大逆転のロリ
「はぁ、はぁ。これで、ラストォ!」
斬花を突き立て、最後に残った無人機の動力部を貫く。クモみたいな形の、感情の無いロボットは、動力部を失い、機能停止して動かなくなった。
「雑魚共は片付けたが、なぁ」
「ですねぇ。地球が木っ端微塵では、何の意味も無いですよ」
「だよなぁ……あのクソ野郎。星ごとたぁねぇだろうが」
無人兵器の残骸の山を背に、グノーディアとシグナムが呟く。彼らは強い。それも、バカみたいな強さだ。私やM兄弟達も奮戦したけど、向かってきた敵のほとんどを、二人だけで片付けてしまった。正直言って、彼らだけで良かった気がするぐらいの、圧倒的な力量だった。
しかも、それで万全では無い。グノーディアは、見た目こそ変わんないけど、動力部の神武は量産品の間に合わせだし、シグナムも怜奈との戦いで主力の神武をほとんど失っている。
それでも、私じゃあ絶対に敵わない強さだ。改めて、本気の彼らを堂々と打ち倒した怜奈の凄さを実感する。
まぁ中身はアレだから、死んでも尊敬できないんだけど……。
今、その怜奈が要塞砲を喰い止めてくれている。この星の全てを背負って。
「あのさぁ、どうして皆、怜奈が敗けると思ってんのよ! あのバカが、命がけでアンタらを守っているのよ!」
だからこそ、絶望感に支配されている彼らが我慢できない。星一つ砕く要塞の主砲を受け止めるなんて、傍から見たら馬鹿でしかないんだろうけど、皆の為にバカやってるアイツの為に、私らだってバカになって応援すべきだ。
「そうだよ! 怜奈だって諦めていないんだ! 僕らが簡単に、諦めちゃあダメじゃないか」
「クレイジーなガールだが、俺は嫌いじゃあないぜ」
「そうそう。意味なんかないけど、気持ちだけでも前向きでいたいよね」
M兄弟達も、彼女を信じてくれてるみたいだ。笑いながら、空に向かって声援を送っている。
「ほら、アンタ等も応援しなさい!」
沈んじゃってるグノーディアとシグナムにも、発破をかける。それでも、二人は俯いたまま、一向に動こうともしなかった。
「貴方達は、主神の投槍を知らないから、楽観的でいられるんですよ」
「だよなぁ。一発で、帝国宇宙軍の全艦隊を基地ごと潰しちまったのを見せられて、タイマン張ってるバカを応援しろってのもなぁ……」
どうやら、あの要塞砲の事知ってるから、諦めちゃってるらしい。実経験があるから、もうどうしようもないと、理解してしまうのだろう。
『ティスちゃん、今通信が入ったけど、準備完了したって! 今すぐ、飛ばすそうだよ!』
シェリーから、緊急連絡が入る。L2と合流した時から密かに進めてた切り札の準備が、ようやく完了したのだという。
「よし! これなら、絶対に勝てるわ! パパも、たまには役に立つもんねぇ」
「おじさん、ブ―たれてたよ。無断で親の名前を使うなんて、ロクでも無い娘だって」
「いいじゃない。あの毎日家でゴロゴロしてる税金泥棒にも、ちったぁ社会の役に立ってもらわなきゃね♪」
この切り札は、ユグドラシルの悪行を世界同時中継したL2のネットワークと、パパの軍人時代のコネがあってこそのモノだ。ウチのパパ、伊達に英雄だなんて呼ばれてないから、人望だけはあるのよね。退役して十年以上だけど、知り合いに高官がゴロゴロいたのだ。
パパの作戦だって言ったら、当時の後輩たちは、あっさりとプランに沿ってくれた。おかげで、スムーズに事が運んだのよね。
「切り札……?」
「そう、切り札。あのバカだからこその、ね」
グノーディアが、不思議そうに尋ねてくる。この状況で、今更何をしようというのか、そう言いたいのだろう。
正直言ってこの切り札は、随分とバカバカしいものだ。怜奈が、どうしようもない変態だからこそ有効なのであって、あそこにいるのが唯の英雄だったら、間違いなく何の意味も無いだろう。
そう、怜奈だからこそ、なのだ。あの、どうしようもない色情魔だからこそ、大逆転の鍵となってくれるはず。
「なぁるほどね。くっくっく、そりゃ、頑張るわな。アタシだってハッスルしまくるわ」
シグナムが、私達の切り札に勘付いたみたい。さっきまでの絶望が嘘みたいに、笑いを堪えている。
「怜奈や、シグナム、ハッスル……。…成程。事実なら、一万の艦隊に匹敵するでしょうねぇ」
グノーディアも、気が付いたみたい。肩をすくめて呆れている。
「何々、一体どういう事?」
分かっていないM3に、教えたげる。私とシェリーの、馬鹿馬鹿しい最強の切り札をね!
「決まってるでしょ。怜奈はね、どうしようもないド変態なのよ!」




