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異世界チーレム勇者はゼロ歳児!?  作者: まさな
第一章 今やれること
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第十一話 王都

「見えたぞ。アレが王都だ」


 パパグレンが言い、馬車から降りてみると街道の向こうに大きな街並みが見えた。

 石造りの家々が立ち並び、視界の端から端までずっと続いている。

 街並みの向こうには城も見えており、これも思った以上に大きい。

 いくつもの尖塔がそびえ立っているが、あれは物見用としての役割もあるんだろうな。


 ここがプラタナス王国の中心、王都プラティナだ。


 ヴィルヘルム領から北西、馬車で六日の道のり。

 ちなみに、ここまですべて野宿。途中、街もあったのだが、宿代がもったいないとのこと。

 ……アレだな、早くヴィルヘルム領の税収を上げたいもんだ。


「じゃ、街に着いたら、まずは宿を取ろう」


「ええ」


「ああ、これでようやく! ようやく湯浴みができます!」


 花の乙女、リーナが街道の向こうを見て心から喜んだその時――


「ん?」


 左右の木の後ろから、むさ苦しい戦士風の男達が顔を出した。皆、武装している。


「なんだ、お前ら? お出迎えって訳じゃ無さそうだが……」


 パパグレンも男爵で一応貴族だけど、そこまでの地位じゃないよね。


「よしっ、護衛は三人だけだ、野郎共、やっちまえ!」


「「「 応! 」」」


 柄の悪い戦士達がその声を合図に剣を抜いた。


「ああん? チッ、なんだ、盗賊かよ。サラ、弓矢持ちが二人いる。一応、気を付けとけ」


「ええ、まぁ、気は抜かないで行きましょう」


 盗賊が二十人ほど出て来たが、パパンもママンも随分と落ち着いている。

 賊の一人を鑑定してみたが、レベルは13だ。これならダイアウルフやキラーベアの方がよっぽど危険度が高いし、確かに気の抜けそうなレベルだな。


「よし、終わった」


 有り得ないスピードで、グレンが盗賊全員を片付けてしまった。

 テレポートしてたよな、今。あと分身も。

 ……三秒と経ってないんですけど。


「くっ、お役に立てず、申し訳ありません、お館様」


「ああ? いいんだよ、リーナがそこにいるから、オレも守りを気にせず前に出れたんだからよ。それに、お前一人でもこいつら相手ならなんとかやれたはずだ」


「そうでしょうか……」


「気にするな、リーナ、お館様より早く動ける奴なんてヴィルヘルムに一人もいやしないんだから」


「そうそう、ラントスの言う通りだぞ。じゃ、行くぞ」


「パパ、死体はあのままでいいの?」


 エリオットが後ろを見て聞く。


「あー、良くはないが、面倒臭い」


「ええ?」


「大丈夫よ。王都に着いたら、私が兵士に報告しておくわ」


 サラが言う。

 俺達は外門をくぐり、中に入った。

 

「やれやれ、八人で800ゴルドも関税を取られたぞ」


 手続きしたグレンが愚痴混じりに言う。


「ええ? そんなに? 倍になってるのね」


「ああ。たまに来るオレ達はまだいいが、アレじゃ通えない奴も出て来そうだな」


「そうね……」


 入ってすぐの所の宿に入り、いったん荷物を部屋に入れた。


 


