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黄金のロリコン ①

 叫びと同時に、凄まじい熱と光が、彼から発せられる。あまりの眩しさに、バイザー越しとはいえ、目を開けられなかった。


 そして、変身を完了させた彼の姿は、金色に光り輝いていた。


 形状の変化は無いが、漆黒の鎧は、黄金の輝きに包まれている。見ているだけで、莫大なエネルギーを感じずにはいられない。それだけの熱量を、あの光からは感じた。


「グノーディアが、彼の神武が何処にあったのか、覚えているか」

「う、うん。胸に埋め込まれてたよね、確か」


 彼は、神武が生命維持装置だとも言ってた。機械だから、ナノマシンがそうだと思ってたけど、この流れだと、どうも違うみたいだ。


「そうだ。私や彼は、悠久の時を生きるために、神武の力を体内に取り込んだのだ。今、我が内に眠る神武、鳳凰を解き放った。コイツは、雷桜と同型。つまりはほぼ同じスペックの神武だ。その意味が、分かるな」


 アースが、告げる。自分は、雷桜と同じ力の神武を持っていると。だから、素人の私じゃあ、絶対に敵わないと。


「上等じゃない。素人の底力、見せてやる!」

「ならば、やってみせろ!」


 持久戦は力量差がもろにでる。だったら先手必勝! 一気に攻め込んで、純粋なパワー勝負に持ち込むしかない!


「ドリャドリャドリャドリャァァァ!」


 一直線に突っ込んで、走った勢いのまま連打、連打、連打! 連続パンチを叩きこんでやる!


 だがアースは、連打を全て手のひらで止めてしまった。その上、大層にご教授までしてくる。


「芸が無い。ただやみくもに突っ込むだけでは、猪と変わらんぞ。連打というのはな、一つ一つに意識を込めるんだ。どれ、一つ手本を見せてやろう」


 そう言うなり、私の右拳を左手で逸らし、その動きに合わせて右掌底を腹に叩きこんでくる。とっさに左腕でガードしたけど、攻勢を止められてしまった。


「右、上、左。拳を生命だと思え。そうすれば、相手に読まれる事は無い」

「わ、訳分かんな、ゴフゥッ!」


 上かと思ったら下、左かと思えば右。奴の拳は、本当に生きているみたいに、私の思考を読んで、逆方向に打ち込んでくる。防御に意識を集中させても、全く防ぎきれない。


「だったら!」


 五度目の突きを喰らう前に、両腕バーニアを逆噴射させて、足止めと後退。どうにか、奴との距離を取る事に成功した。


「成程、思考を止めない程度の力量はあるか。それでこそ我が娘だ!」

「うっさい! 今更、父親面するんじゃねぇよ! それにね、私バカだから、突っ込むしか能が無いんだよ!」

「だから、教えているのだ! 全く、手間のかかる子だな!」


 そんなに、父親面したいのか知らないけどさ、こっちはアンタを親だって認めたくないんだよ! 思いっきりぶん殴らなきゃ、気が済まないんだからね!


 怒りを込めて、拳に稲妻を纏わせる。私の持つ、必殺の一撃喰らわせて、その余裕ぶっ飛ばしてやる!


「龍王、雷撃破ァァァァ!」


 拳に稲妻纏わせて、全力の右ストレートで勝負だ!


「面白い。ならば、炎帝、爆裂破!」


 アースもその気になったのか、右腕に炎を纏わせ、右ストレートを繰り出してくる。


 雷と炎を拳が、激突した。雷と炎のエネルギーの余波が周囲にまき散らされ、雷が舞い、地面は焼けこげる。


 だが、そんな均衡も長くは続かなかった。雷桜の右拳が耐え切れなくなり、ヒビが走ったのだ。


「そ、そんな……」

「当然だ」


 押し敗け、後ろに吹っ飛ばされる。私の体は、壁の透明なガラスに激突し、地面に崩れ落ちた。


 雷桜が、パワー負けした。グノーディアの時も、シグナムの時も常にパワーでは圧倒していた分、純粋なパワー勝負で押し敗けるなんて、初めての経験だ。


 結構、堪えるなぁ。私、こんなに雷桜頼みだったんだね。シグナムの時は、ピンチになるのも全部私のせいだったから、私自身が戦い方を工夫したりすればどうにか戦えたけど、今度はそんな甘い事言ってられない。雷桜は無敵じゃあない。それを踏まえて、戦わなくちゃいけないんだけど、さ。


「怜奈、力に頼るな。もっと速さを使え。雷桜は、スピード重視の神武。剛力の鳳凰とは対を成す存在だ。勝ちたいのなら、使いこなす事だな」

「無茶言わないでよ、もう」


 アースに、速さを使え、雷桜を使いこなせって言われても、私初心者だよ。三日目の素人に、使いこなせる訳ないでしょ。


 だから、先手必勝なんだよ。ちょっと卑怯かもだけど、使わせて貰おうか。ヒーロー特有の、必殺技って奴をさぁ!


