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 23:僧侶さんとデートして「2ページ目」がわかった話

夢に出てくるオカマ。

 23:僧侶さんとデートして「2ページ目」がわかった話

夢に出てくるオカマ。

====================


 カイトがいなくなると、ミホロと2人っきりになった。

 

 3-1=2


 そう、簡単な算数だ。

 でも、こうして、深夜に男女で2人きり。

 このシチュエーションって……。


「サンタ! あの……あたし、もう少し時間あるから! その……つきあって!」


 自分の修道服の裾をパタパタ払ったり、なんだか慌てたような様子のミホロは、きょろきょろとあたりを見回して、


「んと、んと……あ、あの店! まだ開いてるから」


 その指さした先には、一軒の明かりが漏れている建物があった。


 中に入ると、そこにはたくさんの客がいたが、店主含め全員、真っ白な灰になって、ゴミや食器に埋もれて眠っていた。

 何か合戦でもおこなわれたのか?

 兵どもが夢の跡なのか?

 ミホロはそんな光景を気にも留めずに、人びとを掻き分けながら席に着いた。


「ど、どうする? 何か飲む?」


 いや、飲むといっても作ってくれる人いなさそうだけど。

 ていうか今の時間って、ミホロいつもならとっくに寝てる時間だよね。


「ネムク ナイッスカ?」

「大丈夫。明日教会はお休みだから」

「ソッスカ」

 

 ミホロはなんだかソワソワしながらテーブルの上に目線をさまよわせている。


「あの……、その……」


 それから拳を握りしめて、突然声を張り上げた。


「だ、誰にも言わないで! 今日、あたしが泣いてたこと!」


 えーと。

 泣いてたこと、とは?

 ……ああ。アレか。

 さっき、教会の裏口でしゃがみこんでたやつ……?


「エ ナイテタッスカ?」

「え……?」


 ミホロは両手を空中で静止させたまま固まった。

 あーあ、ミホロ墓穴……。


「ちっ、違うから! 別に泣いてたわけじゃないから!」


 慌てて取り繕うように言った。

 いやもう言っちゃったから。


「本当だから。泣いてないから。いじめられてなんて、ないんだから!」


 いやさらに墓穴掘っちゃったから。

 ていうかそういうことか。

 あの教会、女ばっかだもんなあ。

 ミホロいじめられそうなタイプだし。

 勝手に自分で針のむしろになったミホロは涙目で下唇を噛んで「うぅ〜」と唸っていたが、やがてキッとこちらを睨んで、


「サンタも何か暴露して」

「エ」

「あたしだけこんなんなってズルい! 何かサンタの恥ずかしいこと暴露して!」

「エエ?」

「そうだ、サンタのスキルパッケージ、見せて!」

「エエ……?」


 ええ……?

 つーか見せる、って何、できるの? そんなこと。


「スキルパッケージを開封したシスターにはね、その後の経過を見守る義務があるの。だからサンタは、あたしに隅から隅まで見せる義務があるの」


 そうなの?


「あるったらあるの! いいからサンタ、おでこ出して」


 なんですって?

 そこに第三の目はありませんよ?

 しかしミホロの気迫に押され、言われるがままにおでこを出す。

 するとミホロも前髪をかき上げ、ずいっと身を乗り出してくる。

 そしてそのまま、おでことおでこをピタッとくっつけた。


 ちょ おおおおおおーーーーーー

 えええええーーーーーー


「創造主よ。魂のことわりよ。

 同じ肉を食べ、同じ森を見て、

 同じ風を浴びた彼の者に、

 一時的な祝福を分け与えたまえ。

 絆をもたらせ。共鳴せよ。

 “スキルリンク”」



====================

◆基本情報

名称:タマキ・サンタ

属性:雷サポーター

種族:オオカミ族>ハーフコボルト

天職:薬酒調合師(バーテンダー)

職業:天職に同じ

身分:賤民


◆パラメータ

Lv.6 Ma.2699

生命:1 魔力:1

身体:1 耐久:1

知性:6205 精神:1

機動:1 創造:1

交渉:1 魅力:1


◆装備

バーテンダーの服

修道女のロザリオ


◆称号

異世界通訳者(ザ・インタープリター)


◆習得済スキル

称号スキル『異世界共通言語(オールリンガル)

天職スキル『診断(ダイノーズ)

職業スキル『毒耐性』

一般スキル『擦過耐性』

一般スキル『精神攻撃耐性』

職業スキル『腐食耐性』

一般スキル『呪術耐性』

職業スキル『グロ耐性』

一般スキル『砂塵耐性』

一般スキル『放射線耐性』

====================



 アレだアレ。

 熱があるか確かめるときにやるヤツだ。

 あーびっくりした。

 完全にアニメかマンガの表現だと思ってた。

 二次元だけの話かと思ってた。


「うわっ!」


 急にミホロがびっくりしたように声を上げた。

 どしたん?


