第66話「交流戦の始まり」
交流戦の会場は、学園から電車で四十分の場所にあった。
広い競技施設だった。
複数の異能者育成機関から、Sランク相当の生徒が集まっていた。
俺は会場に入った瞬間、気配の密度が違うことに気づいた。
強い。
全員が、覇凰学園の平均より一段上の実力を持っていた。
城島が隣で静かに言った。
「雰囲気が違いますね」
「そうだな」
「緊張しますか」
「しない」
「そうですか」城島が言った。「私は少ししています」
「それでいい。緊張は集中を生む」
「黒瀬くんらしい言い方ですね」城島が微かに笑った。
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受付を済ませた。
参加者の名簿を見た。
二十人だった。各機関から複数名が参加していた。
形式は個人戦のトーナメントだった。
城島と俺が同じブロックに入っていた。
「同じブロックか」城島が言った。
「決勝前に当たるかもしれない」
「そうですね」城島が静かに言った。「もし当たったら——全力でいきます」
「そうしてくれ」
「手加減されたくありませんから」
「しない」
「よかった」城島が頷いた。「手加減されたら悲しいので」
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控室に入った。
高坂がいた。
東央異能学院の制服を着ていた。体格がいい。目つきが鋭い。
高坂が俺を見た。
「来たな、黒瀬」
「そうだ」
「体育祭、見ていた」高坂が言った。「騎馬戦の瞬間加速を躱したところ。あれを見て——今日が楽しみになった」
「俺もだ」
「黒剣はまだないのか」
「まだだ」
「それでも来たか」高坂が言った。「なぜだ」
「現状を確認するためだと言った。それは変わらない」
「なるほど」高坂が腕を組んだ。「お前が今どのくらいかを見る。それが今日の俺の目的だ」
「同じだ」
「同じ目的で戦うか」高坂が少し笑った。「面白い交流戦になりそうだ」
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トーナメントが始まった。
俺の一回戦の相手は、北部異能学院のBランク相当の生徒だった。
雷操作の異能を持っていた。
試合開始の笛が鳴った。
相手が即座に雷を放った。
広範囲の雷だった。逃げ場を塞ぐ形の攻撃だ。
俺は雷の間を縫いながら、最高速度で一直線
ーーーーーー走り抜けた
相手が驚いた。
「雷の隙間を走ったのか」
「隙間があった」
「隙間が見えたのか」
「見えた」
俺は間合いを詰めた。
掌底を打ったその時、、、
煉の手と相手の体に細かな静電気が発生した。
「なんだ、これは?」
そう呟きながらも相手の体に煉の手が近づき、あと数ミリで触れる、そんな瞬間、煉が磁石のN極とN極を近づけた時のように飛ばされた。
「危なかったな」
「お前何をした」
「なあに、軽く電気をパチパチさせただけだ。」
「そうか」自分の攻撃が当たらなかった。その現象から生じる悔しさはあった、本当にあった、だが俺の表情は笑いを堪えきれていなかった。
「次は俺から行こう」
そう相手が言った時、、、
雷鳴が空を裂き、地面が白く焼けた。
目の前に立つ敵は、まるで空そのものを従えているかのようだった。指先を軽く動かすだけで、青白い閃光が空気を切り裂く。
「お前の敗因は武器を取り戻してから、この場に来なかったことだ」
低く笑う声と同時に、稲妻が落ちる。
だが主人公は、跳んだ。
――遅い。
地を蹴る一歩が、雷の軌道を外す。着地と同時に踏み込み、そのまま懐へ。拳を振り抜くが、雷の壁がそれを弾いた。皮膚が焼け、痛みが遅れて走る。
それでも止まらない。
次の瞬間、敵の足元へ滑り込む。視線ではなく、“気配”で雷の発生を読む。閃光が落ちる前、ほんの一瞬の空気の歪み。その隙間を縫うように動く。
「馬鹿な……!」
驚きの声。
その中心へ、拳が届く。
鈍い衝撃。雷が散る。
空が、静かになった。
「まあ、なんとかなると思っていたからな」
一回戦終了。
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二回戦、三回戦と勝ち上がった。
城島も勝ち上がっていた。
準決勝の組み合わせが発表された。
俺の相手は——城島だった。
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城島が俺に向かってきた。
「来ましたね」
「そうだな」
「手加減しないと言いましたよね」
「言った」
「では——全力でいきます」
試合開始の笛が鳴った。
空間が、わずかに歪んだ。
「――光理支配」




