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黄金の辺境 〜スラムの孤児に転生した俺が、誰も要らない土地を継いだ日から〜  作者: 歩人


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第2話: 配給を当番にする

 二度目の朝は、寒さより先に、腹が起きていた。


 昨日は寒さで目が覚めた。今日は腹だ。昇進にしては、しょぼい順番だ。藁の湿りも天井から落ちる滴も昨日のまま。変わったのは、もう驚かなくなった自分のほうだ。


 鐘が、低く二度鳴った。


 藁の上の子供たちが、いっせいに身を起こす。誰も挨拶をしない。眠そうな顔のまま、奥の土間へ走っていく。昨日とまったく同じ光景だ。再放送かと思った。その中に、昨日いちばん小さかった幼子もいた。両手で椀を包んで肩から力を抜いた、あの子だ。今朝は、走るのが少しだけ速い。誰も気に留めない一桁の動きを、俺の目だけが拾う。一杯の汁で、子供の足が半歩速くなる。


 俺は走らなかった。立ち上がるのに昨日より時間がかかる。膝がまた頼りなく笑う。この体の長所は、しゃがむのが楽なことだけ。


 土間の隅で、シスターが鍋を抱えていた。覗かなくても量は見当がつく。昨日と同じ深さ、同じ子供の数。何も変えなければ、今日も半分が椀の底に届かない。




 争いは、昨日より早く始まった。体の大きい子が先に手を伸ばす。小さい子が肩で弾かれて土間に膝をつく。昨日見た映像と一フレームも違わない。昨日のあれは一発芸だ。仕掛けにしなければ、翌朝には消える。


 考えるより先に、足が前へ出ていた。昨日と同じ二歩。けれど昨日は反射、今日は嫌な予感を抱えた一歩だ。


 「待ってくれ」掠れた声を、また通した。「昨日と同じだ。並んでくれ。まだ食べてない子から、先に」


 誰も動かなかった。冷えた土間に沈黙が降りる。違うのは、そこに一日ぶんの「またこいつか」が混じっていたことだ。


 ひとつ、舌打ちが聞こえた。昨日、列の最後に回された、あの大きい子だ。「昨日はたまたまだろ」その声には悪意というより疲れがあった。期待して裏切られるなら、最初から信じないほうが楽だ。


 責めても腹は膨れない。「たまたまじゃなかったって、今日も見せる。それでも信じられないなら、明日も見せる」


 柄杓に手を伸ばす。シスターの手は、今日は止めなかった。半分だけこちらへ寄せて、残りはまだ自分の手に残したまま。見届けようとする手つきだ。




 配り直しは、昨日より速く済んだ。頭数を数え、汁の深さを目で測り、ひとり分の底を決める。まだ食べていない子から。小さい子から。最後の一杯まで。それでも、椀の底に届かなかった子はいなかった。


 だが、柄杓を返したとき、俺の中に残っていたものは昨日と違った。これは、まずい。


 二日続けて、俺が握った。俺が立ち上がらなければ列はまた崩れる。施しの形を変えただけの、別の依存だ。その一人が倒れたら町ごと沈む。俺はその一人で、だから死んだ。一度きりの善意は覚え書きの一行にもならない。仕組みにして、初めて明日に届く。そう言い聞かせた俺が、先に倒れた。


 壁際に、昨日の少女が、また立っていた。九つか、十か。今日も奪い合いには加わらない。腿の横で指が折れていた。一、二、三。鍋の減り方を数えている。視線がぶつかると、ふい、と逸らされる。けれど、指は折られたまま。


 ——あれだ。


 腹の底で、何かが小さく噛み合った。誰に何を頼めるか。前世で、人を見るときの基準のひとつがそれだった。あの子は、数える子だ。数える子は貴重で、たいていの現場に足りていない。