「GMフルブースト、起動!」

『神経伝達率200%、ゼストリウム完全開放。GMフルブースト、起動ッ!』


 やっぱり、思った通りGMフルブーストが、エネルギー完全開放のキーワードだった。バイザーに電子音が鳴り響き、四肢には力が漲ってくる。


「……切り札頼りか。対局が見えていない。若者の、悪い癖だな」

「黙れよおっさん!」


 アースには酷評されてるけど、これが私の考える全身全霊だ。シグナムを倒したこのスーパーライトニングモード(さっき考えた)で、一気に終わらせてやる!


「今度は、どうだぁぁぁぁぁぁぁ!」


 全速力で、それもさっきとは桁違いのスピードで、アースに突っ込む。右拳を突き出して、思いっきりぶつかってやる!


「いくら速くても、一直線ではなぁ!」


 体を逸らして、正面からの突撃を躱される。

 それで、いい。私だって、単純な突撃が通じるとも思っていない。


「バーニア、全開っ!」


 全部のバーニアを逆噴射させて、急停止。


「そんでもって、ブーストキック!」


そのまま、奴が大勢を立て直す前に、バーニアの勢い使って蹴り飛ばす。


「ヌゥゥ!」


 キックは、両腕をクロスさせて防がれたけど、蹴り飛ばす勢いで上空に飛び上がれた。斜め上空から、シェリーちゃんが教えてくれたもう一つの飛び道具を打ち出す。


「雷縛っ!」


 両腕のクリスタルから打ち出されたのは、雷の網だった。アースの周囲に展開し、彼を閉じ込める雷の檻を形成する。


「小賢しい真似を……」


 そんな事言ってるけど、雷縛は確実にダメージを与えているはずだ。なんせ、機械の体だしね。雷縛は電気の檻だから、電流も流れまくっている。回線とか、何個かショートしているはずだよ。


 だから、一気に高圧電流をぶつけて、機能停止にしてやる!


「ボルッテックフィールド、全開!」


 全身のクリスタルから、エネルギーを完全開放。バーニアを噴射して急降下。稲妻の隕石になって、アイツに向かってぶつかってやる!


 それで、おしまいだ。シグナムの巨大機動兵器すら貫いた一撃を喰らって、無事で済むはずが無い。


 なぁに、頭さえぶつけない様にすればいいさ。グノーディアだって、そうだったしね。ママの墓で土下座させるまで、殺してたまるもんですか!


「殺気が、無いな。甘ったれるなよ、怜奈ぁ!」

「⁉」


 気合一閃。アースが全身に力を入れただけで、雷縛ははじけ飛んだ。自由になった彼が、体内から身の丈程の漆黒の大剣を取り出し、呟く。


 私が、この状況でもっとも危惧して聞きたくなかった言葉。それを、一切のためらいなく。


「GMフルブースト、起動ッ!」


 アースの体がより一層、強く輝く。纏うエネルギーも、桁違いに膨れ上がった。


「オオオオオオオッ!」


 雄叫びと共に、飛び上がる。突っ込んでくる私に向かって、剣を振り上げ、斬りかかった。

 というか、叩き落とした。まるでハエ叩きみたいに、上から大剣で地面に向けて叩き落とされる。


「ふ、ざけん、なぁぁぁぁ!」


 バーニアで地面に突撃する勢いと、剣で叩き落とされる勢いが合わさって、地面にとんでもない速さで落ちていく。ダメだ、受け身を取る余裕さえない!


「おごぶぁぁ!」


 結局、どうしようもなかった。頭から、地面に叩き落とされ、這いつくばる。雷桜の防御性能のおかげで、どうにか即死は免れたけど、ダメージが深刻だ。


 装甲のあちこちから火花とか散ってるし、全身強く打ったせいで、体をちょっと動かしただけで、泣きたいほどの激痛が走る。ってかホント涙出てきた。痛い、めっちゃ痛い。


「で、も、さぁ。こんな奴に、敗けちゃあいられないんだよねぇ。私、ヒーローだしさ」


 痛みを堪えて、いや泣いてるんだから我慢出来て無いんだけどさ。体に鞭打ってどうにか起き上がろうとする。ドS幼女に打たれる鞭ならともかく、自分で打つのはちょっときっついなぁ、ははは。


「あ、アレ?」


 だが、おかしい。力が、全く入らない。全身の痛みとは別に、もんの凄い倦怠感が、全身を駆け巡る。


「当然だ。GMフルブーストが、お手軽なパワーアップモードだとでも思ったのか」




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