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 21:ハイパーステータスチェックタイム



 厨房の裏口の重たい鉄扉を押し開けた。

 バーの裏口と教会の裏口は、実は繋がっていて、互いに行き来できるようになっている。

 今回みたいに、バーが教会に酒を献上する(つーかさせられる)ことはたまにしょっちゅうあるのだが、そんなときにはこのルートを使っている。


 周囲を塀や建物の壁に囲まれた、まるで隠し通路みたいな場所。

 鉄扉が閉まると、スイッチを切ったみたいにそれまでの喧噪が消え、心地よい夜の風を感じた。

 見上げると、満月だった。


 教会の裏口の扉の脇では、一人の女の子が膝を抱えてしゃがみこんで、腕の中に顔を埋めていた。

 俺が近づいていっても、とくに反応はなかった。

 てか、ミホロさんだ。

 何やってるんだろう?

 寒くない?

 なんとなく、音を立てないようにそっと扉を開けると、ミホロの腕にかかった髪の毛が風でふわり、と浮いた。

 あ、ていうかなんも声かけずにスルーしちゃった。

 ああいうとき、なんて声かけたらいいのかわからん。


 教会の中は、バー以上にカオスなことになっていた。

 ひとことで言えば、懺悔地獄だった。

 違う言い方をすれば、ドMたちのパーティ会場だった。

 祭壇に向かって大声で泣きながら許しを乞う者たちで溢れ返っていた。


「とっとと懺悔しちゃいなさいよ!」

「洗いざらい吐いちゃいなさい!」

「それでぜんぶ? ん? まだ言ってないことがあるんじゃないの? ん?」

「グズグズしてんじゃないわよ、この豚!」


 バシーン、バシーンと、何かを叩くような音が響いている。

 なんだこれ。相変わらずシステムがよくわからん。


「あんたも懺悔しに来たのかい? だったらあっちの列に並んでくんな」


 うしろから声をかけられる。

 見上げると、背の丈2メートル以上ありそうな大柄な司祭だった。頭には小さなツノが生えている。

 おお、久しぶりだなビッグマム。


「ア チガイッス サケ モッテキタッス」

「おやおやあんたは……。ミホロが天職一致させちゃった子だね?」


 ビッグマムはニヤニヤしながらうなずき、俺が手に持っている酒のビンを見て、


「そうか、ベネクの使いだね。わざわざ持ってきてくれたのかい。すまないね」


 酒ビンを受け取りながら、俺の頭をわしわし撫でる。


「ミホロはね、ちょっと素直じゃないトコもあるけど、根はいい子なんだ。ミホロのこと、よろしく頼んだよ」


 ハア。

 ビッグマムはバチッとウインク、すぐに群衆の海の中に紛れていった。


「ほらほら。てっぺん過ぎちまってるよ! とっとと白状しなー!」


 手に持ったムチで、すぐそこにいた懺悔人のシリをピシーッとしばいた。

 なんだか夢に出てきそうな光景だ。



 再び裏口の扉を開けると、ミホロはまだそこにいた。


 さて。どうする?



 「大丈夫?」と声をかける

→そっとしとく



 というわけで、無難な選択肢を選んでその場を立ち去ろうとする俺。

 だが、ちょっと待てよ?

 もしかしたら、また例のアレかもしれない。

 頭痛、かもしれない。


 というわけで、やっぱり声をかけることにした。


「アノ ダ ダイジョッスカ……?」


 返事はない。ただのシカトのようだ。


 ていうか俺、まさにうってつけのスキル持ってたんだわ。そういえば。

 ミホロに向けて、『診断』を使ってみた。



====================

職業:僧侶 Lv.28

HP:60% MP:38%

補助効果:なし

状態異常:なし

体調:悔恨、腹立ち、自責の念

備考:修復の必要はありません

====================



 あれ?

 ミホロさん、意外にレベル低い?

 この街の住人は全員レベル100オーバーだと思ってたけど。

 まあ低いっつっても充分2ケタあるけどさ。

 ひょっとして、この街で育ったネイティブはそんなもんか?