 配給が終わり、子供たちが散ったあと、その少女のところへ行った。近くで見ると、痩せ方の質が違う。骨に芯が残っている。


 「さっき、数えてただろ」


 少女は答えなかった。指だけが止まった。図星を指された子の、止まり方だった。


 「咎めてるんじゃない」俺は隣にしゃがんだ。「合ってたよ。今日は十三人。おとといも十三人。毎朝それを数えてるんだろ。誰にも頼まれてないのに」


 少女の薄茶の目が、ようやくこちらを向いた。警戒の色。それから、ほんのわずか、戸惑い。横から数え返されていた居心地の悪さは、想像がつく。いや、言い切るのもやめておく。この子のことは、まだ知らない。


 「……数えると」少女は小さく言った。声が、思っていたより低い。「合わないとき、わかる。誰かがずるしたとき」


 その一言で、十分だった。合わない勘定が、ただ気持ち悪い。前の人生で、こういう人間を探して見つからなかった。


 「名前は」


 「……ティナ」


 「ティナ」その名を一度、口の中で転がした。鉛筆も帳面もないから、覚える先は頭の中しかない。「明日から、数えるのを頼んでいいか。鍋が来たら頭数を数える。それを俺に教えてくれ」


 ティナはすぐには頷かなかった。子供が、子供に仕事を頼む。その奇妙さを測る目だ。それから、ぽつりと言った。「……何なの」


 純粋な問いだった。まともに答えようがない。答えられないまま、子供の喉のいちばん軽い声で言った。


 「数えるのが好きな、変なやつだ。ティナと、同じだよ」


 ティナの口の端が、ほんの少しだけ動いた。笑った、というには足りない。けれど、警戒の色が一段だけ薄まった。それでも、すぐには指を動かさなかった。俺が鍋のほうへ目をやってからだ。見られていないと確かめてから、指がもう一度、小さく折れた。一、二。隠す手間を省いただけかもしれない。それでも、昨日までより少しだけ。




 その日から、配給は少しずつ形を変えていった。いきなり全部は変えない。一度に組み替えた仕組みは、必ず元へ戻る。何度も失敗した。一日にひとつだけ。


 まず、数えるのをティナに渡した。鐘が鳴るとティナが鍋の前に立ち、頭数を数える。十三のときもあれば、誰かが熱を出して寝ていれば十二だ。数が変われば、ひとり分の底も変わる。それを俺に言い、俺が柄杓を握る。


 次の日、柄杓を、年嵩の子に渡した。昨日舌打ちをした、あの大きい子だ。


 「これ、頼んでいいか」


 その子は柄杓を見て、それから俺を見た。罠かと疑う目だ。昨日まで列の最後に回されていた子に、今日は配る側を渡す。前世で割を食ってきた部署に面倒な役を回したときと同じ目だ。


 「ずるい配り方をしても、すぐ分かる」俺は言った。「ティナが数えてるからだ。自分の椀を多めにすれば、底が一人ぶん足りなくなる。それは隠せない。だから配る側に回るのが、いちばん得なんだ。配る側になればもう弾かれない。悪い話じゃないだろ。どうだ?」


 その子はしばらく柄杓を握ったまま動かなかった。罠を探す目で、俺と、ティナと、待つ子供たちを見た。


 ティナが口を開いた。「……十三人」数だけを、誰に言うでもなく。それが合図のように土間に落ちた。


 その子の喉が、舌打ちをひとつ鳴らした。けれど今日は、その音のあとで柄杓が鍋へ降りた。まだ食べていない子から。小さい子から。ぎこちなく、順を守って。


 途中で、その手が自分の椀の上で迷った。柄杓がほんの少し傾いて、汁が多めに落ちかける。一杯。昨日まで椀の底に届かなかったのはこの子だ。多めに取りたい理由なら痛いほど分かる。だが、その手はすぐには戻らなかった。多めに取った椀を前に置いたまま、しばらく動かない。


