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Eidolon ~忘れられた世界で、もう一度~  作者: 秋津 聖


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第23話 ただいま

エドガーさんたちと別れ、俺は森の家へと戻ってきた。


それほど長い期間、留守にしていたわけではない。


それでも、見慣れた木々の間を抜け、家の姿が見えてくると、どこか懐かしい気持ちになった。


「……帰ってきたな」


自分で建てた家だ。


この世界に来てから、試行錯誤しながら少しずつ整えてきた場所。


最初は生き延びるために作っただけだったが、今ではすっかり愛着が湧いている。


もう、ここがこの世界での実家みたいなものになっているのだろうか。


そんなことを考えながら、俺は玄関の扉を開けた。


「ただいま」


返事があるわけでもないのに、自然と言葉が出ていた。


……まあ、ネロはいるんだけど。


家の中を見回す。


家具に大きな乱れはないが、しばらく使っていなかったせいか、少し埃っぽい。


「埃っぽいな……。まずは掃除と洗濯だな」


帰ってきたばかりだというのに、ゆっくりする暇もない。


生活する場所なのだから、放置しておくわけにもいかないだろう。


俺は窓を開けて空気を入れ替え、掃除道具を取り出した。


床を掃き、棚や机の埃を払い、寝具を整える。


溜まっていた洗濯物もまとめて片付ける。


一通り終わったら、今度は家の周囲だ。


落ち葉や小枝を片付け、伸びてきた草を刈る。


森の中にある以上、定期的に手を入れないと、あっという間に自然に飲み込まれてしまう。


……家を作ったときは、こんな管理まで考えていなかったな。


いや、考えていなかったというより、実際に暮らし始めてから気づいたことが多い。


何事も、作って終わりというわけにはいかないらしい。


そんなことを考えながら作業を続け、気づけばそれなりの時間が経っていた。


「こんなもんかな」


ようやく、生活するスペースの掃除は一通り終わった。


俺は道具を片付け、近くの椅子に腰を下ろす。


「はぁ……疲れた」


掃除だけで、なかなかの重労働だった。


店で働いていた頃も、閉店後の清掃はあったが、あれとはまた違う疲れがある。


そもそも、家の管理を全部自分でやるのだから当然か。


そんなことを考えていると、開けていた扉から黒い影が入ってきた。


「やっと終わったのか。埃っぽいのが苦手だから、早く終わらせてほしかったぞ」


ネロが何食わぬ顔で小言を言ってくる。


……姑かよ。


「だったら手伝ってくれよ」


「出来ると思うか?」


「頑張れば出来るんじゃないか?」


「効率が悪いからな。お前に任せたほうがいい」


「……」


こいつ、絶対に働きたくないだけだろ。


「まあいい。こっちは終わったからな。あとはゆっくりさせてもらうよ」


「それがいい。疲れた状態で余計なことをしても、ろくな結果にならんからな」


「それ、俺を心配してるのか?」


「事実を言っただけだ」


相変わらず素直じゃない。


俺は苦笑しながら立ち上がった。


せっかく家に戻ってきたのだ。


久しぶりに、ゆっくり風呂に浸かるとしよう。


湯を準備し、風呂に入る。

温かい湯に身体を沈めると、自然と息が漏れた。


「はぁ……生き返る」


シアーヌではエドガーさんに世話になっていたが、やはり自分の家の風呂は落ち着く。


誰かに気を遣う必要もない。


時間を気にする必要もない。


ただ、ゆっくりと湯に浸かっていられる。


……帰ってきたんだな。


改めて、そんな実感が湧いてきた。


しばらく湯を楽しんだあと、俺は明日からのことを考え始めた。

まずは、シグナの解析だ。


修理したときは、外れていたケーブルを繋ぎ直したことで起動した。


中身の構造を理解したわけではない。


可能であれば、もう一度分解して、魔石や内部の仕組みを詳しく調べてみたい。


特に気になるのは、動力源だ。


あの魔石が機器を動かすためのエネルギーを供給しているのなら、仕組みを理解することで、自分のスマートフォンにも応用できるかもしれない。


今はもう起動しない俺のスマートフォン。


電気のないこの世界で、どうにか復活させる方法が見つかれば大きい。


もちろん、魔石の仕組みをそのまま移植できるとは限らない。


そもそも、魔力と電気では性質が違う可能性だってある。


それでも、試してみる価値はあるだろう。


そして、もう一つ。


魔力の使い方だ。


以前、エドガーさんが見せてくれた道具では、俺の魔力は【50】と表示されていた。


数値の意味は分からないが、少なくともシグナを使えるだけの魔力はあるらしい。


ならば、その魔力を自分の意思で扱えるようになれば、出来ることも増えるはずだ。


シグナの解析と、魔力の扱い方の習得。

まずは、この二つを目標にしてみよう。


「……さて、どうなることやら」


俺は湯の中で小さく呟いた。


分からないことだらけだ。


だが、分からないなら調べる。

試して、失敗したら原因を考える。


それは、以前から変わらない俺のやり方だ。


特に、シグナの仕組みは気になる。


魔石が動力源になっているのだとしたら、いったいどんな構造で機器を動かしているのだろうか。


もし、その仕組みを理解できれば。


今は動かなくなった俺のスマートフォンにも、新たな可能性が見えてくるかもしれない。


そう考えると、少しずつ気持ちが高ぶってきた。


「……明日、さっそく調べてみるか」


早く中を見てみたい。


そう思いながら、俺は風呂から上がった。


久しぶりに自分の家へ帰ってきたのだから、今日はゆっくり休もう。


明日からは、また新しい研究の始まりだ。

復活しました。

心身ともに

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