第24話 分解をしよう
目覚ましもないのに、朝日とともに目が覚めた。
前の世界にいた頃から染みついている体内時計が、また動き始めたらしい。
あの頃は、とにかくやることが多く、時間が足りなかった。
だから早めに出勤し、日々課せられている業務をまず終わらせる。それから、ようやく自分が受け持っていた作業に取りかかっていた。
もちろん、みなし残業だから早出の手当なんて出ない。
今思い返しても、なかなかひどい働き方だったと思う。
「……今はもう、早く起きなくていいんだぞ、俺」
そう自分に言い聞かせてみたものの、起きてしまったものはしょうがない。
二度寝する気にもなれず、俺はベッドから起き上がった。
身だしなみを整え、朝食を作る。
腹ごしらえを済ませたら、いよいよ昨日考えていた作業に取りかかろう。
今日の目標は、シグナの内部構造を調べることだ。
* * *
机の上を片付け、工具とメモを並べる。
これで作業スペースは確保できた。
「さてさて、分解していきますか」
俺はシグナを手に取り、まずは外装を確認した。
購入したシグナは、背面パネルを比較的簡単に取り外せる構造になっていた。
「ヒートガンとか無いから焦ったな……」
自分のスマートフォンを修理していた頃なら、機種によっては背面パネルを外すだけでも一苦労だった。
無理に力をかければ、パネルを割ってしまう可能性もある。
その点、このシグナは扱いやすくて助かった。
慎重に背面を外し、内部を確認する。
目当ては、動力源になっていると思われる部品だ。
内部の構造を観察しながら、周囲の部品や接続部分を一つずつ確認していく。
そして、それらしいものを見つけた。
「これか……?」
取り外してみる。
大きさは二センチほどだろうか。
小さな部品だが、これがシグナを動かしているらしい。
「うーむ……どうなってるんだ」
外見だけでは、どのような仕組みで動力を供給しているのか分からない。
表面の形状を確認し、接続部分を観察する。
分かったことをメモに書き留め、別の角度からも確認してみる。
見た目だけで判断せず、構造を把握する。
それが修理の基本だ。
……とはいえ、初めて見る技術ばかりなのだから、すぐに答えが出るはずもない。
俺は焦らず、分かることと分からないことを分けながら、少しずつ分解を進めていった。
* * *
「……疲れた。休憩しよう」
気づけば、太陽は真上近くまで昇っていた。
夢中になって作業していたら、いつの間にか昼になっていたらしい。
俺は工具を置き、昼食の準備を始めた。
食事をしながら、先日シアーヌで購入した魔力に関する本を取り出す。
シグナの構造を調べるだけでは、分からないことも多い。
動力源が魔石だとして、それを動かす魔力とは何なのか。
そもそも、自分の魔力をどう扱えばいいのか。
この辺りも調べておく必要がある。
本をめくりながら、気になった部分を読み進めていく。
「……血液の循環みたいだな」
書かれている説明を読む限り、魔力は身体の中心から全身へと巡り、再び中心へ戻ってくるようなものらしい。
もちろん、血液とまったく同じ仕組みというわけではないだろう。
ただ、身体の中を循環しているという感覚は、イメージするうえで分かりやすかった。
自分の魔力をうまく扱うには、まず自分の中にどれだけの魔力があり、それがどのように巡っているのかを把握する必要があるようだ。
「片手間でできることじゃないな。時間をしっかり作っていこう」
シグナの解析と、魔力の習得。
どちらも一朝一夕でどうにかなるものではなさそうだ。
まずは焦らず、一つずつ理解していくしかない。
俺は本を閉じ、昼食を食べ終えた。
しばらく休憩したあと、再び机に向かう。
目の前には、分解途中のシグナと、午前中に書き留めたメモがある。
「さて……続きだ」
俺はもう一度、シグナの内部を覗き込んだ。




