第3話 忘れてください
完璧なビジネススマイル(を作れているかは分からないが)で用件を伺ってから、恐ろしく長い沈黙が流れた。
………。
……。
…。
クレーム対応の10分間よりも長く感じられる静寂の中、光の球はただプカプカと浮いている。
耐えかねた俺は、ガチガチに固まった表情のまま口を開いた。
「……今のは、忘れてください」
『……あなたをここに呼び出したのは私です。』
話が進んだ!
絶対やばい奴だと思われてるよな…
とりあえず話を聞こう。
「ここはいったい何処でしょう?それに自分は今どうなっているのか理解ができないのですが…」
率直な疑問を、謎の球に問いかけてみた。
『ここは現実と切り離された場所。
あなたは帰宅途中にここに呼ばれました。
私によって。』
現実と切り離された場所。
返ってきたのは、回答としてはあまりに抽象的で、不親切な仕様書のような言葉だった。
だが、ピンとくるものはある。
これはおそらく、ネット小説でよく見かける『異世界転生』というやつだ。
仕事の休憩中、スマホでよく読んでいた。
文字から自分の想像力を膨らませて、頭の中で映像を組み立てていくあの感覚が、俺は結構好きだったのだ。
「納得は出来ないが、概ね理解はしました。
それで自分はどうすれば?」
『話が早くて助かります。
あなたには世界の修理をして欲しいです。』
修理…
そう聞いて少しワクワクした。
自分は本当に修理する事が好きなのだなと
つくづく思った。
『必要なスキルは、こちらで付与します。その力を使って、世界の故障を見つけ、改善してください』
スキル。実にいい響きだ。
一体どんな工具(チート能力)を渡されるのだろうか。
世界を直すためのデバッグツール。
想像するだけで、プロとしての血が騒ぐ。
どんな凄いスキルが来るのかと、俺が身構えたそのとき。
光の球が、静かなトーンで告げた。
『――忘れてください』
「え?」
第3話を読んでいただきありがとうございます。
いよいよ異世界へ向かう準備と、この後スキルのお披露目です。
このスキル名、実はかなり悩みました。
最初は「イマジナリー〇〇!」みたいな感じも考えていたのですが……
「さすがにそのまますぎるな?」と思い、少し捻って今の名前になりました(笑)
実は名前にもいくつか意味を込めています。
そのあたりも、物語の中で少しずつ楽しんでいただければと思います。
頭の中で広がった妄想を、本当に作品にしてしまいました。
初投稿で拙い部分もありますが、これからも楽しんでいただけたら嬉しいです。