「何、このパラメータ……6000?」


 ああ、知性さんね。

 おお、ということは今、この画面がミホロにも見えてるってことか。

 ある意味店長やヴィスタさんがやってた『鑑定』と同じようなスキルか。

 でもちょっと違うのかな?


「正直こんなの、見たことない」

「ソウナン?」

「うん……。ふつうは、レベルとパラメータが同じくらいの数字になる。レベル7で、パラメータが7あれば、ふつう。ふつうにいい。平均。それが伝説の勇者とか、そういう人になると、パラメータがレベルの100倍行くこともあるなんて言われてる。

 でも、サンタの知性は、6000でしょ? 1000倍? そんなの、聞いたことないし、見たことない」


 なんか、バグとかじゃないよね?

 あ、でもそれって称号【異世界通訳者(ザ・インタープリター)】のおかげなんだっけ?


「でも、知性以外のパラメータはひどい」


 それからミホロは肩をふるわせながら笑い始めた。


「んっくくく……これはひどい……。バランス悪すぎでしょ、なにこれ……」


 いや、ひどくない?


「ごめん。こんなヘンなの初めて見たから」


 それからミホロは好奇心に満ちた目で、もう一度目の前の空間をしげしげと眺め、


「ねえ、こんだけ知性高かったら、もしかしていっぱいスキル取得できたんじゃない?」

「ドウユウ コトッスカ?」

「知性っていうのは、スキルや称号の取得量に関係してるから」


 ああ。

 ああ、そういうこと?

 知性ってそういう意味だったのか。

 知性が高いと、スキルや称号をいっぱい覚える、と。

 長年の謎が解けた。

 って、そうそう。

 思いだした。

 そうなんだよ。

 べらぼうな量のスキルを覚えたんだよ。

 でも、気のせいだったんだよ。


「オボエタ キガシタケド キノセイダッタッス」

「?」

 ミホロは首をかしげたが、すぐに言った。

「2ページ目は、見た?」

「ニページ、メ?」


 え、なにそれ?

 首を横に振る。


「“2ページ目”って念じてみて」


 言われたとおりにする。

 念じてみる。

 すると……。



====================

◆取得済スキル

『調合』『所持』『消毒』『未来予測』『分別』『加工』『計量』『目利き』『鼻利き』『聞き耳』『接着』『合成』『調香』『念話』『器用』『修繕』『並列思考』『予知』『予見』『記憶拡張』『特殊記憶』『集中』『思考ブースト』『情報検索』『水温操作』『水質操作』『空間把握』『審美眼』『探知』『気配探知』『金属探知』『集水』『浄水』『乾燥』『発酵促進』『HP自動回復』『マナデフラグ』『潜在能力解放』『スキルリリース』『幻影視』『幻影離脱』『幻影回帰』『時相把握』『除染』『砂塵除去』『亜空切断』『マナ切断』『マナ譲渡』『分子結合』『ゴッドフィンガー』『鑑定』『鑑定マスク』『鑑定マスク強制解除』『錬金術』


◆お告げ

“疫病”の蔓延を食い止めよう。

“エルフの女王”を助けよう。

“双子の悪魔”に会おう。

“中間世界”へ到達しよう。

客をもてなし、接客技術を身につけよう。

“本当の自分”と同化しよう。

“世界の仕組み”を崩壊させよう。

====================



 おおおおおお……!

 あったーーーーーーーーーーーーー

 気のせいじゃなかったんや!

 夢じゃなかったんや!