 止めたのは、誰の声でもなかった。鍋の前に並んだ頭数だ。多く取れば、列の末で底が一人ぶん足りなくなる。ティナが数えている。すぐ分かる。——その子の目が、ふっとティナのほうへ動いた。ティナはその手元を、ただ見ていた。咎める顔ではない。数が合うか、合わないか。それだけ。


 舌打ちの子の喉仏が一度上下した。それから、多めに取った椀から柄杓で一杯ぶんを鍋へ戻した。手つきはひどくぎこちない。誰も何も言わなかった。数が、すべてを言っていた。


 翌朝、舌打ちの子が鍋の前で俺を見た。「今日も、おれが配るのか」確かめる声だった。昨日の今日で、まだ信じきってはいない。「ティナが数える。君が配る。順は、昨日と同じだ」そう返すと、その子は柄杓を見て、握った。頷きはしない。ただ、置いて帰りはしなかった。


 三日目には、柄杓を握る役を当番にした。壁の木板の隅に、炭で印をつけた。誰が、いつ配ったか。明日は誰か。識字も算術も知らない子供でも自分の番を間違えないよう、印はただの線と点にした。羽根ペンも罫線もない、煤けた木の板と炭のかけらだけ。それでも、入りと出を突き合わせてこぼれを見つける骨は、まったく同じだった。


 すんなりとは、いかなかった。次の朝、その印がひとつこすり消されていた。誰が、とは言わない。言わなくても、数が言う。その日、ティナの数えた頭数と配られた椀の数が、ひとつ合わなかった。けれど、それで終わりにはならなかった。次の朝も、別の印が爪の先で薄く擦られていた。一度で観念するほど、飢えた腹は素直じゃない。「また合わない」ティナが低く言った。その次の朝も、消えかけた印があった。数が合わない朝が、三度続いた。


 四度目は、なかった。消しても無駄だと気づくのに、それだけかかった。消したところで、ティナの口から「合わない」が出る。そのたび、列の全員がその子を見る。叱る声も罰もないのに、その視線がこたえる。


 本当は、三日でも速すぎる。前の人生なら、こういう仕組みは根づくのに季節をいくつも要した。それでも、ここでは飢えが季節を待ってはくれない。だから走った。やってはいけないと言い聞かせたことを、必要だからやっている。




 四日目の朝、シスターが、その木板の前に立っていた。炭の印を長いこと見ている。何が起きているのか確かめる背中だ。


 「これは、あなたが」彼女は振り向かずに言った。


 「俺が、つけた」俺は答えた。「字じゃない。誰が配るかの印だ。今日はあの子、明日はその次。順番が見えれば揉めない。揉めなければ、こぼれない」


 シスターはようやく振り向いた。落ちくぼんだ灰色の目が俺を見下ろす。叱る目でも褒める目でもない。何かを勘定し直す目だった。


 「四日です」彼女は言った。慰めの前に、必ず事実を置く人だ。「四日のあいだ、椀の底に届かなかった子はひとりもいません。わたくしがここで十五年やって、できなかったことです」


 その声に感心も驚きもない。できなかったことの輪郭を、指でなぞる置き方だ。


 俺は、首を振った。「あなたのせいじゃない。鍋が小さいだけだ。量は一滴も増えてない。順番を変えただけだ。十五年こぼれるのを見ながら、それでも一人も死なせなかったんだろ。——それは、俺にはできなかったことだ」


 言ってから、これは前の俺の言葉だ、と気づいた。子供の喉で言うには重すぎた。シスターの目が揺れる。いちばん言わなくていいときに、いちばん本当のことを言ってしまう。


 彼女は何か言いかけてやめた。代わりに、痩せた手で俺の頭に一度だけ触れた。確かめる手。けれど、その指は昨日より、ほんの少しだけ長く留まった。


 「あなたは、飲み込みが速すぎる」彼女は静かに言った。問い詰める声ではなかった。「七つの子が四日でこんなことを」


 そこで言葉が切れた。どこで覚えたのか——その問いが喉まで来て止まったのが、横顔で分かった。訊いたところで、この子は答えない。訊くより見ているほうが早い。そう決めた口の閉じ方だった。


