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異世界チーレム勇者はゼロ歳児!?  作者: まさな
第一章 今やれること
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第六話 特産品

 特産品とは、早い話がその地方だけで生産できる品だ。

 別に何を作ってもいいのだが、その地方の状況や地理に合ったものだと採算も良い。


 ヴィルヘルムはほとんど何も無い地域だ。有るのは麦畑と原っぱと小さな森だけ。

 だが、さすがに板くらいはあるからな。


 その板をちょいと加工して付加価値を付けてやった。


 お色気薬師のニーネットに買い取ってもらったが、アイツ、金貨十枚をポンと出しやがった。薬師にしては、相当稼いでいるな。まあ、何か違法なことに手を染めていたら、いずれ摘発して処分しよう。今は後回しだ。


「ゲフ」


 今日も朝の美味しいおっぱいをいっぱい飲んだ。げっぷもちゃんと出た。


 さて、シルフィの朝稽古に付き合う前に、リズに指示を出しておくか。


 チリリン。


「ふああ。お呼びですか、レイさわ~…あふ」


 そばかすメイドがあくびをかみ殺しながらやってきたが、たるんだメイドだ。


『今日も板を仕入れてくれ、リズ。量は同じで良いが、もうちょっと質の良い物を頼むぞ』


「エー、またですかぁ?」


『お前の借金は誰が立て替えたんだ?』


「それはっ、レイ様でありますっ!」


『よろしい。分かったら、忘れないうちに商人に会ってこいよ』


「へーい……」


 剣の朝稽古を済ませ、昼のおっぱいとお昼寝をした後、午後はブラン先生の魔術講義だ。




「では、講義を始める前に、今日はレイ君に一つだけ聞いておきたいことがあるのです」


『何でしょう?』


「あなたは最近、この街で魔術書を売っていませんか」


 おや、人付き合いの無さそうなブランにしては耳が早いな。いや、魔導師だから、ある意味当然か。


『ええ、ちょっとお小遣い稼ぎに』


 隠してもいずれすぐバレるだろうから、言っておく。


「そうですか。なかなか考えたものですね。ただ、魔術書が売れると、魔法を教える魔導師の需要が減ります。同業者からのやっかみには気をつけて下さいね。もちろん、私は競合していないので、問題はありませんが」


『気をつけます』


 つっても、うちの領地に魔術士なんていたか?


「それと、これは神官の方が私に問い合わせてきたので知ったことですが、回復系魔法は神殿の専売特許です。許可を得たなら話は別ですが、そちらには手を出さない方が賢明だと思いますよ」


『ああ、そういうことでしたか。ええ、考えておきます』


 神殿の利権もあったか。面倒なことだ。できれば領主側として許可を得たいが、ママの職場のヴィルヘルム神殿はともかく、総本山の大神殿が相手では、辺境の男爵ごときでは話にならないだろう。いったん、諦めておくかなぁ。でも、使い捨ての回復魔法のスクロールが一番需要があるし売れるんだが。


「へえ、そんなことをしてたんだ。凄いね! レイは」


『兄さんもいずれは思いついていたと思うけどね』


 賢い兄貴だからな。ブランから一通りの魔術を教わったら、それを活用する方法を考えたことだろう。

 ただ、ブランはそれなりに高度な魔導師ではあるが、特産品を売り込めるというレベルではない。

 俺のオリジナル魔法を混ぜることによって、希少価値が出る。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 さて、特産品だが、別に一つだけという制限があるわけでは無い。

 ただ、アイディアはあっても、もう一つの方は上手くいっていなかった。


『くそ、合成できないな……

魔力が足りないのか? それとも、何か特殊な条件があるのかな』


 独り言ならぬ、独り念話をつぶやく俺だが、魔石の合成は莫大な富を生み出すと、すでに分かっている。

 この世界では魔物から取れる魔石を、魔道器の燃料として加工している。それは魔法を使えない一般人にも広く使われていた。特に明かりの魔道器は田舎の家でも一つくらいは置いてあるのが普通だ。ろうそくと違って火事の心配も無ければ、明るさもずっと良い。持ち運びも簡単。ただ、多少、魔石と魔道器の値段は張るが。


 魔道器作りにもいずれ取り組んでみたいが、魔石の仕組みを良く理解していないと、エネルギーを活用できない。その勉強も兼ねて……と言うところだったのだが。


 さっぱり仕組みが分からん。

 魔石は、【魔法知識 Lv5】のスキルや【常識 Lv3】【雑学 Lv3】、この辺のカテゴリにも入っていない様子。

 実に興味深い。


 いったい、魔石とは何なのか?