 そっかー。

 よかったよかった。


「うわー、すごい。さすがにすごい」


 ミホロはずらずら並んだスキルの羅列に興味津々だった。


「オオイ ッスカ?」

「多いっていうか……。スキルなんて、ふつうは2、3個だから。5個も覚えれば優秀なほう。サンタのは、多いとかじゃない。なんか壊れてる」

「ヘエ」

「一生のうちに覚えるスキル、ぜんぶ覚えちゃったんじゃない? ほら、『錬金術』ってスキル、たぶん、調合師が覚える、いちばん最後のスキルだから」

「マジスカ」

「あっ、『鑑定』覚えてる!」

「ア ホントダ」

「『鑑定』って、一説によると、レベル200に達するまで取得できないスキル、なんて言われてたんだけど……。違ったんだ。やっぱり関係してたのは知性のほうなんだ……」


 ミホロはしみじみとした声で、一人納得していた。

 あ、でもやっぱりそうなんだ。

 『鑑定』って一部の人しか使えないレアスキルなんだ。


「あとは……なんだろう、『幻影視?』ここらへんのスキルは、見たことない」


 たしかに、なんなんだろうこのへんのスキル。空間とか幻影とか……。

 あれ?

 でもさ、こんだけいっぱいスキル覚えたのはいいんだけど、これどうやって使うわけ?


「スキル ドウヤッテ ツカウッスカ?」

「マナを振るの」

「マナ?」

「取得したスキルは、マナを振らないと習得できないから」


 なんだって?


「習得しないと、スキルは使えないから」


 あっ、そういうこと?

 “取得”と“習得”は違うのか?

 ややこしいな。


「パラメータのところの、“Ma.”っていうやつがマナだから。サンタは今、2699マナ持ってる。それを習得したい取得済スキルに振るの。スキルにもよるけど、だいたい300マナくらい振れば、習得できるはず。

 ただ、マナを振ったからっていきなり習得できるわけじゃなくて、今後の生活の中で、優先的に覚えていくイメージ。だから、マナを振るなら早めにやったほうがいい。

 でも、同時に、マナの振り直しっていうのはできないから。一度振っちゃったらやり直しはできない。だから、よく考えて、慎重にやったほうがいい。マナは貴重だから」


 ははあ……。


「ナヤミドコロッスネ」


 ミホロは呆れ顔で、


「そんな悩み、ふつうはないからね。どのスキルにマナを振ろうかなんて。取得したスキルには絶対にマナを振って習得するのが常識だから」

「ハア デ マナフルッテ ドウヤルッスカ?」

「マナを振りたい、って念じるだけ。最初はちょっとコツがいるかも。ちゃんとマナを振れれば、振った数だけ数字が浮かび上がってくるから」


 試しに、まあせっかくだから、普段から超絶お世話になってる『診断』に少しだけ振ってみることにするか。

 今はマナいっぱいあるから、ちょっとくらいいいよね。

 えーと。

 マナを振りたい……マナを振りたい……

 すると、ぼんやりとだが、数字のイメージが湧いた。

 あ、なんとなくわかったかも。

 やがて、『診断』の上に「+16」という数字が浮かび上がっていた。

 おお……なるほど……。


「それから、あと、お告げ。こっちもおかしい」


 ミホロは自分の目の前の空間を指さして言った。


「お告げなんて、ふつう、1個出るだけですごいことなんだから。ていうか1個以上出ることもあるんだ。初めて知った」


 言われて、改めて自分のお告げに目をやる。

 うん。

 到達しよう、とか言われても、なんのこっちゃかサッパリわからんぞ。


「オツゲッテ ナンスカ?」

「お告げは、自分を良い方向へ導いてくれるもの。ときたま、世界を大きく変える人の人生の転機が訪れた人とかに、出ることがある。でも、本当にまれ」

「オツゲハ シタガウ ホウガ イッスカ?」

「素直に従ったほうがいい。やること、いっぱいあるね。サンタ」


 気がつくとミホロは、こちらを静かに見据えていた。

 ミホロは静かに言った。


「ねえサンタ。

 あたしは今まで、こんなパラメータ見たことない。

 こんなにたくさんのお告げが出てるのも、見たことない。

 称号も、見たことないやつ。

 スキルだって。こんなに取得してる人見たことない。

 ねえサンタ。

 教えて。

 あんたは、いったい、何者なの?」


 その瞬間、俺は、

 “来た”

 と思った。


 そう、これは、異世界から来た人間が、いつかは直面するかもしれない場面。

 一般人とかけ離れている部分を、怪しまれる場面。

 でも、こんなに急に来るとは思わなかった。


 さて、どうする? どう言う?

 “俺は異世界から来た”

 そんなの言ったところで、伝わるのか?

 それに、この答えは本当に正確なのか?

