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異世界チーレム勇者はゼロ歳児!?  作者: まさな
第一章 今やれること
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第五話 仲直りと新たな試練

 どこだ? ここは?

 グレンに奥義を浴びせられたと思ったら、360度真っ白な世界に飛ばされた。


 あれか、ひょっとしてこれがあの世とかいう――


「いいえ、ここはこの世とあの世の狭間にある世界。あなたはまだ死んではいませんよ、レイ」


 澄んだ女性の声が意識に直接響いてきた。


「アンタは誰だ?」


 おっと、普通に発音できた。どうやら今の俺は精神体のようだ。体も大きくなってるし。裸なのがイヤン。


「私は慈愛と豊穣、そして癒やしを司る神ミルスです」


「なるほど」


 姿は見えないが、気配がどことなくあのジジイに似ている。

 神とも言っているし、この気配は神で間違いない。

 となると、ここは下手に出ておいた方が良いだろう。

 相手はサラが回復呪文で祈りを捧げていた相手だ。となれば、俺の回復にも何らかの影響があるだろう。

 あと、とりあえず、前を隠しておかないと。


「心配しなくとも、ここであなたがどんな態度を取ろうとも、私はサラの祈りに応じますよ」


 ママンの日頃の行いに感謝だな。いや、あの女、時々、凄いことをやってるんだが、それはいいのか。


「子供に全力全開というのは私もどうかと思いますが、彼女も考え有ってのことです」


「いやあ、何も考えてねえだろ」


 おっと、敬語敬語。


「いいえ、サラはあなたのことを第一に考えています。今もあなたの回復を必死に祈っていますよ。さて、彼女達を心配させるのは私の本意ではありません。手短に済ませましょう」


「何を?」


「レイ、あなたは勇者となる人間です。いえ、私が勇者候補として選んだ人物と言った方が分かりやすいですか」


「……」


「あなたはこれより数々の試練を乗り越え魔王を倒――」


「ちょっと待ったぁー! あのー、そのありがたい勇者認定ですが、辞退させてもらっても良いでしょうか」


 面倒だし。


「残念です。では、他の者に頼むとしましょう」


 おお、断れた。

 

「ただ、あなたには近いうちに一つの試練が訪れます」


「エー? 今、断ったよね?」


「いえ、これは私の意思とは全く関係なく起こってしまう現象なのです。アイゼンウルフ家には近いうちに、金銭トラブルに見舞われる、そんなオーラが私には見えます」


「あー、まあ、うちは貧乏だし」


「いえ、そういうレベルではなく、お家お取り潰し級の危機のはずです」


「ええっ?」


「ですが、そうですね……最低でも一千万ゴルド、一億ゴルドを用意しておけば安泰でしょう」


「一億? ちなみに、うちの領地の今の税収と、人口は…」


「現在は91万2741ゴルド、人口は2711人ですね」


 少なっ!

 というか、パン職人の平均月収が300ゴルド程度だから、年収は3600ゴルド。

 課税ができる成人年齢の人口が6割の1600人だとして、全員の年収をひっくるめても576万ゴルドにしかならない。その100パーセント全額を税金でぶんどったとしても、全然足りない。人口を10倍の6万人にして、ようやく一億だ。

 それも100パーセント課税は不可能だから、五公五民にしたって12万人も人口が必要になってしまう。

 人口十万と言えば、この国の大侯爵が治めているような主要都市レベルだ。【常識】


 たった一年で税収を大侯爵以上に増やせと?


「どーやっても無理だと思うんですが」


「いいえ、あなたは誰もが不可能と思うこの偉業を87パーセントの確率で成功させます。残りの13パーセントの失敗は、グレンとリズがギャンブルで負けてしまったケースだけです」


 税収UPだけなら100パーセントの成功確率か。


「なるほど。じゃあ、まずはグレンとリズをサクッと」


「それはダメですよ。その場合はエリオットがあなたの敵となり、あなたは72パーセントの確率で殺されてしまいます」


 兄貴、結構手強えな。

 

「うーむ」


「もう一つ、伝えておきたいことがあります」


「えぇ?」


 トラブルはもう勘弁。

 

「この話はトラブルではありません。いえ、彼女にとっては深刻なトラブルなのですが……あなたに強く関わりを持つ運命にある赤ん坊がいますが、来月、命に関わる危機に遭遇するオーラが見えました。お尻に星形のほくろがある赤ん坊と出会ったら、助けてあげて下さい。そうすればきっとあなたに良い運気が巡ってくるはずです。お金も得られるでしょう」


