初調教
こんにちはこんばんは。
田原武馬です。ウェディングリリー3話目です!
最近書くのが楽しくってつい夜更かししちゃいます。
それではどうぞ。
登場人馬 プロフィール
◆久我シュンヤ(19)
新進気鋭の若手ジョッキー。
関東の大護 厩舎所属。
◆大護竜一郎
栗東の競走馬調教師。
シュンヤを幼い頃から知っている。
厳しくも優しい一面を持つ。
◆鳥飼創太(28)
大護厩舎所属の厩務員
ウェディングリリーのお世話を担当している。
いつもひょうひょうとしている。頼れる厩舎の先輩
◆アルトン・アンダーソン(27)
アメリカから来た天才ジョッキー。
来日からわずか3年で
G1レースを15勝している。
◆ウェディングリリー
競走馬 白毛
主戦騎手 久我シュンヤ
大護厩舎所属。
お転婆だが芯の強いメスの二歳馬
◆コルピエアルクオレ
競走馬 黒鹿毛
主戦騎手 アルトン・アンダーソン
常に落ち着いていて何を考えているか分からない。
だがその末脚は一級品。
メスの二歳馬 。
ウェディングリリーが大護厩舎に入厩し、一週間が経った。リリーは毎朝馬場に行き、軽い調教をこなしている。
シュンヤが毎朝 厩舎を掃除する際、ソワソワ顔を出しては嬉しそうにしている。飼葉もよく食べ、環境に順応しているようだった。
早朝、掃き掃除をするシュンヤに、馬房内でリリーの馬装点検をしていた鳥飼が話しかけてきた。
「最初は大変だったよな。俺初めてだぜ。ただの引き運動で他馬を抜かそうと躍起になった馬」
「知らない場所に来たんですから、やっぱりストレスもあったんじゃないです?」
「いーや、オレはヒシヒシ感じたね。『絶対抜かしてやる』って…ぅおわ!」
ジッとしていたウェディングリリーだったが、抗議するかのように首をぶるん!と振り回した。
「リリーが違う、って言ってますよ」
「うるせー。はやくそれ、終わらせな。今日初めてリリーと乗り運動だろ」
「そうでした!あとでね、リリー」
「ええ、また後でねシュンヤ」
声が聞こえた気がしたが、勘違いだろうと思い、シュンヤは裏手の掃除に回った。
◇◇◇
空が徐々に白んできた。空気も澄んでいる。少しずつ差してきた朝の光が、輪乗りをしている人馬を照らしている。
大護厩舎の長、大護竜一郎がその馬たちを観察し、馬上のスタッフ達に声をかけている。
「西野、フォックスバットは来週本番だ。15-15-14-13で終いは強めに。」
「横田、セーリングザスカイは休み明けだから慣らしもかねてウッドチップコースで軽めに。」
「そしてシュンヤ、ウェディングリリー、今日は角馬場で軽く慣らすだけだ。馬を操作するのはジョッキーの仕事だ。しっかりな。」
大護は続けてほかのメンバーにも支持を飛ばしている。
「……では以上、今日もよろしく!」
「ハイ!」シュンヤと他スタッフが返事をし、続々と厩舎を横切り運動場へと向かう。
「ホーゥホゥ、リリーよろしくなー」
シュンヤが首筋を撫で、優しく声をかけるとリリーの耳がピコピコ動く。
「こちらこそよろしくね。シュンヤ。」
!…手綱を通してリリーの言葉が伝わってきた。
勘違いじゃない!驚いたが、不思議と嫌な気持ちはしなかった。
「おーう、久我ァ調子はどうだ?ウェディングリリー、暴走しないようにしっかり抑えといてくれよ?」
地下道に差し掛かった時、シュンヤの前を行く厩舎の先輩、西野が冗談めかして声をかけてきた。
「い、いい感じです!ちょっと音に敏感なところがありますけど、無理やり行こうとかそういう気配はないです。」
「おーう、そうかぁーしっかりな!」
「なによ、暴走なんてレディに失礼ね。そう思うでしょ?シュンヤ」
「そうだね、アハハ…」
「手綱を通して血が通う」とはよく言ったもので、リリーに跨ると手綱越しにその感情や言葉がより詳細に伝わってきた。
「リリー、君の言葉がわかるよ。他の馬とはこんなこと無いのに。」
「シュンヤ、それは私とあなたが特別な運命で結ばれているからよ!キャー!言っちゃった!」
「……」
やがて地下道を抜け、総面積約42万平方メートルを誇る栗東トレーニングセンターの運動場が見えた。
「リリー、僕たちはこっちだよ。」
他馬についてトラックコースに入ろうとするリリーをなだめ、角馬場と呼ばれる準備運動や、デビュー前の馬の慣らし運動で使われる場所へ入っていった。
「ここなら知ってるわよ!前にも来たわ。でも、シュンヤと来るのは初めてね!」
「そうだね、よーし、じゃあまずは速歩から行ってみよう」
「ええ!」
シュッッ
リリーはシュンヤの足の合図に合わせ、素早い加速であっという間に駆けていく。
「すごいよ、リリー!」
「当然ね!」
「よし、あと一本走ったら終わりにしよう。今日は軽い運動だけだからね」
「もっとシュンヤと走っていたかったわ…」
リリーは耳を伏せて後ろに倒している。しっぽも左右に大きく振っている。馬が不満を表すサインだ。
「レースだったら思いっきり走れるよ!しかも僕たちが絶対に先頭だ!」
「そうね、わかったわ。シュンヤに免じて我慢しておくわ。」
ケロッと態度を変えたリリーに、シュンヤはホッと胸を撫で下ろした。
僕とリリーの初調教は無事に終わった。
そうして、さらに二週間後、ウェディングリリーは無事にゲート試験を通過した。
そして七月のデビューを目指し、外厩というトレーニング、調整用の施設に放牧に出されたのであった。
次回、新馬戦
最後まで読んでくださってありがとうございます。
次回、ついに新馬戦です。
カンタン用語解説 放牧:馬をリフレッシュやレースの間隔調整のために、一定期間、外厩や育成牧場に預ける事。
JRA(日本中央競馬会)のルールにより最低、レースの10〜15日前(実質、二週間から一ヶ月)には厩舎に戻すのが基本。




