第4話 よくある能力
『──忘れてください。』
「……え?」
思わず間の抜けた声が漏れた。
スキルの説明が始まると思っていた俺は、完全に肩透かしを食らう。
『正確には、今までの”常識”を忘れてください。
あなたが生きてきた世界の価値観では、この世界を理解することはできません。』
「価値観……。」
『便利だから正しい。新しいから優れている。』
『そういった今まで培ってきた”当たり前”を手放してください。』
淡々とした声なのに、何故か不思議と重みがあった。
『あなたは修理士です。修理とは、壊れた物を新しく作り替えることではありません、本来あるべき姿へ戻すこと。』
その言葉に、俺は少しだけ息を呑む。
確かにその通りだ。
俺たちは新品を作る仕事じゃない。
壊れた物を直し、また使えるようにする仕事だ。
壊れたスマホの中には、写真、メッセージ、誰かとの思い出。
そんな”失いたくないもの”まで入っている
『だから、あなたへ授ける力も同じです。』
光球が静かに輝きを増していく。
『──Eidolon』
その名が俺の頭の中で浮かび上がる。
「……アイドロン?」
『あなたが明確に思い描いたものを、世界へ具現化する能力です。』
『武器、道具、建築物など、必要な知識と材料そして、魔力が揃うなら、それらを形にできます。』
……なるほど。
つまり創造系スキルか。異世界ものでは定番だな。
魔力もあるのか
炎とか出せたりするのかな。
と、心の中でワクワクしていたのに
『ただし。』
光球は一拍置いて続ける。
『曖昧な想像は形になりません。理解していないものも形になりません。』
『あなたが”本当に理解しているもの”だけが、この力の対象となります。』
「理解しているもの……。」
何となく知ってるじゃダメってことか
『あなたは、この能力を使い、世界を修理してください。』
俺は深く考えず頷いた。
よくある創造スキル。
そう思っていた。
この時の俺は、まだ知らなかった…




