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第95話「予想的中」

さっきの空気が、まだ少しだけ残っている。


ルナの「好き」

煉の「……ゲームだろ」


誰も触れないまま、でも確実に場の温度は変わっていた。


そんな中――


「次、引くよ」


ルナが静かに割り箸を引く。


数秒後。


「あ」


その一言で、全員が察する。


「……当たりか?」


城島が聞くと、


ルナはゆっくりと、箸を掲げた。


「王様」


「うわ来た」


楓がニヤニヤし始める。


里中も肩を叩く。


「さっきの流れで王様とか、絶対ヤバいな、これ」


「……ルナ」


澪が、かなり真剣なトーンで口を開く。


「“軽く”でお願いします」


「え?」


「軽くでお願いしてる」


圧。


「……うん?」


一応頷くルナ。


だがその目は――


全く軽くする気がない目だった。


(ダメかもしれないです……)


澪が心の中で確信する。


---


■ルナ王様ターン


「じゃあね」


ルナは少しだけ考える。


そして。


「4番」


「誰だ?」


番号確認。


「……俺か」


煉。


その瞬間。


楓と里中が同時に身を乗り出す。


「来たぁぁぁあああ!!」

「主人公イベント!!」


「二人ともうるさいですって、近所迷惑ですよ」


城島が止める。


澪は既に嫌な汗をかいている。


「……で、命令は?」


静かに問う煉。


ルナは、ほんの一瞬だけ視線を逸らし――


すぐに戻す。


「……私を」


一拍。


「お姫様抱っこして」


「――」


空気、凍結。



澪が何も言わずに立ち上がる。


机がガタッと揺れる。


「それはダメです」


「なんで!?」ルナは真顔。


「なんでじゃないです。そういうのは、、、、しっかり段階を踏むもので、、、」


「段階って何!?」


「今じゃないってことです」


楓と里中は爆笑。


「いや最高かよ!!」

「神展開だな!!」


「茶々を入れないでください」


城島は頭を抱えている。


「……なぜこうなるんでしょうか……」


ヴィオラは優雅に頬杖をついている。


「ふふ……いいじゃない。見せてくれるんでしょ?煉」


煉は――


数秒、沈黙した。


全員の視線が集まる。


そして。


「……面倒だな」


一言。


「そうだよね。黒瀬くんはやらなくていいです」


澪が即フォローに入る。


だが。


「まあ何とかなるだろ」


「ならないですから」


止める間もなく。


煉は立ち上がった。


ルナの前に歩み寄る。


「三歩でいいんだな」


「え、あ、うん……」


次の瞬間。


軽々と、抱き上げる。


「――っ!?」


ルナの身体がふわりと浮く。


「うわああああああああああああああ!!」


「本当にやったぁぁぁ!!」


「なんでそういうところ、素直なんですか」


スタ、スタ、スタ。


「終わりだ」


そのまま、何事もなかったかのように降ろす。


だが。


ルナは完全に固まっていた。


顔が、真っ赤。


「……軽いな」


「~~~~~~~~~!!!!!!」


言葉にならない悲鳴。


澪は頭を抱えて崩れ落ちる。


「もうダメ……この空間ダメ……」


城島が深いため息をつく。


「……これで“軽く”なんだよな……」


ヴィオラはくすくす笑う。


「昔と同じね、本当に」


煉はもう席に戻っている。


まるで何もなかったかのように。


だが――


ルナだけは違った。


(やばい……)


胸の鼓動が止まらない。


(近い、近い近い近い……)


さっきの感触が、残っている。


(無理……好き……)


完全に落ちていた。


---


■終盤戦


その後もゲームは続いた。


楓と里中が意味不明な命令を出しては怒られ、


城島が常識枠としてツッコミ続け、


ヴィオラがそれを楽しみ、


澪がバランスを保ち、


そして――


ルナが、ずっと煉を見ていた。


---


■ラストゲーム


「……最後だな」


城島が箸を引き、王様になる。


「よし。平和そうで安心です」


「あ、城島先輩まともにいく気だ」


「当たり前です」


城島は一度深呼吸して、


「全員、“今一番大事だと思ってるもの”を一言で言ってください」


静かな命令。


場が、少しだけ落ち着く。


「じゃあ順番な」


「ノリ!!」楓は1番にそう叫んだ


「軽すぎるだろ」


「こういうのは勢いだよな」


「相変わらず元気ですね」


「愉しみね」ヴィオラは静かに言った。


「まあお前はそれでいい」


澪は少し考えて、


「……選択」


その言葉に、少しだけ空気が引き締まる。


そして。


ルナ。


迷わない。


一瞬も。


「……煉」


静かに、でもはっきりと。


場がまた少しだけざわつく。


澪は目を伏せる。


城島は苦笑する。


「……まあ、予想通りだな」


そして最後。


煉。


全員の視線が集まる。


数秒、沈黙。


そして――


「……今は」


少しだけ視線を上げる。


そして。


ほんの一瞬だけ、ルナを見る。


「退屈しないことだな」


それだけ。


だが。


ルナは、ふっと笑った。


(……それでいい)


十分だった。


---


ゲームは終わり、片付けが始まる。


楓と里中がまだ騒いでいる。


城島がそれを止めている。


ヴィオラが楽しそうに眺めている。


澪は少し離れた場所で、静かに考え込んでいた。


(……ちょっとまずいかも)


視線の先。


煉の隣に、自然といるルナ。


距離が近い。


さっきよりも、明らかに。


そしてルナの目。


(本当に好きなんだろうな)


小さくため息をつく。


だが――


その時。


ルナが、ふと笑う。


楽しそうに。


幸せそうに。


それを見て。


澪はほんの少しだけ、言葉を飲み込んだ。


「……私もそろそろ勇気を出さなきゃな、」


小さく呟く。


夜はまだ続く。


騒がしくて、少しだけ特別で。


そして確実に――


関係が、変わり始めていた。

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