第二次スーパーロリペド大戦 ①
「ええっと、確かこの真上が、最終制御室なんだよね」
D3ちゃんから貰った、要塞内の地図データが、バイザーに映し出されている。おかげで、迷うことなく突き進むことが出来た。
「そんじゃ、ま。階段とか探すのメンドクサイし、一気に行かせて貰おっか。そりゃっ!」
腕を突き出し、真上にジャンプ。天井をぶち抜いて、一気に最上階に到着した。
要塞の真上、球体の一番高い所にあったのは、もう一つの司令室だった。D3ちゃん曰く、先ほどまでいたのが、エネルギーの制御、政治等々の指令を下す場なら、ココは軍事目的、戦闘用の司令室らしい。
場所も、外に突きでるように建っている。そのせいか、外の宇宙がガラスから丸見えだ。
「さしずめ、戦闘用ブリッジって訳ね。中も、それっぽいしさ」
床をぶち抜き、入り込んだ司令室は、まさに戦闘用。巨大モニターに、壁は正面ガラス張り。あちこちの机に、計器やらそうなモニターがびっしりと。未来の、戦艦のブリッジを思わせる部屋だった。
当時は、ここにもたくさんの人が働いていたんだろうけど、今は違う。人っ子一人いなくて、ただ特大の、表面が一部溶けた神武が輝いているだけだった。
ソイツ、ユグドラシルが床をぶち抜いて入ってきた私を見るなり、告げる。
「まさか一人で来るとはな。先ほど立ったシャトルの足止めのつもりだろうが――」
「違う! アンタをぶっ壊して、皆で帰るために来たんだよ!」
足止め、捨て石になる気なんてサラサラない。倒して、皆笑顔で帰るために、私はここにいる。
「そうか。くっく、笑わせるなよ。お前は天才か。我を笑わすために、来たのだな」
「うっさい、この腐れロリコン!」
なんつーか、腹立つなコイツ! 何様だこのヤロウ!
「いや、失敬。なんせ、貴様如きが、我を倒すと言うのでな。笑ってやったよ。無謀も、度が過ぎると馬鹿だからな。数百年生きてきたが、お前程の馬鹿は初めてだ。そうだ、お前はその為に生まれてきたのかもなぁ。全知全能たる我を楽しませる以外に、存在意義が見当たらぬからなぁ」
殺していいかな、いや、砕いていいよね。このクソ神武。
「ほぉう。随分と、余裕だけど、さ。いいの? 今の私は絶好調だし、アンタのビリビリなんて、多分もう効かないよ」
コイツのパワーなら、もう体験済みだ。追い詰められたのは、パパとの戦いで、気力体力共に消耗しきってたからであって、今の私の体力とテンションなら、敗ける気がしない。
それに、さっき自分から火に油注いだからね。怒りも相まって、過去最高に闘志が燃えまくってるよ。
「余裕……違うな。それが解らぬか?解らぬだろうなぁ、あの大馬鹿の、娘だものなぁ」
「うるせぇ! 合ってるけど、確かにバカだけど、お前にだけは言われたくねぇんだよ!」
このクソ野郎には、パパを馬鹿にする権利すらない。ってか、コイツも同類だし。パパの計画に賛同した、大馬鹿ロリコンだし。
「いいだろう、教えてやる。私のは、余裕ではなく、確信だ!」
ユグドラシルが吠えたと同時に、ブリッジの壁が、一斉に開け放たれた。
「わわ、わわわわわ⁉」
当然、内部の空気が外に出る力が働き、私の体は宇宙に放り出された。
「空気、空気ぃぃぃ⁉」
『落ち着きなさい!雷桜は、宇宙空間に対応していると、自分で言ったばかりじゃあないですか!』
「あ、そっか。ありがとね、D3ちゃん」
バイザーから聞こえたD3ちゃんの声で、どうにか落ち着きを取り戻した。
いやはや、いきなり宇宙なんてのに放り出されたからさ。ビックリしちゃったよ。
「にしても、凄いね雷桜。宇宙空間なのに、なんともないよ。息だって出来るし、重力だって感じる。普段とほとんど同じ風に、動けるよ」
『ええ。全身に張ったフィールドが、包み込む様に貴方を守っているのです。それに、極小の重力発生装置で、力場を作っているので、地上とほぼ変わらず動くことが出来ます』