 魔道器を動かせるのだから、魔法と密接に関係しているのは疑いようが無い。

 だがしかし、魔法とは明確に違うのだ。


 実際、魔術士は魔石を持ち歩いているのが普通だが、普段の呪文でそれを使ったりはしない。いざというときに、魔力切れの補給や、大魔法でここぞと言うときに補助的な道具として使っている。


 魔力の素であって、魔法術式ではない?


 ふむ。


 少し見えてきた気がするが――。


「レイ、何をしているの?」


『ああ、兄さん』


 エリオットが部屋に入ってきた。彼は、俺の腹の上に置いてある魔石にすぐ気がついた。


「魔石で何か新しい魔法を実験?」


『そんなところ。でも、上手くいかないや』


「そう。ブラン先生に聞いてみたらどうかな?」


『もう聞いたけど、自分で考えてみなさいってさ』


 俺としてはすぐ答えが欲しかったのだが、彼としては家庭教師としての務めがあるからな。それに、俺に考えさせるということは、俺が解答に自力で辿り着けると予想しているのだ。まあ、一年後にまだ答えが見いだせていなかったら、頭を下げて解答を教えてもらうとしよう。


「そっか。僕も考えてみたいから、教えてよ」


『いいけど、魔石の合成方法だよ?』


 さすがに、初級魔術を習い始めたばかり初心者には難しかろう。エリオットは俺と違って、魔術系のスキルは一つしか持っていない。その一つも【魔法抵抗】で、知識系ではない。


「ああ、大きくして高値で売るんだね?」


 だが、こういうところは察しがいい。


『うん』


「くっつけたくらいじゃ、ダメなんだよね?」


『圧力を掛けたり、万力も使ってみたけど、ダメだったよ。力を加えても、それだけじゃ、先に魔石が割れちゃうから』


「じゃあ、こうしたら、どうかな。魔力を片方から吸い出して、もう片方に入れるの」


『それは……あ!』


 もう試したと言おうとして、ハッと俺は気づいた。


 そう、魔石に魔力を込める実験はもうやったが、魔石の魔力を移し替える実験はしていない。

 魔石は、魔力の結晶なのだという思い込みがあった。

 

 これは単なる器で、魔力そのものでは無かったのだ。


 事実、魔力を使い切った魔石は、消えるわけでは無く、使いカスとしての石ころが残る。

 それはまた魔力を込めれば使える。

 ただし、小さな魔石の使いカスなど、誰も欲しがらない。魔力を込めるには、高度な技術と魔力のロスを覚悟しなければならず、小さな器では労力や採算が合わないのだ。


 小さな魔石には、小さな魔力しか込められない。


 これが俺が知っている魔法知識の原則の一つだ。

 ただし、もう一つの原則がある。


 質の良い魔石には、より多くの魔力を込めることができる。


『兄さん! 凄いよ。今すぐ、質の良い魔石を買いに行こう!』


「ええ? だって、今はもう夜だよ? ママがなんて言うか」


 エリオットがそれを想像したのか、緊張した顔で身震いする。


『じゃ、ママに許可を取ろう』


「ええ? なるほど。じゃあ、僕も頼んであげるね」


 友よ。

 やっぱり持つべきは味方だな。

 俺が領主にならねばと思った時もあったが、エリオットが領主を継げばヴィルヘルム領は安泰だ。俺は彼の補佐で充分。


 さあ、ママンをきっちり説得してやるぜ。


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