第62話「異能戦と二人の連携」
体育祭二日目だった。
今日のメインはチーム対抗異能戦だ。
二人一組でトーナメント形式で戦う。異能の使用は全力可。ただし相手を戦闘不能にすることは禁止。降参か、場外に出た時点で決着だ。
俺と城島が組んでいた。
組み合わせが発表された時、颯が「俺じゃなくて城島先輩か」と言った。
「お前は別の競技に出ているだろ」
「そうだけど——煉と組みたかったなー」
「次の機会があるだろ」
「そうだな」颯が頷いた。「城島先輩、頼みますよ」
「もちろんです」城島が静かに言った。
「俺の相棒を貸してあげます」
そう言ってニコッと笑った。
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試合前、俺と城島がグラウンドの端で話した。
「どう動くつもりですか」城島が聞いた。
「お前が光理支配で相手の異能を無効化しながら、俺が詰める」俺は言った。「お前の光理支配は、相手の攻撃を防ぐだけでなく、俺の動きを援護できるはずだ」
「できます。」城島が頷いた。「ただ——私の光理支配は範囲に限界がある。広げすぎると薄くなります」
「範囲は絞れ。俺の周囲だけでいい」
「わかりました」城島が少し間を置いた。
あと一つ問題があるとすれば、と前置きをして城島は確認するように言った
「私の光理支配を使えば、普通の無能者ならもちろん、異能者だってついてこれない可能性はあります。
ですが、、、、
黒瀬くんなら、いけますよね」
「当たり前だ」
少し城島が微笑みをこぼしたのち、一泊おいて言葉を発した。
「黒瀬くん、一つだけ確認していいですか」
「なんだ」
「私を信頼して動いてくれますか」
俺は城島を見た。
「当然だ」
「ありがとうございます」城島が静かに笑った。
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一回戦が始まった。
相手はBランクとCランクのペアだった。
Bランクが火炎操作、Cランクが土壁生成だ。
開始の笛が鳴った。
Cランクが即座に土壁を展開した。俺たちの視界を塞ぐ壁だ。
同時にBランクが壁の上から火炎を降らせた。
城島が光理支配を展開した。
光の薄い膜が、俺たちを包んだ。
火炎が光理支配に触れて、弾かれた。
「行くか」俺は言った。
「どうぞ」
俺は土壁に向かって走った。
壁を飛び越えた。
壁の向こうにBランクとCランクがいた。
BランクがBランクが驚いた顔をした。
「もう来たのか」
「遅い」
俺はBランクの懐に入った。右の掌底を脇腹に打った。
Bランクが場外に飛んだ。
「一人目」
Cランクが土を盾にした。
俺は盾の横に回った。
Cランクが盾を動かそうとした。
その隙に、肩を掴んで場外に押し出した。
「二人目」
一回戦終了。
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スタンドからざわめきが起きた。
「二人を一瞬で制した」
「あの土壁、どうやって越えた」
「飛び越えただけだぞ」
颯が「やっぱり煉は速いな」と言った。里中が「後輩の割には動けるな」と言った。颯が「後輩の割には、は余計です」と言った。
澪がスタンドからノートに記録していた。
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二回戦、三回戦と順当に勝ち上がった。
準決勝の相手が、一筋縄ではいかなかった。
二年生のペアだった。
一人が空間操作、もう一人が物理強化だ。
空間操作の生徒が、俺と城島の間に空間のひずみを作った。
互いが遠く離れてしまう空間だ。
城島の光理支配が俺に届かなくなった。
「まずいですね」城島が離れた場所から言った。
「問題ない」俺は言った。
「一人で行くつもりですか」
「そうだ」
「物理強化の方がいます。援護できない状況で一人で行くのは」
「援護がなくても戦える、信じてくれ」
城島が少し間を置いた。
「……わかりました。信頼します」
「ありがとう」
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物理強化の生徒が来た。
高坂と同等の速度だった。
俺は半歩ずれた。
拳が空を切った。
懐に入り、腕を掴んだ。
そしてその瞬間、普通の異能者では目で追うことすらできないような速度で、地面に叩きつけた。
そこ一帯は、隕石がぶつかったかのような、まるでクレーターのようになっていた。
「一人目」
空間操作の生徒が空間のひずみを広げようとした。
俺は走った。
ひずみが広がる前に、間合いを詰めた。
空間操作の生徒が慌てた。
「近距離では空間操作は使いにくいだろ」
「っ——」
肩を掴み相手の重心と遠心力を使い場外に押し出した。
「二人目」
準決勝終了。
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決勝だった。
相手は三年生のペアだった。
二人ともAランクのエンブレムをつけていた。
一人が電撃操作、もう一人が氷操作だ。
スタンドが静まり返った。
颯が「煉と城島先輩、いけるか」と言った。里中が「後輩たちを信じろ」と言った。颯が「先輩が応援してくれた」と言った。里中が「別にいいだろ」と言い、プイっと目線を外した。
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決勝開始の笛が鳴った。
電撃と氷が同時に来た。
城島が光理支配を展開した。
電撃が弾かれた。氷が光に溶けた。
「今です」城島が言った。
俺は走った。
城島が光理支配を俺の前に薄く展開した。
盾ではなく、滑走路のように。
俺は光の上を走った。
速度が上がった。
「なんだあれ」電撃の生徒が言った。
「光理支配で加速させている」氷の生徒が言った。「防いで——」
遅かった。
俺は電撃の生徒の懐に入った。
掌底を打ち、相手を場外に出した。
振り返った。
氷の生徒が氷の盾と光の矛を同時に展開していた。
俺は止まった。
城島が動いた。
光理支配が氷の盾を包んだ。
光が氷に染み込んだ。
氷が、光を吸収して崩れた。
氷の生徒が前に出た。
俺がいた。
「終わりだ」
俺は氷の生徒の腹に手を当て、軽く力を込めた。そうすると、相手はとんでもなく速い速度で場外の壁に押し込まれた。
決勝終了。
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チーム対抗異能戦、優勝だった。
スタンドから拍手が起きた。
颯が「やったぞ」と叫んだ。里中が「私が応援したおかげだ」と言った。颯が「どさくさ紛れに功績を取るな」と言った。里中が「うるさい」と言った。
城島が俺の隣に来た。
「黒瀬くん」
「なんだ」
「光理支配を滑走路にする使い方——あなたのアイデアですか」
「そうだ。お前の光理支配は、防御だけでなく補助にも使えると思っていた」
「使えました」城島が静かに笑った。「ありがとうございます。新しい使い方を教えてもらいました」
「お前が実行した。俺はアイデアを出しただけだ」
「それが大事なんです」城島が言った。「あなたは常に、周りの可能性を引き出しますね」
「そうか」
「そうです」城島が空を見上げた。「いいコンビでしたね、今日は」
「そうだな」
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スタンドの隅に、見覚えのある顔があった。
高坂陸斗だった。
交流戦で会う予定の、東央異能学院のSランクだ。
高坂が俺を見ていた。
目が静かに光っていた。
俺は高坂を見た。
高坂が小さく頷いた。
俺も頷いた。
それだけだった。
だが——それで十分だった。
来月の交流戦が、一歩近づいた気がした。