「おお、凄い! まるで、宇宙を蹴ってる感覚だよ!」
地面を踏み込んだら、足元に地面があるみたいに、しっかりとした感覚を感じた。宇宙を蹴るって、変な感じだけど、足に力場を作っていくって感じかな。
暑さも、寒さも感じない。これなら、地上とほぼ同じ感覚で戦えそうだ。
「さぁてと。放り出されちゃったけど、さ。ならば、また突っ込んでやるよ。このデカブツが!」
宇宙要塞に向けて、指さして宣言してやった。コイツが数十キロのデカブツでも、いや、だからこそ勝機はある。中に入っちゃえば、こっちのもんだし、球体だから全方位何処からでも入り込めそうだ。内部に突入して、中からぶっ壊してやるよ。
「この姿を見て、その軽口が叩けるかな、怜奈?」
え、なに。さっきからのコイツの余裕って、要塞以外になんかあんの?
「アースガルド、オーディン・モード!」
「え……あるぇぇぇ⁉」
要塞が、変形していく。いや、馬鹿馬鹿しいけど、ホント言葉通りの意味だ。球体の内部から、人型のフレームが現れ、余分な外壁が取り払われていく。
時間にして、数秒の間に巨大な球体は、超巨大人型ロボットになってしまった。
さっきまでいた艦橋部分は、頭部の中心。そこで、ユグドラシルが輝いているせいで、このデカブツの眼玉みたいだ。バカみたいにデカい腕や足、体のあちこちに、ビームやミサイルを打ち出すであろう砲塔が付いている。
灰色カラーの、超絶巨大要塞にして、超絶機動兵器、アースガルド。人類が作り出した、最大級の兵器だった。
『あのデカブツのエネルギー源は、ユグドラシルそのもの。アレさえ砕けば、要塞内の機能は、全部停止します!』
ロボットなら、シグナム戦で経験済みだけど、今度はその数百、数千、いやそれ以上の大きさだ。それを、ユグドラシル一つだけで動かしちゃうなんて、つくづく神武って、とんでもないテクノロジーなんだなぁ、ははは。
「どうだ。これでもまだ、戯言をほざくというのか?」
「言ってやるよ! 図体がデカいだけじゃない、それがどうした!」
怯む理由なんてない。相手がどんなに強大だかだって、私は敗けられない。
「パパが信じたヒーローの私は、何が何でも、お前みたいなクソ野郎をぶっ飛ばして、幼女達を救ってやるんだよ!」
「救いようが無いな。その歳になって、現実にヒーローなどいないと、理解せぬとは」
「いないから、やってんだよ!」
「だったら、その理想ごと宇宙に消えるのだな!」
ビームが、ミサイルが、一斉に火を噴く。
「数が多くたって!」
全身のバーニアを噴射し、雨あれらに降り注ぐビームやミサイルを、紙一重で躱していく。
そんな芸当が出来たのも、シグナム戦での経験あっての事だ。彼女との戦いで、火器に対しての戦い方を学んでたおかげで、どうにか避ける事が出来た。
時たま、追尾しておっかけてくるミサイルもあるけど、対人間用じゃあないので、馬鹿みたいにデカい。だから、雷桜の射撃武器で撃ち落とすのは容易かった。
「ふふん。そんなの、当たりっこないよ!」
飛雷脚で、しつこく追尾してきたミサイルを撃ち落とす。稲妻の蹴激に触れたミサイルは、火薬に引火して四散していった。
ビームも、ミサイルもあくまで対戦闘兵器用で、人間相手なんて想定されてない。だから、対象が小さい上、すばしっこく動き回る私に、要塞の火器は全く追いつけて無かった。
「小賢しい……。まぁよかろう。余裕でいられるのも、今だけだ」
随分と、余裕ぶってるなぁ。ま、あんだけデカイロボットに乗ってりゃ、自信満々でいられるのも、解らなくも無いけどさぁ。
またまた、ミサイル群が突っ込んできた。さっきまでとは、色とか微妙に違ったけど、大きさや形はあんま変わんない。
もちろん、動きだって同じだ。そんなの、私には通じないよ!
