第100話 問題
「おばさんと話していたようですが、何かありましたか?」
後部座席に乗り込むと、リンダ姉さんが聞いてくる。
「アヤカの祖父ちゃん、祖母ちゃんは例の集団行方不明事件があったから東京に引っ越したんだと」
「あー、なるほど。それでいないわけですか」
「ああ。やはり東京だ」
会えなかったのは残念だが、まだ前向きになれる情報だ。
「わかりました。それではもう四国に用はないですね?」
「ないよな?」
アヤカを見る。
「ええ。神戸に向かいましょう」
「ああ。リンダ姉さん、頼む」
「そうですね……ただ、難しくなりました」
ん?
「どうした?」
「これをどうぞ」
リンダ姉さんがスマホを見せてくる。
そこには渋滞している道路が写っていた。
「何、これ?」
「どっか混んでるの?」
「この画像は私達が通ってきた岡山と香川を繋ぐ瀬戸大橋の手前です。ちょっとマズいことになりました。吉野川で争っていた悪魔と人間ですが、昨晩、自衛隊が突破し、香川に侵攻したそうです。現在、香川では大規模な戦闘が起きているそうです」
は?
「え? 膠着状態じゃなかったのか?」
「あの孔明さんは孔明じゃなかったようですね」
一つ目ちゃーん。
「どうするのよ? このまま香川に戻っても岡山に渡れないわけ?」
「ええ。この大渋滞です。おそらく逃げようとしている悪魔達ですね。これに巻き込まれると、足止めです。下手をすると、自衛隊に遭遇ですね」
それは最悪だ。
「マズいことになったわね。昨日、松山で泊まらなかったら良かったかしら?」
「どうでしょうね。どこかで泊まる必要はあったと思いますし、夜にここに着いたら先ほどの情報は得られませんでした」
それはそうだな。
「アヤカ、リンダ姉さん、過ぎたことはいい。今は四国を脱出する方法だ」
「そうね」
「ええ。そこです。四国を出るルートは愛媛から広島に渡るルート、香川から岡山に行くルート、徳島から淡路島に渡って兵庫に行くルートです。後は海路と空路」
地図アプリを見るが、そんなところだ。
「香川から岡山が唯一って感じだったのにな」
「愛媛から広島、徳島から兵庫は人間の町から悪魔の町だから厳しいわよね?」
「厳しいですね。そこを選ぶなら香川に行って、歩いていった方がマシでしょう」
うーむ……
「海路は? 太平洋側に面している高知だし、あるんじゃないか?」
「それが一番不明です。あるのかもしれませんが、使えるのかがわかりません。特に私達は所属不明ですからね」
俺とアヤカは10年前にいなくなっている。
リンダ姉さんは悪魔。
「無理か」
「そもそも海路でどこまで行くかよ。選ばせてくれるとは思えないし、兵庫からかなり離れるんじゃない?」
それもそうか……
となると……
「リンダ姉さん、とにかく出てくれ。どういうルートにするかを考える」
「では、愛媛に戻りますよ?」
「それで頼む」
「わかりました」
リンダ姉さんがエンジンを点け、車を発進させた。
「ユウ君、どうする?」
アヤカとスマホを見ながら相談する。
「今のところ、香川から岡山に渡るルートが一番現実的かなって思う」
「自衛隊に遭遇しないことを祈りながら渋滞を待つ感じ?」
「空間魔法があるから車の出し入れはできる。歩いてでも進める」
当然、歩くのは遅いが、渋滞を待つよりかは良いだろう。
「自衛隊、もしくは、私達が人間と気付いた悪魔に遭遇したら?」
「戦うしかない。幸い、相手にはならないだろう」
数を気にしなければ。
「銃は防げるのよね?」
俺には防御魔法もある。
「多分……試したことがないからな」
「不安ね。ポーションもあるけど」
どうにかなるかねー?
アヤカと相談しながら進んでいくと、山道に入る。
「この辺は普通だな。本当に争いが起きてるのかって感じる」
「四国山地を挟んだ向こう側なのよね。争いが終わるのを待つのはないわよね?」
うーん……
「神戸に皆を待たせてしまうからな。それに自衛隊が香川を取り戻したらいよいよ危なくなる。あ、高宮さん達に連絡してくれ」
「そうね」
アヤカがスマホを操作し始めた。
「ユウさん、もうすぐで松山に着きます。通過で良いですね?」
リンダ姉さんが聞いてくる。
「ああ。とりあえず、愛媛から広島に行くしまなみ海道のルートはない」
危険すぎる。
「わかりました。それでは香川に向かいます。どうするかはあと1時間くらいで決めてください」
「ああ」
さて、どうするか。
「あ、もしもし、マユミ? ちょっと面倒なことが起きた」
アヤカが電話をかけた。
『うん。こっちも今、SNSで香川の情報を見た。巻き込まれてない?』
高宮さんだ。
「まだ大丈夫。こっちは高知から帰るところだったのよ」
『そっかー。お祖父さんとお祖母さんは?』
「空き地になってた。どうやら私達の行方不明事件で東京に行ったみたいなのよ」
『あーね。それでどうするよ?』
うーん……
「今は香川、岡山ルートを歩いていくのが最有力候補ね」
『歩きかー……』
「とりあえず、こっちは大丈夫だし、何とかするわ。そっちは?」
時間的には高宮さん達も神戸に着いている頃だ。
『神戸に入った。地図アプリがまったく役に立たないレベルで変わってる。というか、すごいね……』
『日本じゃないみたい』
『知らないけど、ラスベガスってこんな感じなのかなーって思うくらいにカジノ街だね』
想像がつかんな。
「なんかすごそうね。とりあえず、わかったわ。そっちはそっちでお願い」
『りょーかい』
『ちょっと待て。ユウ、アヤカ、悪魔を頼れ』
ん? エルヴィスの声だ。
「悪魔?」
『ああ。悪魔はマナさえ払えば色々とやってくれる。なんとか協力を仰ぐんだ』
なるほど……
「わかった。ちょっと考えてみる」
『気を付けてな』
「ああ」
頷くと、電話が切れた。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
本作品ですが、誠に勝手ながら今後は週2日更新とさせていただきます。
具体的には木曜日と日曜日になります。
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