「はあ、お尻に星のほくろの赤ちゃんね」


 まあ、出会ったら、助けてやろうか。


「では、あなたに幸運がありますように」


「あっ、ちょっと、待っ――」


 急速に去って行く気配に、俺は慌てた。

 どうしてこう神様って奴は時間に余裕を持たせないのか。




 急に視界に色が付き、サラの金髪が見えた。


「どうか、神様――」


「おい! レイが目を覚ましたぞ!」


「ああ、良かった、レイ、うう」


 抱きしめられた。

 鬼の目にも涙――なんて言ってる場合でも無いな。


『ママ、もう大丈夫だから』


「ええ。でも、グレン、帰ったら説教があります」


「うぐ、いや、悪かったって」


「ダメです。子供に奥義を放つなんて親がありますか!」


 ママンには自分も全力全開だったくせに、と言いたい。


「喧嘩はダメだよ、パパ、ママ。もっとうちは仲良くしないと」


 エリオットが良いことを言う。


「はっ……そうね。元はと言えば、家族の仲違いがこういう結果になったのだし」


「それもそうだな」


 こうしてグレンの恥ずかしいお痛は一件落着となった。

 それはいいのだが……女神ミルスの啓示や魔王がどうのこうのと言う話は、まだサラとグレンには黙っておくか。

 騒がれても面倒だし、俺の予想だと候補になりかけたというだけで100パーセント神殿の連中がしゃしゃり出てくる。

 神殿や王宮の手助けがあれば、一億ゴルドの課題達成も楽にはなるだろう。

 だが、俺がスパルタ教育を受けるのでは面白くない。


 それにしても、ジジイ、俺は勇者や魔王なんて望んでいないんだが?

 ま、勇者になって活躍すればモテモテなんだろうが……。

 数々の試練ってヤツが要らないなあ。


 創造神(ジジイ)にコンタクトができないかと祈りを捧げてみたが、やはりジジイはシカトを決め込むらしい。ま、いいさ。




 翌日。俺の初手は――


『パパ、話があるんだけど』


 パパンの部屋に向かい、執務机の上で「てやー!」とか言いながら怪獣の木彫りフィギュアで遊んでいたパパンに話す。


「ん、なんだ、レイ」


『今日からギャンブルは足を洗ってね』


「なにっ!? な、なぜそれを。俺があのカジノに出入りしているところを見たのか?」


 ガタンッと椅子を動かして動揺したグレンは、ギャンブルをやりまくりのようだ。困ったパパンだなぁ。


『見てないけど、分かるんだよ。しかも、負け込んでるよね?』


「い、いや、次は勝てるぞ。最初は勝てたんだし」


『ダメ』


 リズにも同じように禁止を言い渡しておいた。リズも「最初は勝てたんですよ!」と未練がましく言ってたが、それはたぶん、客引きのための胴元のテクニック、イカサマだ。後は、もうちょっとで勝てそうと思わせて、きっちり勝たせない。「今日負けたらもう来ない!」と周りの客に言い出したら、ちょっとだけ勝たせておく。そんなところだろう。


 俺もカジノを作って儲けようかな?


 でもなあ。

 それは自分は豊かになるが、相手から金をぶんどっただけだ。一時的な楽しみは提供できるが、損もさせるから感情としてもプラマイゼロ、結局、全体では何も生み出してはいない。それどころか、自暴自棄の犯罪を生み出したり、子育て放置も誘発する。

 仮想敵国にカジノを進出させて貴族相手に外貨を稼ぐのは有りだが、うちの領内には要らないな。

 グレンみたいな遊び人を大量生産しても人類陣営(・・・・)にとって(・・・・)意味が無い。



 ヴィルヘルム領は海とも接しておらず、山も無い。

 金山や海産物も無ければ、特産品も無いと来た。

 どうにも恵まれていない立地条件だ。



 だが、特産品が無ければ、作れば良いじゃない。

 俺は恵まれたスキルを活かして、特産品作りに取り組むことにする。


 まずは、材料だが。


 チリリンと小さなベルを魔法で揺らして、俺はリズを呼び出す。


「お呼びでありますか! レイ様!」


 やる気にあふれたリズ。

 シュタッと現れての敬礼姿だが、カジノの借金を肩代わりしてやったので随分と忠誠度が上がったようだ。

 ま、それは俺の金じゃなくて、パパンにおねだりして金貨十枚をもらっただけだが。

 パパンも「これは家のへそくりだから、マジ勘弁して下さい」と泣きべそを掻いていたので、早めに返しておかないとな。

 鬼サラが気づいたらすべて終わりだ。

 パパンの弱みはすぐ握れたが、ママンは材料がないんだよなぁ。

 ともかくだ。


『リズ、この金貨で板を百枚、買い付けてきてくれ』


「ええー、面倒臭いっス。あと、重いのアタシぃ無理なんでぇー、みたいな?」


 訂正、半端なやる気だった。それにしてもメイドでこの態度は許せんな。ヴィルヘルムが豊かになったら速攻でお払い箱にしてやろう。


『何もお前が運ばなくて良いんだぞ。商人に頼んで、この家まで運ばせれば良い。その運賃も込みの料金でな』


「おお、なるほど、天才ですね! レイ様は」


 お前がアレなだけだが、黙っておいてやるか。


 ペンとインクはグレンの執務室にあるから、それを拝借すれば良い。どうせ普段は使っていないし、たまにはインクの蓋を開けておかないと、固まって開かなくなっちゃうからな。


 だが、俺は買い付けられた板を見て、ため息をついた。


『ううん、もうちょっと条件をきちんと伝えておくべきだったか』


 リズが買い付けてきた板は、粗悪ででこぼこしている上に、ささくれていた。

 仕方なくもう一人のメイド、ベリンダに頼んで、やすりを持ってきてもらい、板の端を安全にするところから始めた。

 頼んだことはきっちりできるベリンダだ。こいつを最初から使えよという話だが、彼女はいちいちサラに報告してしまうので、ベリンダはあまり使いたくない。


『できた!』


 俺が眠気をこらえ、夜なべして作ったヴィルヘルムの特産品だ。

 コイツは確実に儲かるぜ?

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