 って、問題はそこじゃなく。

 体調……は、まあ、頭痛とかではないっぽいな。

 なら、まあ、いっか。


 ていうか俺、ナチュラルにこのスキル使っちゃったけど、やっぱフツーにプライバシーの侵害だよなコレ。

 なんだかよくわからんが、今さら罪悪感がこみ上げてきた。

 知ってる人に使うのは、今後できるだけ自重しよう。



 ※



「あー、乗り切ったー」


 閉店後。

 さすがの店長でも今日ばかりは力を使い果たしたらしく、水で濡らした布を目の上に置いて、カウンターでぐったりしていた。

 照明を明るくし、はっきり見えるようになった店内の状況は、まさにカオスのひとことだった。

 床に散乱しまくったゴミ。食べカス。

 ひっくり返ったイスやテーブル。

 カウンターの内側に溢れ返った酒の空ビン。

 流しに積み上がった洗い物ピラミッド。

 だが全員、しばらく片付ける気にもならなかった。

 カイトは相変わらずトイレに籠もっている。


「今日みたいな祭りが年に7回あるからな」


 店長が布をめくってポツリと呟いた。マジすか。


「だが今日のは中でもわりと強烈なほうだった。サンタ、よく乗り切ってくれた」


 店長にbを返す。

 ていうかね。それはいいとして。

 それはいいとしてさ、俺、めちゃめちゃレベルアップしなかった?

 え、レベルアップって、酒作ればよかったの?

 酒作ってれば、レベルアップすんの?

 なんだ、だったら超楽勝じゃね?

 わざわざモンスターとバトルする必要なんかなかったんや!

 というわけで。お待ちかね、ハイパーステータスチェックタイムといきますか。へっへっへ。

 さぞ強くなったことだろう!

 俺の魔力とか身体能力とかはどれだけ強化されたのかな?

 おせえて! スキルパッケージさーん!



====================

◆基本情報

名称:タマキ・サンタ

属性:雷サポーター

種族:オオカミ族>ハーフコボルト

天職:薬酒調合師(バーテンダー)

職業:天職に同じ

身分:賤民


◆パラメータ

Lv.6 Ma.2699

生命:1 魔力:1

身体:1 耐久:1

知性:6205 精神:1

機動:1 創造:1

交渉:1 魅力:1

====================



 いやいやいや。

 ……ナニコレ?

 え、どう受け取ればいいの?

 このメッセージを。


 俺はさすがに戸惑いを隠せなかった。

 違うな。そうじゃない。

 そうじゃない感がハンパじゃない。

 でもすげえ。

 すげえな。ぶっ飛んでる。

 でもそうじゃねえ。

 そうじゃないことだけはハッキリわかる。


 だからどういう意味があるんだよ知性って。

 なんの実感もないからなんか騙されてるような気がするわ。

 まあいいや……。

 それよりアレだ。

 スキル。

 スキルも、なんかめっちゃ覚えなかった?


 俺は目線を下にスクロールしてみた。



====================

◆装備

バーテンダーの服

修道女のロザリオ


◆称号

異世界通訳者(ザ・インタープリター)


◆習得済スキル

称号スキル『異世界共通言語(オールリンガル)

天職スキル『診断(ダイノーズ)

職業スキル『毒耐性』

一般スキル『擦過耐性』

一般スキル『精神攻撃耐性』

職業スキル『腐食耐性』

一般スキル『呪術耐性』

職業スキル『グロ耐性』

一般スキル『砂塵耐性』

一般スキル『放射線耐性』

====================



 あれ?

 え、こんだけ?

 あれ?

 なんかこう、もっと意味わからんくらい大量に覚えた気がするんだけど……。

 Siriさんがバグったかと思うくらいスキル取得しましたって連呼してた気がするんだけど……。


 俺は何度も何度も自分のスキルパッケージを見直してみたが、どれだけ見てもそれ以上のスキルはどこにも隠されていなかった。


 なんだよ……。

 じゃあアレは夢か幻だったというのか……。


 がっくり。




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