第5話 森の中ではじめまして
『スキルの確認はできましたか?』
「確認はできた。検証はまだだから、もう少し待っ……」
スキルについて試しながら詳しく調べようとした、その瞬間だった。
足元から眩い光が溢れ出す。
「まだ聞きたいことがあるんだが!?」
『新しい世界をよろしくお願いします』
「ちょっ!」
⸻
気が付くと、森の中だった。
服装は転移前のまま。
見渡す限り木々が生い茂り、鳥のさえずりと風に揺れる葉音だけが耳に届く。
澄んだ空気が肺を満たし、木漏れ日が地面をまだらに照らしていた。
「……夢じゃない?」
思わず独り言が漏れる。
ポケットからスマホを取り出す。
圏外。
やっぱりか。
それでも電源は入っている。
バッテリー残量は85%。
「何かに使えるかもしれないし、無駄遣いはできないな」
そう呟き、一旦電源を落としてリュックへしまう。
異世界、か……。
「ステータス……とか出たりしないよな?」
そう口にした瞬間、目の前の空中へ半透明の文字が浮かび上がった。
高尾朔
Lv 1
HP 100/100
MP 10/10
力 10
耐久 10
魔力 5
精神 15
敏捷 8
運 10
スキル
・Eidolon Lv1
・ポーカーフェイス Lv1
・話術 Lv1
「……出たよ」
ゲームみたいだな。
折角だ。まずはステータスとスキルを確認してみよう。
⸻
Eidolon Lv1
説明なし。
表示されているのは名前だけ。
「これがチート能力ってやつか?」
指で触れてみる。
……反応はない。
「使ってみないと分からないタイプか」
次は残りのスキルを見る。
⸻
ポーカーフェイス Lv1
効果:精神状態を表面上隠す。
「……クレーム対応や上司からの詰めで鍛えられたからな」
理不尽な要求にも笑顔で対応する。
感情を飲み込み、平然と接客を続ける。
何百回も繰り返してきた仕事の成果が、そのままスキルになっているらしい。
⸻
話術 Lv1
効果:会話時、相手との意思疎通補正。
「営業や接客で身についた能力ってことか」
思わず苦笑する。
「異世界まで来て接客スキル持ちとはな……」
戦闘能力ゼロじゃないだけ、まだマシか。
⸻
とりあえず情報収集が先だ。
まずは森を探索してみよう。
背負っていたリュックを開け、中身を確認する。
入っていたのは、
・財布
・スマホ
・モバイルバッテリー
・メモ帳
・ボールペン
・夜食用のパン二つ
・麦茶
・スマホ修理道具一式
・趣味で読んでいた雑誌
「……修理道具まで持ってきてるのか」
思わず笑ってしまう。
だが、不思議と少し安心した。
いつもの仕事道具があるだけで、見知らぬ世界でも現実味が増す。
歩きながら考える。
木々が強い日差しを遮ってくれているおかげで、想像していたよりずっと涼しい。
だが安心している場合じゃない。
今の持ち物を見て、この先まず解決しなければならないことは二つ。
水。
そして食料。
「生き延びなきゃ始まらない」
⸻
ガサリ。
近くの茂みが揺れた。
動物か。
……いや、この世界なら魔物かもしれない。
今の俺には戦う術がない。
一歩だけ後ろへ下がり、いつでも走り出せる姿勢を取る。
茂みから姿を現したのは。
黒猫だった。
「……猫?」