 答えずに済んだことに、俺は少しだけ息をついた。前世が地方公務員で、過労で死んで、気づいたら藁の上にいました——どう翻訳しても通じる言葉にならない。彼女は鍋を片づけに行った。空になった底を指で一度なぞる。誰か一人ぶん足りなかったその底に、もう欠けがなかった。彼女はそれを長いこと見て、俺のほうは見なかった。見ないことで、何かを認めた背中だった。




 昼間、ティナが隣に座った。膝を抱えたまま、こちらを見ずに。「なんで、あいつに配らせたの。昨日まで、いちばんずるかったやつなのに」


 いい問いだった。前世でも、こう訊いてくるのは使える側だった。


 「ずるいやつだから、配らせたんだ」俺は言った。「いちばんずるいやつが損する側に立てば、もうずるは起きない。あいつが配る側。ティナが数える側。ふたりが組めば、俺がいなくても崩れない。——そうしたかったんだ」


 ティナはしばらく考えていた。数を追う据わった目で。「……いなくても」


 「そうだ」


 「いなくなるの」


 子供の問いだった。けれど、まっすぐ、いちばん痛いところを突いた。


 俺はすぐには答えられなかった。昨夜、暗がりで聞いた声が耳の奥でまだ鳴っていた。——春までに、また何人か減らされる。次は、誰だろうな。今朝の、あいつだろ。柄杓を取った。誰かが減らす順を決めている。そして俺は、その帳面のいちばん上に書いた自分の名を、この四日でさらに濃くなぞっていた。配給に手を入れる子供は、目立ち、扱いにくく、身寄りがない。残す価値より、外す理由が立てやすい。飢える子を減らそうと動くほど、減らされる側へ近づく。


 けれど——それを、この子に言う必要はなかった。


 「いなくなるかもしれない」俺はできるだけ軽く言った。子供の喉の、いちばん軽いところで。「だから、今のうちに渡しておくんだ。数える役を。俺がいなくてもティナが数えてれば、崩れない」


 ティナは長いこと黙っていた。膝を抱えたまま。それから、低い声で言った。「……勝手だね」


 責める響きではなかった。手渡されたものの重さを量る声——そう聞こえた、と思いたかっただけかもしれない。出会って三日の子の声を、そこまで読めるはずもない。


 「ああ」俺は笑った。今度は、ちゃんと笑えた。「勝手なんだ。昔から、これだけは直らない。前にも一回しくじってる」


 ティナは、しくじった、の中身を訊かなかった。訊かないことが、たぶん、この子なりの優しさだった。前世で、俺はそれを見落とした。




 夜。火の落ちた土間に、また藁の冷たさが戻ってきた。背骨の裏側から上がってくる、あの底冷え。けれど今夜は、その隣に、別のものがひとつだけあった。うまく言葉にならない。一杯の汁を四日続けて配り直すと胸に生まれる、小さくて温いもの。


 暗がりで子供たちが眠っている。今朝、走るのが少し速かった幼子も、藁の上で薄い肩を上下させている。その肩が昨日よりほんの少しだけ丸い。腹に届いた子の肩は、こういう形で眠る。前の俺が見たかった肩だ。見られないまま机で力尽きたそれを、いま子供の目で四日続けて見ている。


 壁際で、ティナがまだ起きていた。暗がりの中で指を折っている。一、二、三。眠る子供の頭数を数えていた。今度は、隠しもせずに。あの指はもう止まらない。一度数え方を覚えた子は、やめられない。前の俺がそうだったように、やめられないものを、もう一人ぶんこの世界に増やしてしまった。


 俺は目を閉じた。閉じても頭は止まらない。明日、何を渡そうか。柄杓の次は、火の番だ。誰が夜のあいだ火を絶やさないか。それも当番にできる。一日にひとつ。崩れない順で。——考えている自分に気づいて、また少しだけ苦笑が漏れた。一度死んだのに。


