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第44話「なんせ、、、元魔王だからな」

 宮田が恐る恐る近づいてきた。


「あの……黒瀬」


「なんだ」


「俺、どうすればいいのかな」宮田が言った。「七人を全員倒したのを見て——一緒にいて大丈夫なのか、逆に怖くなってっきた」


「怖いなら離れていい」


「離れたくない」宮田が言った。「一人だと、また誰かに囲まれる」


「それはそうだな」


「黒瀬と一緒なら、安全だし」


「俺は最終的にランク昇格を狙っている。その過程でお前を脱落させる可能性がある」


「……それでも、今は一緒にいさせてくほしい」宮田が言った。「脱落する時は、黒瀬に脱落させてもらいたい。それなら——納得できないか、」


俺はしばらく宮田を見た。


「わかった」


「ありがとうございます!」


「足を引っ張るな」


「引っ張らない!」


颯が「宮田、頑張れ」と言った。宮田が「神崎も凄かった!」と言った。颯が「当然!」と言った。


---


 四人と一人で、次の行動を考えた。


 俺は高台で見た情報を整理した。


「東の集団を制した。次は——他に動いている集団がないか確認する必要がある」


「城島先輩は?」颯が言った。「施設周辺にいるって言ってたよな」


「連絡が取れない」


「そうだった。電波が通じないんだったな」


「城島は大丈夫だ」俺は言った。「あいつの光理支配は、施設周辺なら十分な戦力になる」


まずまず、この学校で最強クラスの実力である城島に挑もうとするものがいるかすら怪しい。いたとしたら、相当自分の実力を理解していないんだな。


「そうだよな」颯が頷いた。


澪がノートを開いた。


「現時点で確認できた脱落者を整理します」澪が言った。「東の七人が脱落。残りは——まだわかりません。でも高台から見た人影で計算すると、まだ三十人以上は残っていると思います」


「三十人以上」颯が言った。「まだ多いな」


「そうだ」俺は言った。「夜になる前に、もう一度高台に行って状況を確認する」


「夜になったら?」


「動きにくくなる。だが俺には有利だ」


「なんで」


「暗い場所では、気配を読む方が視覚より頼りになる」俺は言った。「気配を読む訓練は、数百年分ある」

なんせ、、、


「「元魔王だからな」」


 楓と声が重なった。


楓は満面の笑みを顔に浮かべた。「夜になったら煉が最強じゃんかー」


「最強ではない。有利になるだけだ」


「十分だろ!」


---


 その時だった。


 森の奥から、声が聞こえた。


「見つけた」


 振り返った。


 新しい人影が、木々の間から現れた。


 一人だった。


 二年生のエンブレムをつけていた。Aランクだ。


 顔は知らない。だが——Aランクが、この訓練に参加しているのか。


「黒瀬煉」その生徒が言った。「噂の無能者だな。黒剣もない今が——チャンスだと思って来た」


「そうか」


「Aランクの俺が相手だ。少しはやれるか」


俺は相手を見た。


Aランク。今の俺と同じランクだ。


だが——相手の目に、油断があった。


黒剣がないと聞いて、侮っている。


「颯」


「なんだ」


「下がっていろ」


「一人でいいのか」


「十分だ」


颯が「……わかった」と言った。澪が宮田を後方に連れて行った。


俺は相手を見た。


「来い」


Aランクの生徒が異能を発動した。


重力操作だ。


俺の体が重くなった。


ずしりとした圧が全身に来た。


俺は歩いた。


重力の中を、前に向かって歩いた。


「っ——なぜ動ける」相手が驚いた。


「経験がある」


「重力を何倍にしても——」


「試してみろ」


重力が増した。


地面が、俺の足元で沈んだ。


それでも——俺は歩いた。


一歩、また一歩。


相手との距離が縮まった。


相手が後退した。重力を増やしながら、距離を保とうとした。


追いついた。


重力の中で、一歩踏み込んだ。


相手の懐に入った。


剣の腹の代わりに、右の掌底を相手の胸に打った。


相手が吹き飛んだ。


重力操作が途切れた。


相手が地面に転がって、起き上がれなかった。


「……負けた、、、?Aランクのこの俺が?」相手が言った。「無能者が重力を何倍にしても、動いてくるとは思えない、」


「お前本当に人間か、、、?」


「最近その言葉を言われる機会が多いな。

何回でも言おう、慣れている」


「どこで」


「昔の話だ」


相手が脱落した。


---


 颯が「また一人倒した!」と叫んだ。


「倒したのではない。脱落させただけだ」


「同じだろ!」颯が言った。「煉、黒剣なしでどこまでやれるんだ。今日だけで何人脱落させた」


「数えていない」


「俺は数えてた! 八人だ!」


「澪が記録しているだろう」


「九人です」澪が静かに訂正した。「さっきの宮田くんの前に出会った生徒も含めると」


「九人か」颯が言った。「すごいな」


「まだ半分以上残っている」俺は言った。「先を急ぐ」


「わかった!」


---


 夕暮れが近づいていた。


 俺たちは再び高台に向かって移動した。


 夜が来る前に、全体の状況を把握する。


 澪が歩きながら俺に言った。


「黒瀬くん」


「なんだ」


「今日の戦い方を見て——一つわかったことがあります」


「なんだ」


「黒剣は——あなたにとって、切り札だったんですね」澪が静かに言った。「なくても戦えますが、あることで戦い方が広がる。今日の戦いは——黒剣なしでできることの限界を見せていました」


「そうだな」


「だからこそ——黒剣を取り戻す必要がある」


「そうだ」


「取り戻しましょう」澪が言った。「必ず」


「ああ」


俺は前を向いて歩いた。


夕暮れの空が、赤く染まっていた。


まだサバイバルは続く。


まだやることがある。


「まあ」


「なんとかなるだろ、でしょ」颯が先に言った。


「そうだ」


「わかってきた!」颯が笑った。


澪が「わかっていましたよ、ずっと」と小さく言った。


三人と一人で、夕暮れの島を歩いた。


 その間宮田は「自分からは言ったものの、俺って絶対ここにいない方がいいよな、、、」と一人悲観していた。

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