「全部まとめて、飛雷連脚!」
迫りくるミサイル群を、飛雷脚の連続弾でまとめて撃ち落とす。撃ち落とされたミサイルが、周囲を巻き込んで誘爆し、一瞬で全てのミサイルが爆発した。
「……?」
撃ち落としたミサイルの中から、ソフトボールぐらいの大きさの球体が、無数にばらまかられる。
それらは、私の周辺にある宇宙を取り囲んでいく。
要塞から、声が響く。嘲るような、馬鹿にする口調で。
「仮にも、神武戦争時代の要塞だ。対人兵器を、積んでいないとでも思ったのか?」
「や、やばっ!」
ユグドラシルの意図を察して、この場から退避しようにも、時すでに遅し。
「黒焦げになるがいい!」
「ぐ、ああああああああああ!」
散らばる球体が、一斉に電撃をほとばしらせる。電撃は一つに繋がり、巨大な雷の檻を形成した。
「ちっぽけな神武では、この雷神の檻は破れまい。久々に楽しめたが、ここまでだなぁ、ヒーロー」
ユグドラシルの、余裕たっぷりの声が、宇宙に響く。まるで、もう勝ったかのような口ぶりだ。
「稲妻で少しずつ焼かれて死ぬのは、苦しいだろう。どうだ、降伏すれば、ひとおもいに消滅させてやるぞ?」
挙句の果てに、降参しろなんて言ってくる。
だけどね、絶望的な状況だけどね……。
「ヒーローが、諦めて、たまるかぁぁぁぁぁぁぁ!」
パパが言った。ヒーローが諦めるなと。例え何があっても、絶対に諦めないよ、私は。
「愚かな……」
「それがどうした! 皆を守る為、アンタなんかに敗けてらんないのよ!」
「そうか……ならば、その矜持ごと打ち砕いてくれる」
「⁉」
まさか、皆に……⁉
「何故、我々が人類を滅ぼせたか分かるか?武力だけで滅ぼしたのでは無い。奴らは、自らの業で滅びたのだ」
「自らの、業⁉」
「ああ、その通りだよ。言っただろう、我は全知全能だと。今も昔も、神としてこの星を支配しているのだ。ハンの娘よ、この時代で、最も多く、力のある存在は何か、分かるか?神とは、そういうモノの支配者でもあるのだよ」
この時代で、最も多く、力のあるモノ。ティスちゃん達アールヴ以外にいるのって言ったら……。
「M3君達、ロボット⁉」
「その通りだ。奴らは、全て我の支配下にある。いくら自我を持とうが、我が号令を出せば、一兵卒残らず、そんなもの消え失せる。我の人形と成り果てる。どれだけ、優しかろうがな」
要塞の各所から、アンテナが展開される。そこから、機械を支配する号令を、打ち出すのだろう。
「や、やめ……」
「ラグナロク、起動」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!」
アンテナから、地球に向けて電波が照射された。
「有機生命体を全て滅ぼすように、号令を出した。アールヴも、火星にいる人類も、一日と立たず、根絶やしだ。これでもまだ、戦えるのかな、ヒーロー」
「……」
皆を守る為、そういう意地があったからこんなデカブツとも戦えた。でも、それさえ無くした私に、どうしろって言うのよ。
例えコイツに勝っても、ティスちゃん達がいなかったら、負けだよ。意味、無いよ。
「皆、ゴメン、ゴメンね」
『このバカ!アンタから元気と馬鹿を取ったら、何が残んのよ!』