 俺の武器は、剣でも魔法でもない。読んで、数えて、書いておく。それだけだ。今夜も、書く先は頭の中だけ。持っていないものを数えても減るだけだ。今日、こぼれなかった子の数だけ、数えておく。


 外の路地で、また、誰かが歌っていた。昨日と同じ節だ。粗い旋律。けれど、言葉ははっきりと、滴の合間を縫って入ってきた。


 ——女神に見放された谷がある。地図にない土地がある。行った者は、誰も還らない。


 歌い手はまた、最後に低く付け足した。あの名は、口にするな、と。


 昨夜は、それがただ恐ろしくて、少しおかしかった。今夜は違って聞こえた。捨てられた土地と、捨てられる子供。その二つが別々の場所であるはずがない——その見立ては昨日と変わらない。変わったのは、その土地へ運ばれる自分を、今夜はもう恐ろしいともおかしいとも思わなかったことだ。


 還らない、と歌は言う。けれど、誰が還ろうとしたのか。それを歌は言わない。人が去り、地図から名前が薄れていく土地を、前の俺は何度も見送った。誰か一人でも残って手を入れる者がいれば、と。——今は分からない。


 ただ、ひとつだけ、昨日と同じところに引っかかった。捨てられた土地は、ふつう忘れられる。なくなったことすら気づかれない。ところが、この谷は違う。わざわざ「口にするな」と歌い継がれている。昨夜の引っかかりが、今夜も尾を引いた。その差が何を意味するのかは、まだ分からない。頭の隅にもう一行だけ書きつけた。


 藁は、まだ冷たい。けれど、体の内側から湧いていたあの別種の冷たさは——昨日より、もう一段だけ薄まっていた。たった四日、汁を配る順を決めただけのことで。


 炭の線と点だけでは、いつか足りなくなる。子供が増えても当番が込み入っても、線と点では追いつかない日が来る。そのときに要るのは、字だ。——次は、字だな。閉じた目の裏で、頭がもう、その先を勝手に書きはじめていた。


 壁の木板に、炭の印がいくつも並んでいた。誰が、いつ、配ったか。誰が、数えたか。明日は、誰か。その印のひとつを、暗がりの中で、ティナの指がそっとなぞっていた。消えないように、上から、もう一度濃く。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


第二話です。第一話で配った一杯の汁を、今度は「仕組み」に変える話でした。


ロウの武器は、剣でも魔法でもなく、ただ「順番を決めて、仕組みにする」こと。だから二話目で書きたかったのは、派手な逆転ではなく、一度の善行が、どうやって誰がやっても回る形になっていくか——その地味な手順そのものでした。彼が真っ先に手放すのが柄杓だ、というところに、彼の核を込めたつもりです。一人で抱え込んで潰れた前の人生を、彼はもう繰り返したくない。だから、ティナに数を渡し、いちばんずるかった子に配らせる。


そして、その正しい一手が、彼自身を口減らしの筆頭にさらに押し上げてしまう。善いことをするほど、立っていられる場所が狭くなる——この皮肉は、最後まで彼につきまといます。


シスター・メルは、ロウに驚きません。ただ、自分が十五年できなかったことの輪郭を、静かになぞるだけです。彼女が一度だけ「飲み込みが速すぎる」と言い、答えを聞かずに鍋を片づけにいく——その背中を、いちばん書きたかった場面でした。


夜の歌は、今夜も同じ一節を繰り返します。ロウの耳には、昨日と少し違って聞こえはじめます。忘れるのには手間がいらないのに、なぜわざわざ隠すのか——その引っかかりだけ、頭の隅にもう一行。理由は、物語の本当の終わり際まで取っておきます。


次話、メルがロウに、文字と数を教えはじめます。連載でじっくり育てる作品です。評価・ブックマーク・感想をいただけると、次を書く励みになります。

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