表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/88

第77話「バーベキューとあまりにも長すぎる命」

夏休み三日目だった。


 颯の計画表通り、バーベキューの日だった。


 場所は河川敷のバーベキューエリアだ。昨日花火を見た場所の少し上流だった。


 颯が朝から食材を大量に買い込んできた。


「肉が三種類、野菜が四種類、海鮮が二種類」颯が袋を広げながら言った。「あとソーセージと焼きおにぎり用のご飯も買った」


「買いすぎだろ」里中が言った。


「バーベキューは量が正義だ」


「それはそうだ」


 颯と里中の意見が今日も一致した。


 城島が「珍しいですね」と言い、颯が「珍しい」と言った。「うるさい」少し離れたところから里中の声が聞こえた。


---


 網に火をつけた。


 里中が「肉は私が焼く」と言った。


「焼けるのか」颯が言った。


「当然だ!毎年家族でバーベキューをしていた。花粉操作より肉を焼く方が得意かもしれない」


「それは問題では」澪が静かに言った。


「異能者として問題かもしれないが、バーベキュー要員としては優秀だ!矛盾はない!」


「矛盾はないですね」城島が頷いた。


---


 里中が肉を焼き始めた。


 手際がよかった。


 火加減を調整しながら、肉の向きを変えるタイミングが正確だった。


「先輩、本当に上手いですね」颯が言った。


「当然だ。研究したからな」


「バーベキューを研究したのか」


「好きなことは研究すること。お前だって自分の異能を研究しているだろ」


「それはそうですけど、でもなんか先輩らしいな。好きなことに全力なところが」


「うるさい」里中が言った。声は小さかった。


---


 肉が焼けた。


 全員で食べ始めた。


 颯が「うまい」と言い、里中が「当然だ」と自身ありげに渾身のドヤ顔を顔に浮かべた。


 「もしかしたら、料理の才能があるんじゃないですか」と城島も讃えた。


 澪が「本当に美味しいです」と里中に率直な意見をぶつけた。


里中が「ありがとう」と素直に言った。


 俺は肉を食べた。


 うまかった。


「どうですか」澪が聞いた。


「うまい」


「それだけですか」


「とてもうまい」


「少し増えましたね」澪が言った。


「昨日調べたからな」


「進歩です」澪が微かに笑った。


---


 食事が進んだ頃だった。


 俺のスマホが鳴った。


 見知らぬ番号だった。


 いや、違う。


 昨日登録した番号だった。


 ヴィオラだ。


 俺は電話に出た。


「黒瀬煉」


「そうだ」


「話したいことが一つある」ヴィオラが静かに言った。「都合のいい時間はあるかしら」


「今日の夕方はどうだ」


「構わない。場所は」


「河川敷に来られるか。今日はバーベキューをしている」


 少し間があった。


「バーベキュー」ヴィオラが言った。「みんなで?」


「そうだ。仲間に話を通す必要がある。ちょうどいい機会だ」


「……わかった。夕方に行く」


 電話が切れた。


---


「ヴィオラですか」澪が言った。


「そうだ。夕方来る」


 颯が「バーベキューに来るのか」と言った。


「そうなった」


「いきなりだな」颯が言った。「でもいいか。直接会った方がわかることもある」


「俺もそう思った」


 里中が「どんな奴だ」と恐る恐る聞いた。


「顔立ちが整っている銀色の髪をした女性だ。剣士のような気配を持っている」


「強いのか」


「強い。気配だけで言えば、橘将望に近い種類の重さがある」


 里中が少し黙った。


「……それは、相当だな」


「そうだ。ただ——敵意はない」


「今のところは、だろ」


「そうだ」


「正直だな後輩は」


「本当のことだから言った」


---


 夕方になった。


 バーベキューが一段落した頃、河川敷に人影が現れた。


 銀色の髪が、夕暮れの光に染まっていた。


 ヴィオラだった。


 颯が「あれか」と独り言のように言葉をもらした。


「そうだ」


「確かに——雰囲気が違うな」颯が言った。「気配が重い」


「わかるか」


「なんとなく」


 ヴィオラが近づいてきて、全員の顔を見た。


 そして、俺を見た。


「来た」


「ありがとう。全員に紹介する」


---


 簡単に紹介した。


 「神崎颯です。よろしくお願いします」


 「城島蓮です」


 「朝霧澪です」


 「里中日向だ。お前のことは煉から少し聞いた。強いんだってな」


 ヴィオラが全員を順番に見た。


「ヴィオラよ。よろしく」


 里中が「座れよ」と言った。「バーベキューの残りがある。食べるか」


 ヴィオラが少し驚いた顔をした。


「……いいの?」


「駄目な理由がない。食べながら話せばいい」


「そうだな」俺は言った。


 ヴィオラが少し間を置いてから、芝生に腰を下ろした。


---


 里中が肉を焼いて、ヴィオラに渡した。


 ヴィオラはそれを受け取り一口食べた。


 少し目を丸くした後、呟いた。


「美味しい」


「当然だ、私が焼いたから」


「……あなたが焼いたの?」


「そうだ。なぜ驚く」


「なんとなく」ヴィオラが聞いた。「あなたが料理をするイメージがなかった」


「失礼だな」


「ごめんなさい。けど信じられないくらい本当に美味しい」


「素直に謝るな。私は嫌いじゃないけどな、そういうの」


 「先輩、ヴィオラさんのこと気に入ったのか」


「うるさい」


---


 食べながら、話が始まった。


 倉石は今日は来ていない。倉石との対面は別途設定することにしていた。


 颯が「俺から一つ聞いていいですか」と質問を投げかけた。


「どうぞ」ヴィオラが言った。


「煉の記憶を消したのは、本当に煉のためだったのか」


 ヴィオラが颯を見た。


「本当よ」


「証明できるか」


「できない」ヴィオラが静かに言った。「証明する方法がない。信じてもらえないなら、それでも構わない」


「正直だな」


「嘘をつく理由がない」


「煉と同じこと言った」颯が笑った。「本当のことしか言わない主義、煉だけじゃないんだな」


「私は主義というより——嘘をつく体力がないだけよ」ヴィオラが言った。「何百年も生きると、嘘をつくのが面倒になる」


「何百年」颯が言った。「本当に長生きだな」


「長すぎるくらいには」ヴィオラが静かに言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