「よし、今日はもうどこにも行かないから、王都見物にでも繰り出すか」


 グレンが言う。


「うん!」


「グレン、私は先に兵士に、さっきの盗賊を報告してくるわね」


「ああ」


 俺は浮いていると騒ぎになりそうなので、ローブを被って行く。


「レイ様、それホント、不気味です」


『うるさいぞ、リズ』


「ま、王都にはいろんな奴がいるからな、そんなには目立たないだろう。じゃ、行くぞ」


「「「 はい !」」」


 宿の外に出て、大通りを歩く。

 さすがに、うちの街――ウルフガーデンとは比べものにならない。

 まず、屋台がいくつも並んでるし。

 ウルフガーデンにはそんなの一軒も無いからな。


 建物も丸太を組んだ木造などではなく、石を石膏か何かで接着させた石造りの建物が並んでいる。

 二階建てや三階建ては当たり前。

 うちはとことん、田舎だったんだなぁ……。まあ、分かってたけど。


「旦那様、団子、団子!」


 リズが屋台の一つを興奮して指差す。


「分かった分かった。じゃ、全員分のをオレ様が買ってやろう。感謝しろよ」


「あざーっすっ!」

「「 ありがとうございます 」」

「うん、ありがとう、パパ!」

「あいあい」


「親父、団子を七串、頼む」


「はいよ。14ゴルダだ」


「12に負けてくれ」


「仕方ないな。いいよ」


「よし!」


 団子が皆に行き渡る。俺も念力で受け取る。


「ん? そういえばレイは食っても大丈夫なのか?」


『たぶん、オッケー』


 団子は別腹だもの。


「まあいいか。死にゃあしねえだろ」


「あいあい」


 食べてみたが、もちもちして甘い団子だった。中には何も入っておらず、シンプルな団子だ。

 いいね、母乳も美味しいけど、団子も良い。


「美味しー」

「美味しいですね」

「おう、こりゃうめえな」

「美味しい!」


 みんな大満足。


「じゃ、ラントス、お前はこいつらを適当に案内してやってくれ」


「はい。お館様は?」


「おう。ちょっくら、野暮用だ」


「はあ……。知りませんよ、後で奥様に叱られても」


「べっ、別にやましいところに行くわけじゃないぞ! 何を勘違いしてるラントス、けしからん!」


 動揺しまくりだな親父。娼館にでも行くつもりか? まあいいけど。


「ならいいですが」


 ラントスもそこまで細かいことは言わないようで、一番口うるさそうなリーナも行き先の予想が付いたか、顔を真っ赤にして恥ずかしそうに黙り込んでいる。


「ラントス、パパはどこに行ったの?」


 純真なエリオットが純粋な疑問をぶつける。


「んー、奥様に叱られそうな所ですね」


「そう。困ったパパだなぁ」


「ええ。じゃ、中央広場を見に行きましょう。やっぱり王都と言えば、あの噴水は見ておきませんと」


「うん!」


 さすがは王都と言うべきか、行き交う人々も洗練されていて、おしゃれでカラフルな服装の者が多い。平民と思われる者でも腕輪などのアクセサリーを身につけている。

 ただ、そんな中、みすぼらしい布きれを被っただけの子供がトボトボと裸足で歩いていた。

 耳はネコミミだ。しっぽもちゃんとあるが、薄汚れている。

 エリオットもその子供に気づいたようで、ラントスに聞いた。


「あれは?」


「獣人の奴隷でしょう。もう少し、身なりにも気を遣ってやればいいものを、主人がいないのかもしれませんね」


 ラントスも顔をしかめて同情したように言う。


「そう。ラントス、靴が見たいんだけど」


「ああ、はい、あそこに靴屋がありますよ、エリオット様」


 皆で靴屋に入ったが、現代日本の靴屋とは違い、靴はほとんど並べられておらず、狭い。

 奥で職人が靴を作っていたが、ここはオーダーメイドが基本のようだ。


「ラントス、お小遣いで一足、買って良い?」


「もちろんですとも。奥様からお金も預かっていますし、お好きなのを選んで下さい。明日は城に入りますし、質の良いのを選びましょう」


「うん、だけど、おじさん、コレ下さい」


 エリオットは床に並べられていた量産品らしき安物を選んだ。


「はいはい。でも、従者付きのお坊ちゃんなら、オーダーメイドでもっと良いのが作れますよ?」


「それは別に。とにかく、早くそれを」


「はいはい。30ゴールドになります」


「じゃ、これね。ありがとう」


 お金を渡すなり、エリオットが店の外にダッシュしていく。

 

「あっ、エリオット様! リーナ、追いかけてくれ」


「はい」


 俺も追いかけてみたが、やはりエリオットはさっきの子に靴を渡していた。


「これ、あげる」


「……」


 黙り込んだその子は胡散臭そうにエリオットを見つめた。


「エリオット様の施しです。素直に受け取ったらどう?」


 リーナも言うが、上から目線だよなぁ。


『二人とも、ちょっと。本人が欲しがってないのに、押しつけても良くないよ』


「ええ? でも……」


『いいから。行こう』


「レイ様、靴は? 返品しますか?」


『いや。誰も要らないんだから、そこに捨ててけば?』


「ええ?」


「うん、そうだね。じゃあ、誰も要らないから、捨てていこう」


 エリオットがその場に靴を置いて離れる。

 ちらっと後ろを見たが、さっきの子がサッと靴を拾っていた。


「上手く行ったようですね」


「そうだね。じゃ、靴屋に戻ろう」


 靴屋に戻り、エリオット達は新しい靴を買った。さすがに明日が就任式だと仕上げの時間が足りなくてオーダーメイドはできないが、それなりに良い靴を買えた。

 俺だけ、買わなかったけど。

 浮いてるから、靴、要らないんだよな。サイズも厳しいし。


 ついでに服屋にも寄り、兄貴は茶色い皮のマントを購入した。


「エリオット、ひょっとしてドラゴンとやる気なの?」


 シルフィがニヤニヤしながらからかう。


「そんなんじゃないですよ、お師匠様」


 はにかんでエリオットが答えるが、半分本気で買ったんだろうな。


「まあ、ドラゴンは無理にしても、雨よけにも使えますし、野宿でも役立ちますから、良い買い物だと思いますよ」


 ラントスも笑って言う。


「じゃ、次は中央広場に行きましょう」

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