 俺は言い淀んでしまった。

 すると、


「黙ってるってことは、やっぱりあるんだ。秘密」

「ウ……」

「頭痛」

「エ?」


 それからミホロはおもむろに立ち上がると、叫んだ。


「頭痛! あれから来ないの、1回も!

 本当に、治っちゃったの、ウソみたいに!

 ずっと、ずっと、治らなかったのに。

 毎日、つらくて、ずっと、悩みのタネだったのに。

 サンタは、それを、きれいさっぱり治しちゃったの!

 サンタは、あたしの生活を変えちゃったの!」


 はあ、はあ、と肩で息をつく。


 違うんだ、ミホロ。

 すごいのは俺じゃない、あのレシピ本だ。

 なんて、言えないな。

 もう、言えない。

 そうだ。

 俺はそれだけのことをしたんだ。

 だから、もう、言わない。


 正直に言おう。今の時点で話せることを、正直に。


「オレハ……

 ジブンガ イッタイ ダレナノカ

 ジツハ ジブンデモ ワカラナイッス

 ダカラ ソレヲ サガシテルッス

 ジブンニハ ナンノ モクテキガ アッタノカ

 ナゼ ジブンハ ココニ イルノカ

 ダレカニ ヨバレタノカ

 マダ ナニモ ワカッテナイッス

 ソレヲ シリタイッス

 ダカラ コレカラ シラベルッス」


 ミホロは、きょとんとた顔でこちらを見ていた。

 そらそうだよな。

 しばらくそうしてお互い黙っていたが、やがてミホロは、深々とため息をついた。


「シンジテ クレルッスカ」

「うん。でも、本当は、ぜんぶじゃないでしょ。まだ、言ってないことあるでしょ」


 すごいな。見破られてる。


「ソノトキガ キタラ カナラズ ユウッス ヤクソク スルッス」


 そこで俺はふと気づいて、右腕につけていた腕時計をはずした。

 悪いが、別に大した代物ではない。

 ネットショップで適当に買った安物だ。

 でも、かなり特別なものではある。

 俺が身につけているものの中で、唯一、この世界のものではないもの。

 この世界には本来存在しないもの。

 俺と、同じで。


「ロザリオ クレタ オレイッス」


 そう言ってミホロに手渡した。

 ミホロはなんだかびっくりしたような顔で腕時計と俺の顔をしばらくのあいだ見比べていたが、やがてこくり、とうなずいて、言った。


「大事にする」


 ※


 2人で店を出たときには、もう町筋に朝日が射し込んでくるところだった。

 別れ際、ミホロが振り返り、大きく手を振って言った。


「こんど絶対教えてね! サンタの秘密!

 暴露! 約束!」


 俺も、大きく手を振り返した。


 ※


 オニキスに帰ってくるなり、自分の寝床にぶっ倒れた。

 カイトはまだ帰ってきていない。

 バカ眠い。

 うとうとしながら、これまでのこと、これからのことを整理した。


 おそらくゴールは、“カギ”とやらを手に入れ、『世界移動の扉』を開けることだろう。

 “カギ”というのが、ゲームクリアの条件だろうから、それを見つけたい。

 これまでは、手がかりがゼロだった。

 だが今回、それを手に入れた。

 そう、お告げだ。

 お告げかあ……。

 要はゲームで言うところの、ミッションだよなあ。

 ミッション。

 悪辣なるシステム。

 これのせいでだいたいのゲームが作業ゲーと化すんだよね。

 今までちょこっと手を出したゲームも、だいたいこれのせいで飽きた。


 なんにせよ、ミホロのおかげでいろいろわかった。

 いろいろ謎が解けた。

 感謝だな。


 とりあえず当面の課題は、どのスキルにマナを振って習得するか、ってことか。

 でもその前に、試してみたいことがある。

 それは、もう一つのレベル上げ方法。

 それによって俺は、もういっぽうの側のスキルを覚えることができるはずだ。

 そうだな。カイトに頼んでみるか。

 マナを振るのはそれからだな。


 意識が切れる間際、ふとマドンナさんの言葉を思いだした。


「あの人の命を救ってくれてありがとう」。

「あなたは天才ねン」。

「その偉大な才能を、あの人や私たちのために使ってくれたこと、心から感謝するわン」。


 なんかムズムズする。

 なんでだろう?

 本当は、才能でもなんでもないからか。

 そのことを、誰にも言わずに黙っているから?


 やがて俺は、泥のような眠りの中に、落ちていった。


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