豊富で安全なシェルターを知ってますよ】とか書いてあるのもあるけど、絶対に嘘よ」
っぽいな。
「人間側も信用するなっていうのもわかるな」
「こんな状態だものね。それも10年も。もう日本人の秩序もないと思った方が良いわね。異世界と一緒」
まあ、異世界生活の延長か。
「やれるか?」
「もち。今更でしょ」
まあな。
俺達も色々なことがあった。
魔物を倒すことがメインだったが、盗賊を倒したこともあるのだ。
最初は寝られなかったことを覚えている。
「アヤカ、やっぱり俺達以外は信用するな」
「おっ、今のはかっこいいわよ。それは他のクラスメイトもってことよね?」
好感度、上がったかな?
「ああ。これは女子側には言ってなかったことだが、俺達が旅をしている時にも色々あったんだ」
「知ってる。私らもあったもん。というか、私らの方が多いかもね」
そうか……
「俺達は異世界で魔物を倒し、レベルアップしていった。多分、マナという経験値の塊だ」
10年分の蓄積がある。
「でしょうね。強くなる一番の効率は強い奴を殺し、マナを奪うこと。他の連中にこの知識があったかは知らないけど、もう皆が知っていると思っていい」
この世界では悪魔も人間も知っているらしい。
帰ってきたクラスメイト達もすぐにわかることだろう。
俺達が頷き合うと、ノックの音が聞こえてきた。
『おーい、いるかー? それとも1時間くらい後に来た方が良いかー?』
エルヴィスの声が聞こえてきたので立ち上がり、扉の方に向かう。
そして、扉を開けると、エルヴィスを招き入れた。
「エルヴィス、変なこと言わないで。ユウ君がどぎまぎするから」
もうしてない。
「わりー、わりー。この旅館はどうだー?」
エルヴィスが対面に腰かけたので俺も座る。
「良いところね。できたら平時に来たかったわ」
「へっへっへ。そうだな。情報は見つかったか?」
「まだよ。そっちは?」
「ここの支配人にちょっと聞いてきた。別府ではそういう異分子の情報はない」
ミナトとリクはいないのか?
「そう……困ったわね」
「あいつらも弱くはないから大丈夫だと思うが……」
心配は心配だ。
「それで小倉に行くというのは変わってないか?」
「ああ。それはそうだ」
「ええ」
アヤカも頷く。
「そうかい。じゃあ、伝えよう。この別府から小倉までは人間の町はない。だが、オーガの集落があるんだよ」
オーガ……
「確か『奪え、奪え』だったか?」
エルヴィスがそう言っていた。
「ああ。盗賊団だな。ここと北九州付近を繋ぐ高速を根城にしている。通ったらまず戦闘は避けられない」
高速道路に住んでんのか?
「下道は?」
「危険であることは変わりないが、高速よりかはマシだな。だから行くなら下道で行け」
ちょっと時間がかかるが、まあ、そこまでの差はないだろう。
俺達は10年待ったんだ。
「それで足のことなんだが……」
ここが大事。
歩くとかなりの距離だ。
「小倉ねー……まあ、連れていってやってもいいぞ」
マジ?
「いいのか?」
「それだけのマナをもらっている。返すと言ったが、良いマナだし、返すくらいなら働こう。それに小倉の競馬場っていうのが気になっていたしな」
角が生えた馬が走ってるんだっけ?
それ、悪魔だろうし、しゃべるのかね?
ウマ悪魔?
「助かる」
「良いってことよ。こっちはもう報酬をもらっているんだ。それにちょっとお前達が気になる」
「すまん。俺は好きな人がいるんだ」
実はいるんだな。
「知ってるよ、どぎまぎ君。そういうことじゃなくて、異世界のこともだし、お前らは異質すぎる。その仲間はどうなんだろうって思っただけだ」
高宮さんと北浦さんか。
「俺達と同じくらいのレベルだな」
俺達は力にあまり差がない。
まあ、だから仲良くできたとも言えるんだが。
「その辺がな。お前らは面白れーんだよ」
面白いか?
「よくわからないが、協力してくれるなら助かる」
「ええ。ありがとう」
「礼はいらねーよ。じゃあ、明日、朝一で小倉に向かうってことで良いか? 多分、昼には着く」
車ならすぐか。
「あ、エルヴィスさー、別府にドラッグストアとか服屋とかある? 色々と揃えたいのよね」
「服屋は充実しているが……ドラッグストアは野ざらしだぜ? 回復魔法を使える奴が多いし、悪魔に薬なんかいらねーからな」
俺も回復魔法を使えるな。
もっと言えば、ポーションも作れる。
俺達で回復魔法を使えるのは俺、リク、高宮さんだ。
「薬もだけど、色々と欲しいの。10年前のものでも大丈夫」
「じゃあ、市内にいくつかあるから寄ってやるよ」
「ありがとう」
「ユウも何かいるか?」
んー……
「スマホって手に入るか? 俺の分はもう使えないが、今後のことを考えると、新しく持っておきたい」
「それなら俺の分をやるよ。俺はいっぱい持ってるからな」
「多いな。そんなにいるのか?」
「色々と仕事があるんだよ」
農家でそんなにいるっけ?
まあ、いいか。
「じゃあ、くれ」
「ほれ」
エルヴィスがスマホを投げたので受け取る。
「悪いな」
「構やしねーよ。それよりもせっかく温泉旅館に来たんだし、風呂でも行こうや」
おー、そうだった。
「確認だけど、男女は分かれてるわよね?」
「当たり前だ。それにこの時間ならまだ他の客は少ない。ゆっくり入れや」
「ふーん……じゃあ、行きましょうか」
俺達は立ち上がると、部屋を出て、エルヴィスの案内で大浴場に向かった。
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